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【名古屋市図書館・開館100周年記念】 「服部奨学生オススメの本100選」 図書寄贈プロジェクト#2 【有志企画イベント】

1923(大正12)年10月1日、鶴舞公園に市立名古屋図書館が開館し、今年で名古屋市図書館は開館100周年を迎えました。この節目に、服部国際奨学生有志による「服部奨学生オススメの本100選」と題した図書寄贈プロジェクトが始まりました。
今回、12月3日に実施された、服部奨学生有志イベント班主催「第2回・ビブリオバトル」に合わせて、第二弾として40冊を鶴舞中央図書館へ寄贈しました。ここでは、そのうち15冊、服部奨学生オススメの本をご紹介します。


木を見る西洋人 森を見る東洋人

リチャード・ニスベット(著)、村本由紀子(訳)

https://www.diamond.co.jp/book/9784478910184.html

西洋人と東洋人の「こころ」がいかに異なるのかを、様々な研究を通して議論する文化心理学の学術本。例えば、日本人は遠回しな言い方をするのに対し、アメリカ人はストレートな言い方をするのはなぜ?という疑問に対する答えが見つかります。著者のリチャード・ニスベットは、文化心理学では知らない人は居ないくらい超有名人。学術書であるがアメリカでかなり売れたようで、間もなく日本語にも翻訳された。なかなか重厚感のある本であるが、「文化」の違いについて「心理学」の側面から知りたいという人にまず最初に読んでほしい本。

一橋大学・博士前期課程2年

文明の衝突(上・下巻)

サミュエル・ハンチントン(著)、 鈴木主税(訳)

アメリカの政治学者のサミュエル・ハンチントンの著作です。著者は世界を西欧・中国・日本・イスラム・ヒンドゥー・スラブ・ラテンアメリカ・アフリカの八つの文明に分け、現代の衝突の本質は実は各文明の衝突だと主張し、今後は同じ文明内の国が団結し、異なる文明内の国が衝突を増す可能性があると予言しました。ロシアによるウクライナ侵攻後にもう一度本書を読みましたが、文明の衝突の理論を用いてウクライナ戦争をより理解しやすくなりました。国際関係を研究する上で読むべき一冊の本なのではないかと思います。

早稲田大学・博士後期課程2年

夜と霧

ヴィクトール・E・フランクトル(著)、池田香代子(訳)

https://www.msz.co.jp/book/detail/03970/

ナチス強制収容所の体験が書かれた有名な本ですが、ただ恐ろしい体験が書かれているのではなく、人間の本質を考えることができるので是非読んで貰いたいです。作者は精神分析学者でもあり、自身や人々の思いを客観的に書いています。私の印象に残っているのは、作者が苦しい思いをしているときにいつも愛する奥さんのことを考えていたと綴っている箇所です。何か乗り越えるためには目先の攻略ではなく、その先にあることへの強い思いが必要なのだと思いました。

三重大学・博士前期課程2年

同志少女よ、敵を撃て

逢坂冬馬(著)

ドイツとソ連の戦争に巻き込まれ、参加するソ連の女性狙撃兵の話です。主人公は村を出てこれから大学へ行くというところでドイツ兵に村を襲われ、助けてくれた女性狙撃兵に着いていくことを決めます。とても臨場感があり読んでいて自分の鼓動が早くなるのが分かります。悲しいシーンは今も印象に残っています。心にグサっとくる場面も多いですが最後には少し驚くラストがありました。読み応えがあり、今なお戦争が続く現代に考えさせられることも多くおすすめです。

岐阜大学・学部1年

シリア獄中獄外

ヤシーン・ハージュ・サーレハ(著)、岡崎弘樹(訳)

https://www.msz.co.jp/book/detail/08911/

半世紀にわたって存続する「アサドのシリア」。国際的に支えられた独裁国家にあって監獄は「国民的経験」と化している。ハーフェズ政権下の1980年、反体制派組織に所属していたかどで拘束され、16年ものあいだ獄中につながれたアレッポ大学医学部生――今世紀に入って「ハヤート」「ナハ―ル」ほか汎アラブ紙上で論陣を張り、「アラブの春」以後はその発言が世界的に注目されるにいたったシリア人作家・ジャーナリストがみずからの監獄経験、出獄後の元政治囚の生活、獄外情勢をめぐって綴った政治的省察。

早稲田大学・博士後期課程2年(みすず書房HPより引用、最終閲覧日:2023.12.27)

正欲

朝井リョウ(著)

最近読んだ本の中で、一番衝撃を受けた本です。現代を代表する語として「多様性」があり、多様性に配慮することは広告や作品などに必要不可欠になっています。しかしその多様性を細かく見ていくと、結局マジョリティが受け入れられる、想像しうる「欲」にしかその多様性は及んでいないことや、結局マジョリティが「それがあってもよい」という許可を与える立場に身を置く不均衡さなどをまざまざと突き付けてくる一冊でした。

東京大学・修士課程2年

在日朝鮮人ってどんなひと?(中学生の質問箱)

徐京植(著)

https://www.heibonsha.co.jp/book/b162734.html

「ザイニチ」(在日)と聞いたことがあるでしょうか。 日本には在日朝鮮人という、日本の植民地統治期に渡日した朝鮮半島出身者とその子孫が暮らしており、広義におけるその数は100万人に及ぶとされます。 自分の周りにも朝鮮半島にルーツを持つ人が存在するかもしれません。 しかし日本社会で「ザイニチ」の存在や、歴史について知る人は決して多いとは言えません。 「中学生の質問箱」というサブタイトルの通り、この本は、中学生が考える素朴な疑問に、在日朝鮮人2世の著者が一つ一つ答えるという形でまとめられており、わかりやすい良書だと思います。知るということは、互いを理解し尊重するための一歩です。この本はその手助けをしてくれると信じています。ぜひご一読ください。

一橋大学・修士課程1年

悪童たち (上・下巻)

紫金陳(著)、稲村文吾(訳)

これは中国の小説で原題は「坏孩子」です。 事故と見せかけた殺人事件に巻き込まれてしまった3人の子ども達。ある事情から、子ども達は通報ではなく犯人と直接交渉することにしました。子ども達対犯人の緊張感ある駆け引きにはグイグイ惹き込まれます。どんどん「悪童」になってしまう子ども達ですが、それでも同情してしまうくらいそれぞれの心情や背景が繊細に描かれていました。また、かなり過激で展開に勢いがあるので、一体どうなってしまうのか続きが気になり、読み始めると止まらなくなってしまう物語だと思います。私は、ドラマ「バッドキッズ」を見て原作が気になりこちらを読みましたが、ドラマと原作の相違点を探しながら読むととても楽しむことができました。

愛知県立大学・学部2年

ケーキの切れない非行少年達

宮口幸治(著)

https://www.shinchosha.co.jp/book/610820/

この本を読むまでは、非行少年、特に少年院に入る少年少女のことは自業自得だと思っていた。しかし、その背景には親の養育環境だけでなく本人の障害が関係していることもよくあることを知った。また精神的障害は目に見えるものではなく、一般人は理解するのが難しい。  この本では、少年少女の非行エピソードを踏まえながら精神障害などを学べる。読んでて気持ちよくなるものではなく、目をそむけたくなるものもあるが社会のことを知るのにとても勉強になる。特に法学部の学生には読んでほしい。

東京大学・法科大学院2年

ドーナツを穴だけ残して食べる方法 超越する学問 ━穴からのぞく大学講義

大阪大学ショセキカプロジェクト(編著)

https://www.osaka-up.or.jp/book.php?isbn=978-4-87259-470-6

この本は大阪大学の「ショセキカ」プロジェクトによって学生が出版企画から制作・編集・販売までを実際に手掛け,大阪大学の知の資産を本として発信したものです.「ドーナツの穴を残して食べる」という一見矛盾した命題に,大阪大学に所属する多様な研究者がそれぞれの専門領域からアプローチをしており,ドーナツの穴というライトな切り口から,さまざまに考える愉しみが得られる本になっています.

名古屋大学・博士前期課程2年

思考の整理学

外山滋比古(著)

大学生協の本売り場の棚に「2022年全国の大学生に一番読まれた本」と帯がある200ページ程度のハンディサイズの本。初版は1986年で、2023年の3月時点で、第128刷発行だったため、かなりロングセラーです。全体的にウィットに富む文章が続き、「学び」に対する姿勢について参考になる内容ばかりだったため、蛍光マーカーを片手に時々、本の中に書き込みをするほど奇妙なくらい魅力的な本でした。大学生、大学院生に関わらず、「学び」に興味がある人には大変おすすめです。

東京大学・博士後期課程2年

斜陽

太宰治(著)

https://www.shinchosha.co.jp/book/100602/

戦後の没落貴族の姿を、恋と革命をテーマに描いた小説です。この本をはじめて読んだのは小学生の頃でしたが、文中にちりばめられた様々な表現が忘れられず、私の考え方の根幹となっています。特に今でも時々思い浮かぶフレーズの一つは、「幸福感というものは、悲哀の川の底に沈んで、幽かに光っている砂金のようなものではなかろうか。」というものです。生きているうえで、時には悲しみの底に沈んでしまうようなこともありますが、そういうときにこそ見える静かな光が幸福だとすれば、人生とはそうしたささやかな幸福のためにあるものではないかとさえ思えてくるものです。

東京大学・修士課程2年

星の王子様

サン=テグジュペリ(著)、河野万里子(訳)

https://www.shinchosha.co.jp/book/212204/

かなり有名な1冊ですが、どれほど素晴らしい本に出会っても、私の1番はこの本です。飛空士である「僕」が、サハラ砂漠に不時着するところから始まり、宇宙のどこかにある小さな星からやってきた王子さまに出会う話です。 私はこのストーリーをフランス語、英語、ポルトガル語、日本語で読みました。特に原文であるフランス語版は全て翻訳し、自分なりに解釈することを試みました。時代背景や宗教、言葉の意味がわかるとさらに深く読むことができる1冊です。ぜひいろいろな言語で図書館に置いておくと面白いかもしれません。 この本の面白さは、人生に必要なこととは何かを語りかけてくれるところです。誰かを愛すること、何かに責任を持つこと、そして大切な何かを失うこと。それらを考えさせてくれます。中学生のときに初めて読みましたが、今でも大切にしている1冊です。

東京外国語大学・博士後期課程2年

ゲーテ詩集

ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ(著)、高橋健二(訳)

https://www.shinchosha.co.jp/book/201505/

誰もが知っている詩人ですが、ゲーテをよく知らない人へ、是非読んで欲しいアンソロジーです。現代の詩では触れることが出来ない、神秘的な思想、そして自然と人間が織り成す化学反応を豊かな語彙で表現する、詩人の愛した大地の讃美歌が、彼の瞳を通して表れる美しさや愛が、多様に詠われています。時には神に懺悔したり妖精と意思疎通をしたりと、普段私たちが想像もしない視点や景色を見せてくれる、ファンタジーも感じられる詩が編集されていますが、その詩に編み込まれた言葉の使い方や選び方、表現の滑らかさは、彼にしか出せない崇高さと儚さがあるのではないでしょうか。街の喧騒で忙しなく働く現代人こそ、そんな世界から束の間逃避出来る入り口として、私はこの本をオススメしたいです。

名古屋大学・学部3年

かみはこんなにくちゃくちゃだけど

ヨシタケシンスケ(著、作絵)

「もうぬげない」や「おしっこちょっぴりもれたろう」でもお馴染みのヨシタケシンスケさんの作品です。多くの絵本は前ページから読み進め、楽しむ場合がほとんどだと思いますが、「□□。◯◯だけど。」という文章で構成されるこの絵本は、後ろページからも読むことができ、前ページから読んだときと印象ががらりと変わる興味深い絵本です。絵本というと子ども向けというイメージがある方も少なくないかもしれません。しかし、この作品は、一人ひとりが今持っている自分の素敵な部分に気づかせてくれる絵本であり、大人の心も癒してくれると思います。ぜひ手にとって、元気をもらってみてはいかがでしょうか?

愛知教育大学・修士課程2年

今回までに55冊のオススメ本が寄贈されました。100冊までも折り返し地点を過ぎたところ。鶴舞中央図書館へご来館の際は、ぜひチェックしてみてくださいね。

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