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寺島実郎『ダビデの星をみつめてーー体験的ユダヤネットワーク論』978-4140819265

寺島実郎さんのネットワーク型世界観の三部作が完成した。2010年刊行の『大中華圏』、2017年刊行の『ユニオンジャックの矢』につづく、ユダヤを論じた『ダビデの星をみつめて』がそれである。大中華圏、大英連邦、ユダヤは、それぞれ、静的な地政学的見方ではなく、動的なネットワーク力によって繁栄しているという見方である。

まず寺島の方法論の中核である「ネットワーク型世界観」を語っている部分を中心に拾い出してみよう。「ユダヤ論」、「日本への提言」などは次回にとりあげる。次に三部作をまとめて論じることにしたい。

方法論の中核は、「文献研究とフィールドワーク」「体験」「実感」「積み上げ」「全体知」「現象の背景のストラクチャー」「定点観測」「ネットワークはつながり」「体系づけ」「歴史と地理」などである。

本書の目的。

  • 半世紀以上、世界を動き回り、100か国に迫る国々を訪れてきた。、、、可能な限り、私自身が体験したことを軸に、文献研究とフィールドワークを積み上げ、世界認識を深めるうえで。「知るべきユダヤ要素」をまとめたのがこの本である。

  • 三大宗教を学び直すことで、宗教民族とも呼べるユダヤ人のあり方に次第に理解を深めていくことになるのである。

  • 本書は戦後日本を生きた一人の日本人としてのユダヤ論であり、ユダヤに対する「全体知」の試みである。

  • この本のタイトルを『ダビデの星をみつめて』としたのも、苦難の中で頭を上げて、自らの生きるべき道をみつめ、生き抜いてきた民族を正視することから、我々自身の未来を探ろうという想いを込めたものである。

寺島実郎の方法。

  • 私が行ってきた議論に個性があるとすれば、それはできるだけ、目の前で起きている現象に向き合いながら、その背景にあるストラクチャーを捉え直そうとしてきた点にあると考える。

  • 私の文献研究とフィールドワークの積み上げが始まった。

  • 私にとって世界認識を探る定点観測の重要なポイントになっている。

  • 歴史や地域を越えながら、そのつながりを見ていくことが、ユダヤ・ネットワークの理解に欠かせない重要なポイントなのである。

  • 今、必要とされているのは、そこ(一次情報)から意味を読み解き、整理して体系づけ、優先度を判断する力である。膨大な情報を体系づけ直したときに異なる意味があらわれ、自分たちの進路が見えてくる。ビッグ・テックの行っている膨大なデータの集積と分析は。すなわちデータリズムによる情報優位性をめぐる戦いなのである。情報を深化させ、課題解決に昇華させる力は、今日に生きる一人ひとりにとっても重要であることを感じるのである。

  • 私も「情報」の世界を生きた人間だが、「専門知」に傾斜しがちなプロの世界の中で、如何にして「全体知」の中で軽重判断をするのか、そのことの大切さをかみしめてきた。

ネットワーク型世界観「三部作」を終えて。

  • ネットワーク、つまり「つながり」の中で世界を考察することの大切さをこの三部作に示してきた。これこそが、私が世界を動いて実感したことだからである。

  • 地球儀ではなく、メルカトール図法で描かれた世界地図に国家を配して、「国際関係」を捉えることには限界があるのだ。より的確な世界認識を持つための座標軸として、民族のネットワーク力が重要で、その典型として「大中華圏」、「大英連邦」、そして「ユダヤ・ネットワーク」を取り上げてきた。

  • 私自身の体験を通じた実感と、文献研究の積み上げの中から、三部作としての書物になったもので、柔らかい世界認識を探る人たちの参考に供したい。

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