人見御供

映画オタク、アニメオタク、ゲームオタク、小説オタク、音楽オタクな21歳の戯言です。戯言…

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映画オタク、アニメオタク、ゲームオタク、小説オタク、音楽オタクな21歳の戯言です。戯言シリーズを最近読んでます。

最近の記事

『宝石の国』 あるいは無機体の夢

 『宝石の国』とはひとつの壮大な自殺願望だった。いや、自殺願望という言葉は正確ではない。彼らには生と死の区別がないからだ。主要な人物はほとんどが不死かすでに死んでいる。ゆえに彼らは死ではなく「無」を望む。生と死の概念の消滅をよく示している例がフォスフォフィライトで、彼にとっては宝石もすべて「無」になるのだから、粉になろうが関係ないのである。これは全く合理的な判断で、だいいち最終戦闘後の宝石たちはこのことをこれっぽっちも気にしていない。そもそも彼らが「無」を望んでいる時点で、死

    • for (i = 1; i > 0; i++) 【ショートショート】

       我らが近所の子どもたちは、学校が終わると元気に外で遊びまわる。私が部屋にいると、しょっちゅう彼らの明るい声が聞こえてくる。いつも五人で、うち男の子が三人、女の子が二人。よく走っているところを見かける。すれ違ったことはないし挨拶もされたことはないけれど、声だけはよく覚えている。誰から発せられたか見ないでもわかるくらいには覚えてしまった。  彼らは別に悪がき、悪戯っ子とかではないけれど、ときどき町を落書きしてまわることがあった。落書きといっても子供のお遊び程度のもので、簡単に消

      • 世界は誰が操っているのか ーパラノイア文学と《ホモ・デウス》ー

         世界には操られるスキがある。というか、人々には操られるスキがある。そして人を操ろうとしているヤツはたくさんいる。詐欺師、カルト、資本家、政治家、などなど。特に資本家と政治家は互いに手を組んでいかに人を操ってやろうかといつも目をギラギラさせている。  だから当然誰かが世界を牛耳っているに違いないのだ。そう考えるのは自然の成り行きである。  ここで、世界は誰かによってコントロールされている、という主題を扱う文学のことを「パラノイア文学」と呼んでみることにしよう。パラノイアとは

        • 愛とは自分のもっていないものを与えることである

           フランスの精神分析家であるジャック・ラカンについては、せいぜいスラヴォイ・ジジェクによる入門書を一冊読み通したことがあって、当の本人による著作には全く手をつけたことのない筆者だが、ラカンの有名な愛の定義についてちょっと触れてみたい。 「愛とは自分のもっていないものを与えることである」  たぶん、この定義は愛されるものへ、愛されることの心構えについて忠告している言葉なんだと思う。  人はそれぞれ独自の幻想や理想を抱いて生きている。そしてきっとそれは現実には即していないものだ

        『宝石の国』 あるいは無機体の夢

          反知性による知性的知性批判について

           『ダダ・シュルレアリスムの時代』はシュルレアリスムの手放しの賞賛には陥らない。著者はある節の最後をこう結んでいる。  「存在の深部に下降し、そこなら何ものかをもち帰ろうとする試みという意味で、シュルレアリストたちのエクリチュール・オートマティックは、西欧近代の理性の支配によって失われた彼らの分身を再発見しようとする実験だったといえるだろう。だが理性へのこの反抗が、自動筆記の速度を増すことで「主体」を消去することができるかもしれないという、まったく「科学的」な思いつきに依拠

          反知性による知性的知性批判について

          セカイ系の心理状態とそのルーツ

           セカイ系の諸作品が、意識的・無意識的にであれ、なんらかの理由によって世界が救われてほしい――もしくはこうも言える、終わってほしい――という願いを発想の発端とした物語であるならば、主人公かそれに敵対するものの歪んだ、あるいはいたって正常な心理的状態を分析することが、ジャンルへのより一層の理解に繋がるのかもしれない。  そしてそれは、セカイ系の代表的作品、『イリヤの空、UFOの夏』や『ほしのこえ』、『最終兵器彼女』には現れないものである。少なく表層的には。世界救済願望、もしくは

          セカイ系の心理状態とそのルーツ

          【要約】宮台真司の『ミッドナイト・ゴスペル』評

           面白い記事を見つけたのでその要約、というかメモ書き。  ここでは『ミッドナイト・ゴスペル』視聴にあたって必要になる現代のアメリカ、ひいてはあらゆる先進国の社会背景を知るために、前半部分を注力的に要約してみた。 アメリカは落ち目の国である・国民はトランプのどこに惹かれたのか? 「失われた自分たち」を「誰それのせいだ」と帰属処理する営みに惹かれた  ⇒失われたのは白人中心の社会  例1)アウトソーシングで自動車労働者の失業率が上がったという嘘    ⇒「海外の工場で生産させ

          【要約】宮台真司の『ミッドナイト・ゴスペル』評

          増殖するシルヴィア、セカイ系の原型的風景

           フィリップ・K・ディックの短編、『この卑しい地上に』は、得意とするSF的モチーフを使わずにディック的悪夢の世界を描ききったホラー小説である。 ■あらすじ  シルヴィアという娘が白い翼を持つ恐ろしい存在に連れ去られ、ようやく地上に帰されたとき彼女はすでにこの世のものではない力を身につけており、彼女を中心にして世界中の人間すべてが"シルヴィアそのもの"へと変化してしまう・・・・・・。  H・P・ラヴクラフトやスティーブン・キングといったホラー作家を思い出させるような黙示録的

          増殖するシルヴィア、セカイ系の原型的風景

          W・B・イェイツの二つの評論と、象徴主義の歴史における位置

           W・B・イェイツの評論には『肉体の秋』(1898)という、象徴主義こそが世界を復活させる光だと書いたものがあって、この逸脱なタイトルはレーモン・ラディゲの『肉体の悪魔』やジャック・ベッケルの『肉体の冠』を思い出させもする。  象徴主義作家といえば文学ではシャルル・ボードレールやヴィリエ・ド・リラダン、ステファヌ・マラルメ、ポール・ヴェルレーヌ、アルチュール・ランボー、そしてもちろんイェイツを、絵画ではギュスターヴ・モローやオディロン・ルドンなどを挙げることができる。  し

          W・B・イェイツの二つの評論と、象徴主義の歴史における位置

          夢分析

           とうとう夢の中で、思い出の進学塾が巨大結社と化した。  僕が中学生の頃通っていた塾が実は僕の意識下の抑圧なんじゃないかと気づき始めたのは最近のことで、これは実感としては不思議なことだ。  なぜかといえば、僕は目覚めている間その塾に対してこれっぽっちの感情もわかないから。でも意識下の抑圧っていうのは意識には表れてこないから、夢といった媒体を通して自覚することがある。  中学三年生の十二月、僕は塾をやめた。僕はこのことについてなんらの後悔もしていないし、表面的には人生になん

          イアン・カーティス、23歳で首をくくったヤツ

           僕はジョイ・ディヴィジョンの「Atmosphere」という曲を、バウハウスの「All We Ever Wanted Was Everything」と並んで世界一陰鬱な曲として認めている。冷ややかで重たく耳に響くドラムで始まるイントロ、23歳で自殺したイアン・カーティスの肖像を遺影のように持ち運ぶフードを被った白黒の奇妙で宗教的な集団。波打ち際を、草原を往く。  2007年、イアン・カーティスが自殺するまでを淡々と描いた「コントロール」とともに、ジョイ・ディヴィジョンのドキ

          イアン・カーティス、23歳で首をくくったヤツ

          【後編】カウンターカルチャーと初期のハッカーの思想をつなぐロードマップ

          ~前編の続き~  ここで僕は、ハッカーたちの思想は「アメリカ的」ではないか、ということに思い当たった。  アメリカ的なものとはなんだろうか? 大量生産・大量消費の資本主義大国のことか? それともアンクル・サム的な、西側諸国を統べる大国家というイメージだろうか?  僕がここで扱いたいのはピューリタンとしてのアメリカ人のことだ。  この記事でピューリタンに基づくアメリカ人的思想を述べていると一冊の本が出来上がりかねないので簡単に説明しよう。  アメリカはイギリスで迫害されたピ

          【後編】カウンターカルチャーと初期のハッカーの思想をつなぐロードマップ

          【前編】カウンターカルチャーと初期のハッカーの思想をつなぐロードマップ

           この小論は60年代におけるカウンターカルチャーと初期のコンピュータ文化の関連を、あくまで事実を元に分析してみようという試みである。恣意的、牽強付会な関連付けは避けるように努めている。  エリック・S・レイモンドの著作「ハッカー界小史」や「ハッカーの復讐」に目を通していると、コンピュータ文化がまだ地名と深く結びついていた初期の頃のことがわかってくる。  東海岸ではIBM本社のニューヨーク、メインフレーム大手のDECやそのメインフレームを1961年に購入していたMITがあるマ

          【前編】カウンターカルチャーと初期のハッカーの思想をつなぐロードマップ

          宿命的なフォークナー(ウィリアム・フォークナー雑記)

           フォークナーの小説は宿命的だ。そして魔術的でもある。なぜか。彼の小説の主要人物はほとんどが自分の行く末を知っているからだ。  「クマツヅラの匂い」のベイアードは、父親の仇であるレッドモンドに銃口を向けられても絶対に当たらないことがわかっている。まるであらかじめ展開がわかっている演劇をやっているみたいだ。実際にフォークナーは芝居の一場面のような描写を書くことがある。  ヨクナパトーファ・サーガは閉じた箱庭世界であらゆる時代の物語を綴る。ゆえに、一度死んだ登場人物が後年の作品

          宿命的なフォークナー(ウィリアム・フォークナー雑記)

          オールタイムベストアルバム③【Love Song/麻枝准/Key】

           オールタイムベストアルバム全4枚、最後のアルバム。タイトルは③だけどこれが最後です。(最初はCD解説だったのに、結局Key・麻枝准解説になってしまいました) Love Song 作詞・作曲はすべてKeyの麻枝准、ボーカルはすべてeufoniusのriyaとなっている。2005年のアルバム。KeyといえばCLANNADやAIRなどの人気作品を作ったゲームブランドであり、麻枝准はKeyでシナリオライターや作詞・作曲を担当した重要人物であり、麻枝准が発見したともいえるriyaは

          オールタイムベストアルバム③【Love Song/麻枝准/Key】

          映画「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」がアマプラで無料

           「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」がアマプラで無料になっている。ノイタミナでリメイク版「うる星やつら」をやっていたのは2022年、第2期が2024年に放送することが決まった。かくいう僕は2022年版を未視聴で、1981年版だけを、だいたい押井守が製作に関わっている回まで見た。たぶん106話。そこで見るのをやめた。ミリタリーネタがふんだんに使われる回は押井守だったのかな? あんまり記憶にないけどたまにめちゃくちゃ面白い回が現れる。 Amazonプライム - うる

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