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罹災証明書のオンライン申請から見るデジタルと災害

2024年1月1日に発生した能登半島地震から1週間が経とうとしている。
石川県が1月7日午前9時に発表した内容では、全壊・半壊の住宅は1305棟に上るが、輪島市や珠洲市、能登町、内灘町での家屋の被害は「多数」とのみ計上されている。

この地震による被害は甚大であり、今でも震度6の地震が続いており、収まる気配がない。災害時には人命救助や食料供給など「今」に目が向くのは当然であるが、災害後の生活を迅速に回復することも重要である。

被災したときに忘れてはならないものが、「罹災証明証」の取得。

災害対策基本法第90条の2には、「被災者から申請があったときは、遅延なく、住家の被害その他当該市町村長が定める種類の被害の状況を調査し、罹災証明書を交付しなけれびならない。」と記載がある。罹災証明書があると、被災者生活再建支援金、義援金など給付を受けられる。
他にも、税、公共料金、保険料の減免・猶予や、住宅の応急修理などの現物支援などが受けられる。

被災からの復旧にはどうしてもお金がかかる。災害保険だけでなく、このような国の支援を活用する意味でも必ず「罹災証明書」の取得をして欲しいものである。ここで注意しなければならないのは、「被災者からの申請」がなければ交付されないので、被災者自ら市町村に申請をしなければならない。

一昔前であれば、役所に出向き、申請手続きをする行列に並ぶといった状況が一般的であった。昨年、デジタル庁は、複数自治体が被災する広域災害を想定し、避難所から市町村、市町村から県への情報集約やマイナンバーカードを使った避難所業務の効率化等についての実証実験を行っていたが、まさに今回の地震ではデジタルの力が被災者を手助けすることになる。

それは「罹災証明書」のオンライン申請である。スマホなどから直接申請ができるため、役所へ出向き窓口に並ぶことなく申請が可能となる。役所側の負担軽減の側面もあるだろうが、行列に並ぶことなく即時申請ができる被災者側のメリットの方が大きい。

ここで大切なのがモバイルネットワーク。せっかくオンライン申請ができる環境があっても、ネットに繋がらなくては意味がない。4大通信キャリア(ドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイル)は地震による基地局の停電や送電路の故障などによる通信障害の対応に追われている。ドコモとKDDIは共同で、1月6日から船舶上に携帯電話基地局の設備を設置した「船上基地局」を運用し、衛星アンテナで受信した電波を船上から発信することで、陸路が絶たれている石川県輪島市の一部沿岸エリアでの復旧を目指している。

ソフトバンクは上空から通信エリアを確保する「有線給電ドローン無線中継システム」を、石川県輪島市門前町の一部エリアで稼働させている。
楽天モバイルは石川県の七尾市、輪島市、珠洲市で移動基地局を設置している。その他、各社では移動基地局の配備、衛星通信や発電機などを活用した応急復旧によるサービスも提供している。

1995年阪神・淡路大震災のときは携帯電話も普及していなく、NTTの電話回線網しか通信インフラがなく、被害の大きな箇所では回線の断絶などで電話がつながらない状況が長く続き、テレビ報道でしか被害状況を知り得る手段はなかった。あれから29年経ち、スマホとモバイルネットワークが普及したお陰で、迅速な情報収集と対応が可能となったのである。

僕は、科学技術は社会を豊かにするために存在していると考えている。どんなに素晴らしい論文を発表しても、それが現実社会に影響を与えなければ無意味である。

4大キャリアの対応があればこそ、スマホは活き、用意されたオンラインサービスを利用できる。電話回線ではこのような対応は不可能だろう。モバイルネットワークはまさに「インフラ」なのだ。デジタル庁を中心に日本のデジタル化は進んでいると思うが、通信インフラに関しては4大キャリア任せてになってはいないだろうか。

行政は、通信費用の値下げ要求や端末販売値引きの規制など4大キャリアに圧力をかけているのに、災害時のインフラ対応は4大キャリア任せであるのは納得が行かない。

有事のときだからこそ、行政が全ての負担を肩代わりして、4大キャリアを支えて、被災者への対応にあたるべきである。4大キャリアとはいえ一企業であり、できることには限界がある。河野太郎デジタル大臣は様々な分野に精通されており、4大キャリアの負担もご理解されているはずである。有事であるからこそ、河野太郎デジタル大臣を中心としたデジタル庁、延いては行政全体が手を差し伸ばし、被災地の一日も早い復旧に尽力して欲しい。

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