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【服部奨学生研究発表】 どの子もいてくれて嬉しい ~特別支援学校の学び~ 【導入記事】

服部国際奨学財団では、現役服部奨学生やOBOG、役員理事の先生方が集まる公式行事の場で、奨学生による研究発表の場を設けています。今回は、3月17日 に開催される「2023年度服部奨学生修了式・第2回服部奨学生研究発表会」で研究内容を発表してもらう4名の服部奨学生に、それぞれ発表導入記事を執筆してもらいました。

はじめに


 はじめまして。第12期服部奨学生、岐阜大学教育学部4年の高野優衣です。特別支援学校の教員になることを目指し、大学では、特別支援教育について学んでいます。皆さんは「きょうだい」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。障害のある兄弟姉妹のいる人(子ども)のことを平仮名で「きょうだい(きょうだい児)」と言います。私が特別支援教育に関心を持ったきっかけは、「きょうだい」であることでした。
 さて、皆さんは特別支援学校がどのような学校かご存じですか。皆さんのイメージはどのようなものでしょうか。この記事では、義務教育段階(小・中学部)の知的障害を主に、特別支援学校について少し紹介します!

高野さん

特別支援学校ってどんな学校?

特別支援教育の制度

 特別支援教育とは、障害のある子どもたちの自立や社会参加に向けて、その子の生活や学習上の困り感を、改善または克服するために支援していくことです。最近は、発達障害のある子どもたちや、そのほか特別な支援を必要とする子どもたちも特別支援教育の対象となり、特別な支援を必要とする子どもたちが在籍しているすべての学校で特別支援教育を実施することが求められています。
 そして、日本には、通常の学級、通級による指導、特別支援学級、特別支援学校等、様々な学びの場がありますが、特別支援学校は、障害の程度が比較的重い子どもの学びの場です。対象となる障害種は、視覚障害、聴覚障害、知的障害、肢体不自由、病弱の5つで、在籍する児童生徒の数は、義務教育段階の全児童生徒の約1%です。
 ここからは特別支援学校の特徴を3つ紹介します。

特徴⑴ 少人数の学級編成

 通常の学級では、児童生徒約40人に対し、先生が一人であることが一般的です。一方、特別支援学校は、一クラスあたり児童生徒6人で編成されます。また、障害が複数(=重複障害)の場合は、1クラス3人で編成されます。そして、先生については、複数の教員で指導にあたるティームティーチングであることが多いです。つまり、6人の子どもたちを2人もしくは、それ以上の先生で担当します。これが、一人一人に合わせた手厚い支援を行うための基盤となっています。

特徴⑵ オーダーメイドの授業

 特別支援学校の特徴の一つは、オーダーメイドの授業だと言えます。これには、2つのポイントがあります。

 1つ目は、教科書を自由に選択できるということです。子どもたちのニーズに合わせて授業を行うために、教科書を使うことが適切でない場合には、他の本を教科書の代わりとして使用することができます。毎年度、子ども一人ひとりに合った教科書やその代わりとなる本を選定します。

左2冊:知的障害者用の教科書 (通称:星本)
右:子どもに合わせた教科書の代わりとなる本

 2つ目は、実際の生活に即した授業を行うということです。特別支援学校では、「国語」「算数」といった教科の授業のほかに、「日常生活の指導」「生活単元学習」「遊びの指導」「自立活動」という授業もあります。これらを、教科・領域を合わせた指導と呼びます。その内容は、「クリスマスパーティーをしよう」「ふわふわランドで遊ぼう」「一日を元気に過ごそう」などといったもので、先生がテーマを決めて取り組みます。季節や地域、願う姿など、子どもたちの実際の生活に基づいて、一から授業を考えます。なぜ、このような授業を行うのでしょうか。詳しくは当日お話したいと思います。

生活単元学習の遊び場の様子

特徴⑶ 先生の専門性

 先生になるためには、大学等で教員免許状を取得したのち、自治体等が実施する教員採用試験に合格することが必要となります。免許状は、「小学校教諭免許状」「中学校教諭免許状(国語)」のように、学校種や教科によって分類されます。特別支援学校の免許状については、「特別支援学校教諭免許状(知)」というように、教科の代わりに、障害種によって5つ(視・聴・知・肢・病)に分かれています。これらの免許状は、学校種や教科、障害種ごとに、定められた科目および単位数を取得することで授与されます。特別支援学校に勤務する先生方の多くは、特別支援学校教諭免許状を有しています(※)。したがって、特別支援学校教諭の免許状は、特別支援教育についての知識を有していることの証明となります。

※現在、特別支援学校教諭免許状を有していなくても、幼・小・中・高の教諭免許状を有している人は、「当分の間」特別支援学校の相当する部の教諭等になることが認められています。

おわりに

 発表では、私自身がきょうだいとして経験したことや感じてきたことを交えながら、障害や特別支援学校のことをお話させていただきます。その上で、2つのことをポイントとして聞いていただきたいです。

⑴ 特別支援教育ってなんだろう?

 近年、教員の特別支援教育に関する専門性の向上が必要だと言われています。さらに、2022年には、通常の学級に、生活や学習上に困難のある児童生徒が8.8%在籍しているとの状況が報告されました。このことは、特別支援教育が、すべての学校、ひいては社会全体で考えていくテーマであるということだと考えます。まずは、障害があるということや特別支援学校のこと、きょうだいや家族のことなど、特別支援教育に関する種々のことについて、知っていただきたいです。

⑵ 学校ができることってなんだろう?

 どの子にも学校を卒業してからの人生があります。学校生活はわずかな時間です。限りある学校生活の中で、子どもたちのために何ができるでしょうか。このことを考えるにあたり、特別支援教育の最大の目的である「障害のある子どもたちの自立と社会参加」をどう捉えるかがカギになると考えています。皆さんはどう考えますか。

奨学生イベントでの高野さん

さいごに : メッセージ

 最後に、研究発表という貴重な機会をいただきましたこと、感謝申し上げます。先輩方の姿を見ながら、私も絶対に研究発表がしたい!と目標にしてきました。私の大学生活は、服部国際奨学財団に支援していただいたことで選択肢の幅が広がり、大学に通うだけでなく、県外の特別支援学校に何度も足を運ぶことができました。また、奨学生という最高の仲間とも出会えました。服部国際奨学財団との出会いがあって、今の私がいます。感謝の気持ちを込めて、登壇させていただきます。
 最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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