こんにちは。みなさんは、「Nudge」という言葉をご存知でしょうか。
1. 〔注意を引くために・合図するために肘で人を〕軽く突く[押す] 2. 〔軽く押して~を〕ゆっくりと[少しずつ]動かす 3. 〔ある段階や標準に〕近づく、近寄る、接近する 4. 〔~するよう人を〕優しく[丁寧に]説得する◆【用法】nudge someone to do
https://eow.alc.co.jp/search?q=nudge 行動理論の意味合いで人々への行動喚起を意味することもあるそうです。 Nudgeは、2008年にノーベル賞受賞経済学者リチャード・セイラー(Richard Thaler)教授の本の出版から始まりました。(本の詳細は後述の「合わせて読みたい」に記載しています。)
私がこの「Nudge」の意味を知ったきっかけは、以前noteでご紹介した "6 mitunites English"という英BBCの英語学習のPodcast番組でした。
Nudgeの事例 「Nudges: The secrets of persuasion」の回では、Nudgeの事例としてイギリスのWoolwichの反社会的な、窓を壊す人たちに向けた施策を取り上げていました。現地の広告代理店が考えた施策で、窓に赤ちゃんの絵を描くことで反社会的な行動を抑える手法をとったのです。この措置により、Woolwichでは反社会的行為が18%減少したと評価されています。
イギリスに限らず、日本でも似たような事例はあります。 よく見かけるのは、薬物乱用を防ぐため警鐘を鳴らす方法としてよく小学生が描いたポスターを見かけませんか?「クスリ、ダメ!」のような。自転車の違法駐輪も同じように小学生が描いたポスターを見かけます。
調べてみると、「自治体ナッジシェア」 というサイトで事例集がまとめられていました。直近の事例で面白いなーと思ったのは、尾瀬国立公園のトイレチップの施策です。
【概要】 尾瀬保護財団が管理委託を受けている「山の鼻トイレ」において、利用者に対して求めている「トイレチップ」の支払を増加させるため、ナッジの知見を活用した介入を実施し、差分の差法により効果検証を行った。
【課題の特定とターゲット行動の設定】 山の鼻トイレに一人1回100円のトイレチップを納めてもらうことを目標行動とし、尾瀬保護財団の担当者とPolicyGarageメンバーでディスカッションをしながら、トイレチップを払うまでの一連の行動プロセスと、各ステップの阻害要因と促進要因を特定した。 例えば、「100円を入れようと思う」という行動ステップでは、「意義を認識してもらえない」というほかに、「一人一回100円という認識がない(登山中に一回支払えばよい、家族で100円でよい、と考えている)」といった阻害要因もあると考えられる。
【3つの介入策】1. 電子マネー(ペイペイ) 2. 表示名称の変更&一人1回100円の周知徹底 3. 好きな尾瀬の風景写真を選んで投票する感覚の協力金箱
【介入結果】 【Plan2:電子マネー】介入期間中、数百人のトイレ利用者がいる中、ペイペイで支払ったのは数人程度だった。そもそも尾瀬で電波が通じるキャリアがauに限られていたことや、入園客は60代を中心とする比較的高い年齢層であり、電子マネーアプリの利用者が多くないことが要因と考えられる。 【Plan3:表示名称変更&周知徹底】唯一、有意に支払額がプラスとなった。 期間中は、男性が+15.5円、女性が+7.0円、全体で+10.0円だった。 【Plan4:投票形式】女性では有意な変化は見られなかったが、男性で有意に減少。楽しむ気持ちで支払ってもらおうとした結果、『払わなければならない』という義務感が薄れた可能性も考えられ、逆説的に義務感が必要だということが伺える。
私のイメージは、電子マネーであれば気軽に払いやすいのでは…?と思いつつも、実際効果検証をしたところ表示名称変更と周知徹底が支払額プラスとなったそうですね。
尾瀬国立公園という非日常な空間ではあるので、例えば京都市や東京都内(渋谷スクランブル交差点)でも検証して欲しいなと思いました。
合わせて読みたい Nudge: Improving Decisions About Health, Wealth, and Happiness
日本語版はこちらです。
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