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【服部国際奨学財団×中日新聞イベント】ビジネストレーニングin名古屋大学 服部ホール【開催レポート】

私たちは普段何気なく文章を書いています。知らず知らずのうちに身に着けた文章の書き方を用いて、私たちは様々な場面であらゆる文章を書いていますが、ふとした瞬間に“文章を書けるようになった!”と思う人は、少ないのではないでしょうか。
では、話すことや、聴くことに関してはどうでしょうか。“上手に話せるようになりたい!”と思っても、“上手に聴けるようになりたい!”と思う人はほとんどいないのではないでしょうか。
このように文章の書き方や、円滑なコミュニケーションを行う上でのノウハウを学ぶイベントが、ビジネスとレーニング(略:ビズトレ)であり、6月9日に名古屋大学服部ホールにて講演会が行われました。当日は中日新聞の講師の方をお招きして、それぞれ2部(1.伝わる文章力の書き方 2.コミュ力・雑談力アップ)に分かれてレクチャーが行われました。文章の書き方に加え、話すこと・聞くことに纏わるレクチャーも開催され、私たちが普段文章を書いたり、コミュニケーションを円滑に行う上で抱える悩みや疑問に対する答えを、講師の方から1つ1つ丁寧に返していただきました。

結論を先に持ってくる「逆三角形」が鍵

はじめに、講師の方は、読みやすい文章では「結論」を先に持っていくことが大切だと仰っていました。レポートでは最後に結論を持っていくことが一般的ですが、読みやすく良い文章は結論を予め初めに持ってくることが原則にあるそうです。“結論を先に書き、その次に大切なことを書く”、この繰り返し(重要度が高い文章から順に書いていくこと)が大切だと説明してくださいました。実際に結論を先に書いて文章を書いてみると、何が大切なのか、一目瞭然な文章を書くことができます。さらに、結論を先に持ってくる次のステップとして、短文で1.結論、2.きっかけ、3. 目標 の順に文章を構成していくとすっきりとした読みやすい文章を作成することができるそうです。仮に、志望理由書を書くことを想定した場合に、はじめの結論の部分では、就活や研究分野に特化して書き、そこからどのようなことを具体的に学んだか、といった“具体性を持たせること”を重視して、その後の目標では、これらに付随して今後は何をしたいのか、というように話を発展させていくことが重要であると口にされていました。
文章を書く上での注意点として、接続詞の落とし穴、形容詞、ありがちなミス、主観と客観が挙げられます。例として、「しかし」と「そして」という形容詞ですが、これらはない方がよりすっきりとしていて、分かりやすい文章を作ることができるそうです。というのも、このような接続詞は使わなくても、書き方の工夫でほぼ同じ意味の文章を作ることもできるからだそうです。       
そして、形容詞についてですが、形容詞には“便利だが、使いすぎると逆効果”な特徴があります。例えば、「彼女は極めて優秀だ」という文章と、「彼女は優秀だ」という2つの文章があった場合、左は情緒的(悪く捉えれば蛇足)、右は言葉が強い(悪く捉えれば淡泊)という特徴があります。つまり、どのような場合においても強調すれば意味合いも強くなる、というわけではないということです。さらにありがちなミスとしては、「予約すること」を「あらかじめ予約する」と、既に予約の“予”が「あらかじめ」や「前もって」という意味があるのに、2度同じ意味の言葉を繰り返してしまうことを指します。最後に、主観と客観についてですが、「そのデパートで売られている革靴は2万円で安かった」という文章があった場合、この文章では「2万円」という客観的事実に加えて、「安いと思った」という主観的な主張が同時に述べられています。良い文章というのは主観を入れて書くものではなく、常に第三者の目線で公正中立に、真実のみを書く姿勢でいることが大切です。これらの注意点に気をつけるだけで、短時間で質の高く読み手に伝わりやすい文章が書けるようになるそうです。

コミュニケーションの要(言語・非言語・聴く力)

“社会性の高い人”と聞いてコミュニケーション力が高い人を想像する人も多いかもしれません。しかし実際には、人の個性や性質・気質といった部分はコミュニケーション力と関わりがないと講師の方は口にされています。では、私たちはどのようにしてコミュニケーション力を身につけているのでしょうか。それはコミュニケーションの需要な要素の3つ、言語・非言語・聴く力を自然と身につけているからです。以下で詳しく見ていきます。
 まず、日本は世界で1番ハイコンテクストな言語の国だと言われていますが、具体的に何がそう言われている所以なのでしょうか。例えば、「なるべく早く返事をください」や「できるだけ早く返事をください」と言われた際に、返事の期限を“今日“と思う人もいれば、”明日“と思う人もいます。このように「相手のいわんとすることを察する」のがハイコンテクストの特徴ですが、ミスや誤解が生じやすいのもその特徴の1つです。「聴き手が相手の言いたいことをどれくらい汲み取ることができるか」が重要でありながらも、人それぞれがもつ自分と相手のモノサシ(価値観・基準・主観等)によって、1人1人が自分の都合の良いように解釈をしがちです。コミュニケーションは伝わったことが全てであり、その点において判断せざるを得ないことを考慮すると、相手に理解してもらえるよう、相手がそのことについて「どれくらい知っているのか」意識して(チャンクダウンして)話すことが大切なのです。
次に、対人関係で言われている「3つの壁」というものですが、これは、人が対人関係を築く上で、常に3つの壁を乗り越えなくてはいけないものであると、講師の方は説明されていました。それは、第1に「外見」、第2に「態度」、第3に「話し方」、そして第4に「内容」だそうです。つまり、人は「何を言っているか」よりも、「誰が言っているか」に影響を受けると考えられます。非言語コミュニケーションにおいてはこうした、本人の特徴、身体的動作、話し方、身に着けているものなど全ての要素が外見や態度から見受けられ、「この人と話したい」、「この人の話を聴いてみたい」と思える所に人は引き寄せられるのだそうです。
最後に普段のコミュニケーションにおいて私たちは一般的に「聴く事よりも伝える事を重視している」傾向にあると言われていて、自分の聴き方を意識する機会というのはあまりないのではないかと考えられます。相手の話を聴かず、自分のことに集中している「無視」や相手の話を受け入れようとしない「否定」、相手に話すスキを与えようとしない「乗っ取り」といった話の聴き方は、話している相手を不快にするだけでなく、信頼性を失う原因にもなります。聴き手にとって話を聴く上で重要な態度として、言語的であろうとも非言語的であろうとも何らかの肯定的な「反応」を取ることが求められます。「そうなんだね」、「なるほどね」といった言葉をかけるだけで、相手は話しやすくなったり、「この人に話して良かった!」というような肯定的な気持ちになれるそうです。

全体を通して

 ビズトレでは、ただレクチャーを“受け身”で聞くのではなく、説明を受けた内容をもとに指定された時間内にテキストに書き込み、書き終わった後に講師の方に指名された学生が自分の書いた内容を全体に向けて発表する“能動的”な場でもありました。イベント自体が実践的な場であったことが、今回学んだことを身につけ、今後活かす上で効果的だったのではないかと思いました。発表の後にも講師の方からフィードバックをいただけるので、自身の理解力の確認やその増進にもつながると感じています。今後は、今回学んだことを実践しつつ日々の生活の中で応用することができればと考えています。

(文責:ニケライ ベッヘナーゼ 第13期奨学生)

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