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マニア延髄のいや垂涎の

いい音とは。
一日中聴いても疲れない音。
と父は言っていた。

2週間ほど前あるお客さんが来て
スピーカーの前にどっかり座り腕組みして聴いていた。
1時間くらい経った後会計に来て
「今日はパラゴン鳴らしてないんですか?」という。
「今鳴ってますよ」というと
「え⁉︎うそ⁈サブのスピーカーじゃないんですか?」
「パラゴンですよ」というと首を傾げながら
「ま、プレミアのついた骨董品ですからね」と皮肉っぽく笑って帰って行った。

ものすごく期待して来てくれる方も多いと思う。
期待に応えられなかった方すみません。

10分後高知市内からのお客さん。
「うちもスピーカー買いましてね」と言う。
機種聞いたけど忘れてしまったけど
「音だけでいうなら今のスピーカーが良いかもしれんけどこのビジュアルにやられますよね」と言ってくれた。
オーディオ界も進化して音を極めているだろう。
昭和で止まったうちのオーディオは敵わないかもしれない。
でもこの雰囲気このシュチュエーションでのこの音は唯一無二に違いない。柔らかくて迫力のある音。

この日高知から来られた別のお客さんからは
「仕事の妻を置いて来て今LINEで怒られましたよ。ここに来ると落ち着くけど興奮しますよね」
という言葉も頂いた。

空の上で喜んでいる父

先日は愛知からのお客さん。
目をキラッキラさせて
「ここだったんですね‼︎パラゴンのあるお店‼︎」
と少年のように話す。自作で真空管のアンプを作るくらい好きらしくて話しは止まらない。
でも好感の持てる方だったので持参のCDをお借りしてかけてみたりもした。普段しないことだけど不思議と忙しい中にも不思議とふっと手が空いて。
その方の話では岡崎市にパラゴンのある喫茶店があって、定期的にジャズ愛好家が集まって持ち寄ったCDを聴く会を行なっているという。
そういう会をしたいと時々思ってはいて、
高知からの彼も同じようなことを言っていて
「音楽好きじゃないんですか?」とも言われた。

その愛知のお客さんに
「やってはみたいけど自分はオーディオもジャズも詳しくなくて気が引けるんですよね」
と言うと(つい心を許してしまい)
「こんなに素晴らしく鳴らしているじゃないですか‼︎維持してるってすごいことですよ」
と言ってくれてちょっと涙ぐみそうになってしまった。
そう。
譲り受けたものを忠実にそのまま鳴らしているだけの私はそこに引け目を感じている。
父がもっと長生きしてくれたら息子が引き継いでくれたのにと本当に残念で仕方がない。
メカに弱いのだ。

美しい曲線
造れる職人さんはもういないという

「気になることはやってみよう」の私じゃないか。いつかとは言わずやってみようよ。
この場所がジャズやオーディオ好きのひとに喜んでもらえるなら私も嬉しいし父も喜ぶ。
SNSがあるじゃないか。
私にしかできないことがあるじゃないか。
ここでしかできないことがあるじゃないか。
挑戦は続く。




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