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企業の「らしさ」と多様性は両立できるのか。THE COACHのビジョン共有合宿で生まれた問い

こんにちは。THE COACHの松浦瞳です。前回のnoteでは「自律共創」という組織のあり方、それを実現させるためのリーダーのあり方について、失敗談も含めて書いてみました。

2023年の抱負として掲げ、人材育成・組織開発サービス「THE COACH for Business」でのキーワードともなっている「個人の力を、組織の力に。」という言葉。その実践の一つとして、今回は昨年11月におこなったTHE COACHのビジョン共有合宿の様子やそこでの学びを紹介したいと思います。

合宿の目的は「腹の底からつながる」

THE COACHでは年に2〜3回、業務委託メンバーも含めた合宿をおこなっています。2022年11月の合宿では、「腹の底からつながる」ことをテーマにプログラムを考えました。

「ビジョンはこれです」と経営者から一方的に伝えるのではなく、メンバー一人ひとりが自分の生き方と会社のビジョンを重ね合わせた上で、腹の底から納得できているか。リーダー陣も含め、本音で対話し腹の底からつながりを感じることを大切にしたい。

そのために今回の合宿では、言葉や論理的アプローチではなく、直感的・比喩的なワークを2つ選びました。

1つは「EGAKU」という自分や会社のビジョンをアートで表現して対話をするプログラム。もう1つは、実際に土に触れて自然のなかで対話をおこなう「株式会社いかす」の農業体験です。それぞれのプログラムで得た学びや感じたことを紹介したいと思います。

1日目:一人ひとりの個性や想いを感じる時間「EGAKU」

「EGAKU」とは、自分の内側にある想いをアートとして表現し、それをメンバー間で見せ合って対話をおこなうワークショップです。

人はそれぞれ言葉だけでは伝えきれない想いを持っているものだと思います。たとえば、私は目指す社会・組織のあり方として「自律共創」という言葉を掲げていますが、この言葉だけで私が思い描く未来図をすべて表しきれているかというと、そうではありません。

言葉では表現しきれない願いを、もっと感覚的に表現しみんなで共有・受け取り合う方法として、「EGAKU」を選択してみました。

他者が描いたものに対して、「私はこう感じたよ」とポストイットで感想を貼り付けていきます。人からもらった言葉をきっかけに「私はこんなことを大切にしたいんだ」と自分の新たな一面を発見したり、「みんなが私のアートを見てくれた。私の想いを受け取ってくれた」という承認された喜びがあります。

「私にはビジョンがない」と思っている人であっても、まだ言葉にできていないだけで、実は誰もが内側に、体温が宿った想いを持っているものです。「私にはこんな想いがあって、しかもみんなが受け止めてくれている」と実感できる温かい時間となりました。

「あなたを突き動かすもの」をテーマにメンバー一人ひとりが描いたアート集。同じテーマでもまったく違うアウトプットが生まれました。

また、今回は自分のビジョンだけでなくTHE COACHのビジョンをアートとして表現してみることにも挑戦してみました。会社のビジョンという、ある程度統一されたものを描くため似たような表現になるかもしれないなと少しドキドキする気持ちだったのですが、私の予想は外れ、描かれたアートはみんなまったく異なるものでした。

「THE COACHが大切にしてきた多様性ってこういうことだったのか」と並んだカラフルなアートを見て実感しました。メンバーひとりひとりに個性があり、想いがあることを腹の底から再認識できる機会だったと感じています。

2日目:自然から組織のあり方を教わる「株式会社いかす」の農業体験

2日目には、メンバーみんなで自然の中に繰り出し、美味しい野菜を食べたり種植え体験をする「いかす農業体験」に参加しました。「株式会社いかす」の農業体験のファシリテーター・白土 詠胡さんは、もともと組織開発をされていた方で現在コーチとしても活動されています。

そんなファシリテーターの方が、体験中にいろいろな問いを投げかけてくれました。組織内だけではなく、第三者が介入してくれることで対話がより深まっていく感覚をメンバーも強く感じてくれたと思います。

THE COACHの合宿では、自然に触れる時間を大切にしています。それは昨年5月に「森へ」と称して、焚き火を囲んで本音で対話をする合宿をおこなったことがきっかけです。

自然は、個人や組織の成長において大切なことをたくさん教えてくれます。良かれと思って手をかけたのに、それが仇となって野菜が育たなかったり、微生物の多様性をできるだけそのまま保つことが土壌を強くすることにつながったり。人は生き物で、ひいては組織も生き物ですから、コントロールできるものではないと体感することは、みんなで組織をつくっていくにあたって大事な経験になると思います。

「資本主義の中で、人間性を大切にするとはどういうことか」
「変化している中で、見えない出しづらい声があるとしたら何か」
「多様であることとはどういうことか」
「循環するとはどういうことか」
「人と人がつながるとはどういうことか」

自然の中での体験はたくさんの問いを投げかけてくれました。

「THE COACHらしさ」の裏にある小さな声の数々

「いかす農業体験」で印象的だったのが、チームに分かれて玉ねぎの種植えをしたことです。同じ時間でどれだけ植えられるかを競争し、その後チームごとに振り返りをする時間がありました。

「スピードが早くてうまくいった」という声もあれば、「とりあえず植えたけど、あとから見てみるとすごく雑だった」など、いろいろな感想が出てきたのですが、特に印象的だったのが「みんなが優しくあろうとして人間臭さがない」「本当はガンガン進めたかったけどみんなに合わせて遠慮してしまった」という声でした。

この声は、今回の種植えだけでなく組織の課題そのものであると、対話を通じて発覚していきました。要約をすると、「本当は自分はこうしたかったけど、THE COACHらしくないから遠慮した」という声です。

THE COACHらしさ。

それとは何かを突き詰め、大切にしたい気持ちが強まる一方で、その「THE COACHらしさ」によって同質性が高まり、人や組織の変化や成長に限界をもたらしてしまう場合があります。守りたい光が強いほど影も濃くなっていくこと、そして、その影の中には無数の小さな声があることに改めて気づかされた瞬間でした。

ただ、これだけみんな声を出してくれる理由は、THE COACHのあり方と自分の人生を本気で重ね合わせて考えてくれている証でもあると感じています。みんなが何を想い、組織の進化に何が必要だと思っているのか。「個人の力を、組織の力へ。」というのは、この声に応答することを辞めないことなのかもしれません。

らしくないものをあきらめず、両立の道を考える

「らしさ」を求めると「らしくない」ものの排除が起こること、それを続けると組織から多様性が失われてしまうことを、リーダー陣は自覚しておく必要があると強く感じました。

本当はもっとパワーを使える人が周りに合わせて遠慮してしまったり、反対に一人が抱えて頑張りすぎて疲弊してしまったり。そういうパワーの偏りが発生してしまっては、それこそ腹の底からつながっている組織とは言えません。

THE COACHはフラットな組織づくりや探究心、対話の時間を大切にしてきました。そういった「THE COACHらしさ」を守りつつ、一見「らしくない」ことも両立する道を探る必要があるのではないか。私たちが目指したい「自律共創型組織」とは、メンバー一人ひとりの多様性であふれた土壌から育まれるものだと思っています。「THE COACHらしさ」と多様性、その両輪をこれからどう回していくか。今回の合宿ではそんな問いを持ち帰ることとなりました。

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今回は、「腹の底からつながる」をテーマにおこなった合宿での学びについて振り返ってみました。THE COACHは完全リモートワークの組織として誕生し2年が経ち、オンライン、オフラインにはそれぞれの良さがありますが、想いを共有しつながりを確かめ合うことに関しては、改めて顔を合わせることの大切さを合宿を通じて実感しています。

THE COACHメンバーからの合宿の感想をいくつか紹介させていただきます。

実はずっと引っ掛かっていた「コーチングマインドを広めた先に何を願っているんだろう?」が今回の合宿でクリアになったし、自分が願っている未来の姿にも重なる部分が沢山あって…。これまでは「なんか皆さんのことが好きだから」が原動力だったけど、大切なピースがカシャリとハマった感覚が持てて、とても嬉しかったです。

組織の声は常にそこにある。声として顔を出さずに土の中で埋まってるものもあるし、芽が出てきていて、声が挙がるものもあるけれど土の中に埋まっているものもそれでいいし、何かしらの栄養やアラートとなって必要な時に出てくるんだろうなと感じました。

質感の違う2日間を体感して、THE COACHの持つたくさんの素晴らしさはもちろん、内側にあるゆらぎのようなものも、肌感覚で受け取ることができたことが特に貴重でした。リアルだからこそ感知した、多面的な余韻があります。

やっぱり会うっていいですね。オンラインだと個々の境界がはっきりしている感覚で、その分個々の尊重や機械的な推進はしていきやすいですが、「融和」や「創発」においてはリアルが欠かせないなと思いました。

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今後も、THE COACHが自律共創型組織を目指すにあたって、トライしてみたことや学んだことをできるだけリアルに発信していく予定ですので、よかったら見ていただけると幸いです。

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■この度、THE COACH はホワイト企業大賞特別賞を受賞いたしました。
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(編集:佐藤伶


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