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ねこがたり#1 マルコのこと

いろんな猫たちの思い出話をちょこちょこ書いていこうと思います。
#1はマルコのこと。



2013年の年明けすぐ。
町内に捨て猫があったらしく、見慣れない猫が4~5匹、近所をうろうろするようになりました。

馴れてきた頃のマルコ。もっふもふ。ライオンのたてがみのよう


おそらくですが、誰かが車に猫を積んでやってきて置き去りにしたのではないかと思います。
仔猫ではなく若い猫たちで、柄も様々ですが折れ耳や長毛……折れ耳はおそらくスコティッシュかスコの雑種、長毛はノルウェージャンっぼい。もしかしたら繁殖屋が処分に困って捨てたのでは?という感じ。

当時我が家は猫2匹でしたが、高齢の義母の体調不良で義母の猫を預かっていて、その猫がウチ猫に攻撃してしまうため隔離せねばならず、とても外の猫を保護する余裕はありません。
いろいろ「できない言い訳」を並べて見ないふりをしているうち、近所のお宅で玄関前に餌を置き始めたらしく、猫たちはそちらに移動していきました。
ちなみに餌だけやって不妊手術をしなかったので、それはそれは可愛い折れ耳の野良仔猫が増えてしまい、その後数年間は町内会で大揉めしましたが、それはまた別の話。
餌だけやっちゃ駄目ですよ。餌やりと不妊手術はセットが基本です!


さて、捨て猫たちの中に一匹いたノルっぽい長毛猫。
この長毛だけが、餌をくれる家ではなく、なぜか我が家の庭に居座ってしまいました。
保護するつもりはなかったので置き餌などしていないのに、です。

家の中から撮りました。ゴミ箱の上が定位置

私が仕事から帰るとどこかからともなく現れ、庭の資源ごみ収納ボックスの上に陣取って家の中をうかがっています。
私がキッチンに移動するとキッチン側に、お風呂場に移動するとお風呂場の窓の下にと、人の動きを察知して家の周りをぐるぐる廻りながら鳴く鳴く。

完全にロックオンされてる。
なんでご飯のある家に行かないの~?

こちら北東北、1月、めちゃくちゃ寒い時期です。
大鳴きする庭の猫を無視するのにも限界があり、「とりあえず不妊手術するか…」と渋々捕獲することにしました。
とはいっても捕獲機なんて持っていないので、家にあったメタルケ一ジを代用することに。
庭に置いたケージの扉に紐を結び、その紐の端っこを持って家の中に待機。猫が入ったら紐を引っ張って扉を閉め、サッと庭に出てケージをロックする計画です。

猫を捕獲した経験のある人ならわかると思いますが、
こんなん成功するわけないだろ!
友人に捕獲機を借りればいいじゃん!
やる気がないにもほどがある。

この時点でまだ私は「いちおう捕獲は試みた。でもうまくいかなかった」というアリバイ作りをしていたんだと思います。へタレめ。

さてそのやる気のない捕獲劇ですが、ケージを仕掛けて15分もしないうちにあっさりと捕獲できてしまいました。ありえん…なんで入っちゃったんだ…
ケージの扉をロックすると驚いて暴れましたが、そのまま動物病院に GO。


病院にて。ビクビク

当時通っていた動物病院の先生はさわれない猫の扱いがとてもうまく、興奮状態の長毛くんにさっと鎮静剤を打ち血液検査。
病気もなく、虫もおらず、特に必要な治療はありませんでした。

雄、年齢は1歳前後。

すぐに去勢手術の予約を入れました。
その時「この子、馴れますよ。大丈夫」と言われたのですが、「馴れなかったらリリースしよう」と思っていたので、安心する反面、(てことは、飼い主探ししなきゃならないのかあ)と、先のことを考えると不安でいっばいでした。

人徳のない私から猫をもらってくれる人なんているんだろうか?

そろそろ名前が必要になったので、仮名「マルコ」と名付けました。

去勢手術も無事終わり、3段ケージで過ごして1週間ほどすると撫でることができるようになり、そこからは早かった。
抱っこもOK、爪切りもOK、オモチャで遊ぶより人間の膝に乗っていたい甘えん坊でした。

最初の最初は保護する気もなく見捨てようとしてたくせに、こうなると「可愛い……讓りたくない……」とか思っちゃうんだから勝手なものです。
いやいや無理。
もう我が家の猫キャパはいっばいいっぱいなんだから!

いったい誰がマルちゃんたちを捨てたんだろう?不妊手術もしていなかったから繁殖屋?じゃあ純血種?
若くて人懐こくてルックスが良い純血種なんて、仔猫じゃなくたってすぐに貰い手が決まるのに。
その手間すらかけたくなかったの?わからない。

貰い手を探すつもりだったので我が家の猫たちとマルちゃんは完全別室でした。
とはいえ「ほかの猫がいる」とウチ猫にはバレバレだったので、お互いのストレスも無いわけが無く、とにかく早急にマルちゃんの家を探さなくては。


当時いちばんアクセスのあった里親募集サイトに掲載してもらったところ、目を惹くルックスであったためかすぐに何件かお問い合わせが来ました。
…しかし、お相手は知り合いでも何でもない初めて話す方々で、正直言って「この人に渡して大丈夫なの?」という疑問を払拭する手段が何もない。
なんの決め手もないままなので「少々お待ちください」と返信して数日放置していたら、何人かは「ほかで決めました」とお断りを入れてきました。
そういう世界かあ。さてどうしよう……。

ところがそれからすぐ、テンション高めの連絡をくれた希望者さんがいらっしゃいました。
いわく「猫を飼いたくて飼いたくて夢にまで見るようになった。その夢で見た猫とマルコがそっくりなので、これは運命だ!と思い連絡した」とのこと。
こちらもピンときて「この人だ!」と思いました。

「福島原発周辺で保護された猫を譲り受ける予定だったけれど、譲渡直前に元の飼い主さんが見つかったため破談になった」といういきさつもあり、サクサクと話は進んで神奈川までお届けに行きました。
お若いご夫婦で、連絡をくれた彼女はふんわりとした可愛い方なのに首にタトゥーが入っててびっくり(笑)
初めてお会いしたのに「乾杯しましょう!」と、ご自宅で昼酒をいただきました。
それが2013年3月12日のこと。
まだまだ震災の記憶の残る頃だったのでよく覚えています。
その後しばらくはマルちゃんの夜鳴きがひどかったそうですがしばらくするとそれもおさまり、何回か年賀状をいただきました。


これが、私の唯一の「保護猫の貰い手探し体験」です。

文字にするとチョロ過ぎますが当時はほんとに重圧で、体重減りました…。
猫1匹保護することがこんなに大変だなんて。

たった15分で捕獲できて病気も怪我もない人馴れしている猫でさえ、新しい飼い主を見つけなきゃいけないプレッシャーでヘトへトになりました。
マルちゃんが我が家に狙いを定めて居座らなければ、保護することはなかったです。
この1件で「積極的な保護活動は私には荷が重すぎる」と実感しました。
ここから数年後に「消極的保護活動」として保健所の保護猫預かりボランティアを始め、なんだかんだで延べ20匹くらい面倒を見ることになるのですがが、その話はまた次に。


マルちゃんが今も元気でいるかはわかりません。
新しい飼い主さんからはなにも連絡はないけど、もう10年以上前のことなのですっかり今はシニア猫になっているはず…




さて、道で物を拾ったら警察で「拾得手続き」をしなくてはなりません。
「拾い物を預かっています」という届出です。
一定期間に持ち主が現れたら返却、現れなければ所有権を取得することができます。
…しかしその拾ったものが「動物」の場合、この手続きしてしまうと「一定期間は新しい飼い主を探すことはできない」ことになります。

猫保護をライフワークにしている人に聞いたところ、「猫の遺失物届は出てますか、って電話で聞けば教えてくれるよ」とのこと。
警察に書類で手続きしてしまうとあくまで「落とし物」「拾い物」として扱われるので、その後もいろいろ手続きが必要になります。ご注意。

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