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誇り高き孤独 〜 リアノン・ギドゥンズ「思ひで」

(2 min read)

Silkroad Ensemble with Rhiannon Giddens / 思ひで

能地祐子さんのツイートで知りました。

音楽集団シルクロード・アンサンブルと二代目芸術監督リアノン・ギドゥンズが、鈴木常吉(セメントミキサーズ、つれれこ社中)の「思ひで」(『深夜食堂』オープニング曲)をカヴァーしました。昨2021年11月、マサチューセッツはケンブリッジでのライヴ・パフォーマンス。これが絶品です。

シルクロード・アンサンブルからコントラバスとハープだけを従えて、リアノンは常吉の日本語原詞のままカヴァーしています。常吉の「思ひで」だって、もとはといえばアイリッシュ・トラッド「プリティ・ガール・ミルキング・ハー・カウ」ですから、リアノン&シルクロード・アンサンブルがやるのにそんな意外性はありませんけど。

でも日本語詞のまま、それをアメリカでやるというのはなぜだったのか、考えてしまいます。いずれにせよリアノンらのヴァージョンは、孤独感、寂寥感が著しくきわだっていた常吉のオリジナルに比し、高らかに飛翔するというような誇りに満ちた美しさをまとっているのが最大の音楽的特徴。

それにより、常吉オリジナルの表現していた人間のかかえるソリチュードが美的に昇華されていくかのような心持ちがするっていう、そんなパフォーマンスじゃないでしょうか。ハープもベースも音の粒だちがきわめてよくて、録音状態がすばらしいせいでもあるんですが、リアノンが完璧な日本語で歌う孤高のプライドを実にクッキリとふちどりしています。

と同時に常吉の「思ひで」が、もとからワールド・ミュージック系の越境的なひろがりをはらむ普遍的な曲だったのだということにも気づかされ、あまたの日本語曲からこれをチョイスしたリアノンとシルクロード・アンサンブルの慧眼にも感心します。

(written 2022.2.25)

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