【01】漫画家という生命体について考える妖怪
こんにちは、漫画家をしているひさまつえいとです。
なにか記事でも書こうか~と思ってからだいぶ経つので無理やり読み物を書くことにしました。
まず上の方に書かなきゃな!と思ったのが、
「漫画に正解はない」ことと、
「誰かの答えが自分の答えになる確率は低い」こと!
ここに書くことも、普段X(twitter)やInstagramなどで書くことも、すべては私のことであって、漫画家さんや他の誰かをまとめる意味はありません。
世の中にはいろんなひとがいるので、カラフルな考え方ができると楽しいと思う!
■オープンアンサー型作家
私は自分の著作について話すのが苦手です。
これは、こっ恥ずかしいからとか言語能力が低いからではなく、作者が「こういう作品です」と発言することが読者のアンサーになってしまうのが嫌だから。
私が描いた作品を、誰がどう読んでもいいと思う。
「泣ける作品」「笑える作品」「つまらなかった」「面白かった」など、同じものを読んだときにバラバラな読み方があることが最高に楽しいので、私の漫画は読まれた段階で読んだ人のものになっていい。
私が「カワイイ女の子がカッコイイ男の子と出会う話です」と紹介することで、読み手がそのキャラクターを「カワイイ」「カッコイイ」と認識しなくてはならない、そう強制してしまったような気がしてなかなかうまく言えないです。
カワイイと思わなくていい、読者がなにをカワイイと思ってるかは人の数だけあっていいよ!そういうかんじ!
他の作家さんが紹介しているのがどうというわけではなく、あくまで私がそのあたり、ヘタクソということ。
執筆活動を始めたばかりのころ、よく「漫画家は読者の読後感をコントロールできるものを作らなくてはならない」と言われていたんだけど、それは今でも本当によく考える。
その通りだと思ってちからにもなるし、いや!自由に読んでくれぇ!と突っ撥ねるときもある。
私の読んで欲しいように読ませたいところと、読んだ人の頭と心を間借りして完成するところの二つをどちらもうまく入れ込んで執筆出来たら理想だなと思って日々作業に当たっています。
できているとい~いな!
送っていただけるファンレターの感想などで「やった~成功している~!」と感じたり、「おおーそういう読み方もできるのか!どんな毎日を送っている方なのか直接話を聞けたらいいのに!」と思ったり。
すごくすごくたのしいです。
著作について話さなきゃならない機会も割とあるので、その時結構困るんですよね~。
すべて大切な作品です、みたいなつまんないことしか言えない…
なので、これから作家を目指す方や今絶賛執筆中の作家さまたちで、心の安寧が取りずらい悩みを抱えている方がいらっしゃったらぜひ参考に……なるかなあ…!
■漫画家というジョブに対する適正
これもよく私が考える事ですが、私は漫画家にとことん向いていません。そして超絶適正がある。
私はいわゆるビジネスタイプで、仕事として漫画家をしています。
小さい頃から漫画を読み、慣れ親しんで、いつしか漫画家になるのが夢になり、その夢を大人になって叶えることができた…と言えたらどんなによかったかと思うほど、漫画家になる気配が一ミリもなかった。
世間を騙している気分で申し訳ないほど、漫画家とは無縁の人生を送っていました。
どうやって漫画家になったかなどはまた別の機会にお話しできればと思いますが、突然変異みたいな経歴です。しかしそう言うとまるで「なりたくなかった」かのように捉えられてしまいそうですね!
それまで漫画家になる未来が見えたことがなかったので、なりたくないと思ったこともないです!(笑)
つまり、「小さい頃から絵が上手だと評判の漫画好きオタクキッズ」というステレオタイプの漫画家ではないため、「やっぱり子供のころから絵うまかったんですか~?」という漫画家なことがバレたときに100%聞かれる質問にうまく答えられません。
いつも腰に手を当ててウインクしてる女の子の絵を描く子供でした。顎のすぐ下から足が生えてるやつです。でもそれ漫画家じゃない人たちも描いたこと…あるよね…?
他にも「やっぱ美大とか卒ですか?」や「有名な先生のアシスタント経験があるんですか?」「賞をとってデビューしたんですか?」という定番すらこなせません。
「いや?全くないですね~」という超超超超エンタメ性の低い漫画家です。
みなさんすごいよ、ほんとうに。
逆に、そうじゃなくても漫画家になれるんだ~!という希望を与える存在になっていきたいものですね…キラリとも光ってない凡人として毎日精進していきます!
他にも向いてないなと感じるポイントがあるので適当にまとめますね。
新規案件や執筆作についてのこだわりが低い
自分が責任持って描けなくなきゃいいかなって…!取引先の方向性と毎回相談します。やりたいもの(描きたいもの)は特にないんですよね、描けばなんでも面白いので…キャラクターデザインへのこだわりが低い
これも取引先と相談します。そのレーベルや編集さんのほうで求めているイメージがあるだろうし、なければ流行ってるのを勉強します。カラーが苦手なので最悪肌色が緑じゃなきゃいい
これは見たらわかってくれるだろ機材(仕事道具)に対する執着が薄い
旅行や移動が多いのでポータブル端末(ipad pro)がメインだし、持ち歩けば多少壊れてもおかしくないので、不調があったらノールックで買い換えます。パソコンも安いのでいいし、ペンタブも数千円のやつでいいかな~機材が高ければ上手に描けるようになるわけでもあるまいし~タイプ記憶力がだいぶ低い
致命的ですが、納品すると数分前の原稿の記憶が飛びます。そのため執筆中から数か月後の配信日にはなに描いたかなんて…え?こうかいされたの?なにが?
もちろん、漫画家さん全員がそうってわけじゃないですよ!わかっていると思うけど!
上記の理由で世間的な「漫画家らしさ」を演技しないと装えません。
わりかし毎日、あーあ、向いてないな~と感じます。
そして今度は、超~絶~に、適正がある!と思うポイント。
一般的な大学卒の一般的な就職&社会人経験がある
私には絵や漫画のための技術及び知識は足りないですが、比較的読者さんたちと同じような環境で暮らしてきたことによる「等身大性」という大きな武器があります。これ、結構使えます!新規案件や執筆作についてのこだわりが低い
向いてないポイントでもありますが、これはこれで強みです。描けばなんでも楽しめてしまうので、いろんな作品に携わりたい。目指す自分のゴールが不確定なので、間口を広くとることができます。キャラクターデザインへのこだわりが低い
上記理由と同じ!描けばなんでも可愛がれてしまう。いろいろ執筆する中で描けないデザインがなくなったらすごいたのしくない!?オープンアンサー型
これはいちばん上にも書いたことですが、どう読まれたって面白いよねタイプ。好きと思ってくれる気持ちも、つまらない・嫌いと思う気持ちも、どっちもありがとな~!いいことでも悪いことでも、なにか感じるものがあってくれてよかったよ👱スケジューリング能力の鬼&マルチタスク
この世で一番だいじ、コレ
向いてないポイントにもあるように記憶力が低いため、毎日毎瞬間違うことをしても意識が混濁しないマルチタスクなんです。同時に連載を掛け持ちさせて貰ったり、新規案件の打ち合わせを他社と同時進行でやっていますが、混ざったことはないですね。全部違う作品だし。
そして、スケジューリング!これすごい当たり前のコツがあるんですけど、
「一番調子が悪かった時の作業日数」で予定を組むんです。
そして、「プロット・ネーム・作画など、作業が切り替わるごとに中1日を予備日として設定」なんかあったらこの予備日を消費して調整します。
ちなみにこの予備日、別に休日カウントじゃないので、予定通り進行してるからって休まないです。
使わなかったらその次の作業を繰り上げます。そうすると最終日は繰り上げた分早く終わりますよね、理論上!そしたら寝る!必要以上に寝るんだ!!!
また、1か月に2回は寝込んでも間に合うスケジュール、というテーマで予定を組みます。
寝込まない健康な人だったとしても、突然来るイレギュラーを「想定の範囲内」で片付けるほうが安全です。
「この間すごくはやく描けたし…」「寝ないでやれば間に合う」「筆がのればこんなもんパパっと~」という自分の戯言を信じないというのが大事です。
火事場の馬鹿力を毎回出そうとしていたらそこはもう焼野原です。返信爆速獣
これもすごく大事…会社員していたら当然の事かと思いますが!
自分もいつ返事がくるかわからない相手と仕事するのは嫌ですよね~。相手ももちろん嫌なことなので、きちんとメールを返しましょう…
「具合が悪くて休みたい」「間に合わないかもしれない」ということですら、そう思った瞬間やその兆しがあったらすぐ送るほうがいいです。「間に合うかもしれない」でも「間に合わないかもしれない」のなら、その旨を伝えるべきですからね…!言いにくいと思いますが、「間に合わなかったです」というほうがしんどいので。
同じように「ちょっと確認したいことがある」「ストーリー展開に迷っている」「セリフ変えたい」なども、後回しにせず即連絡之基本也です。
連絡は取れれば取れるほどいいです。
私は確認の取れていないことを勝手に進行したくないので、「ん?」と思ったらすぐメールしてしまいます。文字で書くのが面倒なタイミングだったら「確認したいことがあるのでお電話下さい」を速攻送るタイプです。
別にたいしたことないじゃん!と思いますよね~、そうなんです。
私は漫画家ですが、出版社や編集者さんは会社員です。読者さんたちもほぼ会社員や元会社員が多いはず。
漫画家だけど会社員と仕事をしているので、会社員もすなることを漫画家もしてみんとてするなり、です
漫画家のくせに漫画家みたいなことが言えず、向いていない!
でも、いま漫画家できているのはこれが大きな理由だと思っています。
そりゃ絵もかけなきゃいけないし、お話もかけなきゃいけないけど、それだけじゃ働けないんですよ…。
実際にはこれにさらにお金の管理や人材育成、広報宣伝や営業、体調管理含む人間的生活なども当然するので、「絵やストーリーテリング」は業務のうちのごく一部だと思います。
■今日はここまで
このように、漫画家という生命体は多種多様な種族が入り混じっており、じっぱひとからげに「漫画家さん」というラベルを貼るのにはややボコボコしています。
本棚の変形本たちのように、列にうまく並ばせるのは難しいです。
ここに書いたことは、あくまで私の話ですが、これが誰かの助けになったり、ならなかったりすればいい。
こうでなくては漫画ではない、こうでなくては漫画家になれない。
こうでなくては読者ではない、そうでなくては読んではいけない。
そういう凝り固まった価値観が少しでもほどけるといいなと思います。
なにせ、正解はないですから!
描きしイキモノも読みしイキモノも、気がラクにな~れ🌟
こんな感じの適当な記事ですが、時間潰しにはなったでしょうか。
それでは今日も原稿してまいります
👇著作が気になった方はこちら👇
🎶実は音楽もやってるので、ノーミュージック・ノーライフな方どうぞ🎶
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