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「名言との対話」9月14日。原仙作「原の英標」

原 仙作(はら せんさく、1908年9月14日 - 1974年7月9日 )は英語教師英文学者。

長崎県諫早市出身。旧制海星中学、長崎高商卒。朝鮮で教諭。戦後、旺文社主幹、編集顧問。傍ら、高校、短大、大学、予備校などの非常勤講師。武蔵野女子大専任講師を経て、1973年短大教授。

朝鮮時代の25歳の原仙作の著書『英文標準問題精講』は、1933年に刊行されたが、現在まで続くベストセラーで、「原の英標」と呼ばれる。『和英標準問題精講』、『英文法問題標準精講」を含め、大学受験生のバイブルであった。弟子の中原道喜(2015年没)が長くこのシリーズの補訂を行ってきており、現在もこの本は生きている、長い生命を持った本である。

学校法人海星学園のブログには、「100周年記念誌」についてのブログがあった。「覚先生の回顧録による」とある。仙作の2つ違いの弟は原覚という画家であったが、この学園の先生をしていたのであろう。学園同窓会室には「英標」を書いたタイプライターがある。二人の母はNHKラジオ講座で英文法の講義をする仙作の声に聴き入っていたという覚の回想が載っている。

「希望の英語教育へ(江利川研究室ブログ)」では、「出典研究の第一人者による頻出問題の宝庫」として「原仙の英標」を取り上げている。20世紀前半に出版された受験生用の学習参考書ランキングが紹介されているが、原の「英標」は堂々の5位である。トップは赤尾好夫編『英語基本単語熟語集』(1942年初版)だ。この本は「赤尾の豆単」と呼ばれたベストセラーで、私もお世話になっている。

「英標」は入試問題の出典と出題傾向が明示されて受験生には便利だった。原は「出典研究の第一人者」、「英語入試問題研究の第一人者」とも呼ばれていたという。

このブログに中に「昭和初期の入試に出た作家ベスト10」があった。10位は「自助論」で有名なサミュエル・スマイルズ、2位は「幸福論」を書いたバートランド・ラッセル、そして第1位はラフカディオ・ハーン小泉八雲である。このあたりは昭和初期の社会の雰囲気が感じられる。

このブログの筆者は、「英標」を質が高く、英文の量が多い、そして解説が深いと評価している。「語学力の進歩は努力の量に正比例する」という文言もテキストの中にあり、好きだと語っている。原仙作はこのような勉強の教訓の英文も意識して用いていたのだろう。

一冊の本が100年近くも後継者によって補訂されながら、命脈を保っていることに感銘を受けた。言語は生き物であり、入試の傾向も変化しているだろうから、常に最新の状態にしておく必要がある。これは大変な仕事だ。原仙作、中原道喜の後は、どうなったのか、興味が尽きないところである。

英語に生涯をかけた原仙作の努力の結晶は「原の英標」と呼ばれた。生命の長い代表作を持っていることで、刊行から100年近く、そして亡くなってから半世紀上にわたって、原の名前は生き延びている。この人は偉大な仕事をなした人だ。



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