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【OBOGインタビュー #2】 第4期奨学生/島田大輔(日本学術振興会特別研究員PD)

第4期服部奨学生で、現在は日本学術振興会特別研究員(PD)として日々研究を重ねていらっしゃる島田大輔さん。服部奨学生期間中は、早稲田大学大学院社会科学研究科に在籍されていました。今回のインタビューでは、服部奨学生時代から現在、そして今後の展望について、お聞きしました。インタビュワーを務めたのは、第13期服部奨学生・舩冨玲菜さん(大阪大学工学部応用自然科学科3年)です。

舩冨さん(左手)と、OB島田さん(右手)

舩冨 
本日は、よろしくお願いいたします。まず、自己紹介をお願いします。

島田
はい、よろしくお願いします。日本学術振興会特別研究員PDの、島田と申します。研究テーマは、戦前期、朝日新聞で新聞記者をしていた太田宇之助という人物の、生涯にわたる中国認識の分析です。

青年時代の太田宇之助
(横浜開開港資料館所蔵)

太田氏は、大学在学中に孫文の革命に参加し、朝日新聞入社後も、リベラルな中国認識を堅持した人物です。彼の核にあった中国への思いとは何だったのか、ということを博士論文にしました。彼は1986年に亡くなっているんですが、自分の家をそっくりそのまま東京都に寄贈して、留学生の寮にしているんですよ。今も東京都太田記念館として残っています。そのような高い志も含めて、博士論文では分析しました。現在は、太田氏の同僚だった尾崎秀実氏やライバル社の新聞記者だった吉岡文六氏との比較研究をしながら、日本人の中国認識を多角的に分析しています。

舩冨
日本人の中国認識を検討しようというテーマは、どのような経緯で着想されたのですか?

島田
実は、もともとはイスラム政策について研究していたんですよ。しかし、アラビア語の習得は非常に難しく、思うように上達しませんでした。そのときに、指導教員の劉傑先生(早稲田大学社会科学総合学術院教授・服部国際奨学財団理事)から「中国はどうか」とご助言いただいて。実際に、大学2年と3年の時に中国旅行を経験していて、スケールの壮大さに衝撃を受けたことや、おおらかな中国人に何度も助けられたこともあったので、転向して日本と中国の関係を問い直してみようと思ったのです。

劉傑先生

舩冨
ありがとうございます。現在、日本学術振興会で特別研究員をされていらっしゃいますが、いつ研究者になりたいと思うようになられたのですか?

島田
物心ついた時には、研究者になりたいと思っていました。ただ、それが確信に変わったのは、大学3年生の時です。ゼミもそうですが、院生の方を交えた「インカレ式勉強会」というものがあり、修士課程、博士課程の先輩方に研究の話をお聞きしました。そこで、たくさん質疑応答をして、非常に勉強させていただいたのです。その経験から、研究者の道をより具体的に考えるようになりました。

舩冨
研究をされていて、どんなことが面白いと感じますか?

島田
人との出会いですね。発表会等で他の研究者の方に会えることもそうですが、何より、太田氏のご遺族の方々とお会いできたことが大変思い出深いです。太田氏の娘さんは、現在(※インタビューを実施した2022年時点)ご存命で御年100歳なのですが、お会いした際には「父が喜んでいると思う」と言っていただけました。実兄の子孫の方に資料をみせていただいたこともありましたし、そうやって直接子孫の方々にお会いして、文献資料には残らないようなお話を聞けたことは大変貴重な経験だなと。こうして、研究を通して新しい出会いがあることは、人生における財産だと思っています。

舩冨
次に、服部奨学生になったきっかけや、奨学生になってからの生活の変化を教えてください。

島田
私は、留学生の後輩が服部奨学生に応募したことがきっかけで服部奨学財団を知りました。彼はこちらの1期生で、今もOBOG会で活躍しています。その当時は留学生のみの採用でしたが、その後、日本人も応募できるようになったことを知って私も応募し、博士課程後期からお世話になりました。それまではアルバイト漬けの日々でしたし、貸与型の奨学金で先行きに不安がありましたので、ご支援いただいたことで非常に研究が捗り、今に繋がっています。大変感謝しています。

舩冨
服部奨学生だった当時を振り返って、活動やイベントで思い出や糧となった経験はありますか?

島田
博士課程後期から服部奨学生になったので、他の奨学生の皆さんとは随分歳が離れていたのですが、2013年2月に飛騨高山・白川郷に研修旅行に行った際、カラオケで非常に盛り上がったんですね。その時、年の差を抜きに皆で楽しんだことや、積雪の中に落ちてしまった僕を、事務局の方に助けてもらったことなどが、今でもいい思い出として残っています。そして、服部奨学生のOBとなってからもイベントに声をかけていただいて、OBOG、現在の服部奨学生の方と交流の機会を持てることです。いつも非常に勉強になりますし、ありがたいなと思っています。    

2013年度研修旅行・白川郷
参加者の集合写真

舩冨
今後の目標を教えてください。

島田
今の目標は、まず、博士論文を出版することです。そして、以前立命館大学で講師をしていた際に卒業論文の指導をしていたのですが、当時は学生との関わりがとても楽しくて、自分にとっても有意義でした。将来は准教授・教授になって、ゼミ生の学生指導に精を出したいです。また、服部奨学生の、特に文系の方々のキャリアアップのために、学術振興会の特別研究員や科研費のことなど、私の知見を提供できたらいいなと考えています。

舩冨
最後に、服部奨学金や服部国際奨学財団の活動に関心のある大学生・大学院生へ、一言お願いします。

島田
月並みではありますが、「成功した人は須く努力している」という言葉を送りたいですね。ただ、独りぼっちでは不可能なことも多いです。是非、一人でもいいので、心通じ合う友人を持っておくこと。そういう方と出会う場がこの服部奨学財団であれば尚良いですし、一緒に悩みや夢などを語り合える人を、一人でも多く作って欲しいと思っています。

舩冨
今後の益々のご活躍をお祈りしています。ありがとうございました。

島田
ありがとうございました。

* 服部国際奨学財団では、国籍・専門分野を問わず、社会的課題に強い関心と問題意識を持ち、その解決を目指した学修・研究に取り組む学生、また、経済的理由により修学が困難な学生に対して、月額10万円の給付型奨学金による支援を行っています。新規奨学生募集情報は、noteブログ・公式HPで随時公開いたします。お問い合わせはHPのフォームより受け付けております。

                          
           
               


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