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覚悟

毎年うちに帰ってくるツバメたち。
例年なら元あった巣に継ぎ足し継ぎ足しの豪邸に巣作りするのに今年の子は違った。

場所を吟味した結果配管上の壁にチャレンジするも、土がくっつかず一生懸命運んだ藁や泥が毎日地面に散乱していた。
もし鳥語が話せるなら「そこは無理やで」って教えてあげたいと思いつつ毎日見守っていたら1週間後やっと諦めたのか落ちたのを見なくなった。
そして姿も見かけなくなり今年は寂しいなと思っていた2週間後
壁ではなく今度は配管の上に巣作りを始めた。
脅威のスピードで。

あなたたち
ここに作る。作りきる覚悟を決めたがやね。

そこ⁉︎⁉︎

10000回だめでへとへとになっても
10001回目は何か変わるかもしれない〜♪
ドリカムのこのフレーズが頭の中くるくる回り続ける。
諦めない心。
素晴らしいよあなたたち。
こんなに元気もらうことってある?
どうか巣が落ちず無事子育てできますように。
カラスに狙われませんように。

歳を重ねるごとに生き物全てが愛おしくてたまらない。
店に迷い込んだ蜂もトンボもカメムシもすずめの子供も無事外へ帰してきた。
殺さずの誓いを立てているのだ。
なのに
なのに
きのう
トイレでひっそり暮らしていたアシダカグモを
誰かが掃除用品でぶっ叩いて弱らせていたのを夕方見つけて心がぐっしゃりなってしまった。そういえばこの日は気の強そうな女性客が多かったな。
何も悪さをしないくもの巣も張らないコを私は「主様」と呼んでいた。
昼間は洗面台の後ろへ隠れているので朝見かけたら追いやって隠してきた。
もしお客さんが見つけたら「キャーーッ」と叫ぶかもしれないそうなったら駆けつけて説明しよう。と思っていたので攻撃されるとは想定外だった。しまった。
主様を家へ連れて帰るべく捕獲も試みたけど失敗し子供の手のひらサイズになっていた。

もちろん
店に虫がいるとかわかっていながらほっておくとか店としてはダメかもしれないけど
何にも害がないのよ。
次の朝ドキドキしながらドアを開けるといなくなっていた。ほっ。死んでなくてよかった。
これからは人間に警戒して生き延びて。

「朝のクモはお客さん」と言って手のひらに乗せたり胸元にほりこんでいた母を思い出した。
昔の人は情があったな。


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