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ハリケーンで破壊された街に行った ~メキシコ・アカプルコの現状~

昨年12月、ハリケーンで壊滅的な被害を受けたアカプルコという街に災害復旧ボランティアに行ってきた。
アカプルコはメキシコの太平洋側に面したリゾート観光都市で、何度もハリウッド映画の舞台にもなっている。江戸時代に伊達政宗が日本人使節をメキシコに送った際にはこのアカプルコの港に到着し、今でもアカプルコ仙台市姉妹都市となっている。実は日本とも繋がりの深い街なのだ。

2023年10月26日、アカプルコを時速270キロのハリケーンが襲い、高級ホテルや高級マンションが破壊されていく様子にメキシコ中が震撼した。
僕はUNAM (メキシコ国立自治大学)の救援物資収集所で2週間ほどボランティアをしていたのだが、現地の様子が見たくなり実際にアカプルコに行くことにした。

アカプルコに送る物資の収集所(メキシコ国立自治大学)

アカプルコに着いて知り合いの車で街を一回りしたが、街が想像以上に破壊されているのを目の当たりにして衝撃を受けた。災害から1ヶ月半が経ち、「アカプルコは復旧に向けて歩み始めている。観光も再開している」という報道が増えてきたのでてっきりそう思っていたのだが、全然そのようには見えなかった。街の人たちの話では、街が元通りに復旧するには3〜5年はかかるだろうとのことだった。

破壊されたレストランやバー
壁がなくなったショッピングモール
ガラスが吹き飛ばされた高級マンション
ロゴが飛ばされてしまったマック
ガラスがなくなったホンダの販売店
同じくガラスが飛ばされ板に覆われた日産の販売店。「I」の文字がなくなっている。

アカプルコはとにかく蒸し暑い。半袖・短パンで歩いていても汗が流れ落ちてくる。だが、災害が起こってから1ヶ月間はほとんどの家に電気が来ず、クーラーもインターネットもない生活を余儀なくされたという。

災害の当日はどんな様子だったのか。ある女性の話では、夜中に急にハリケーンの勢いが強くなり、玄関から入ってくる雨を防ぐのに必死だったという。だが猛烈な風の勢いに命の危険を感じ、トイレに数時間こもって何とかやりすごしたそうだ。朝になって外に出てみると、木々や電柱、ゴミで道が埋め尽くされていたという。

日本では時速195キロ以上の台風が「猛烈な台風」と呼ばれているそうだが、今回アカプルコを襲った時速270キロというのはどれほど強烈だったのだろうか…。
アカプルコはこれまで何度も「ハリケーンが来るかもしれない」と警告されていたが実際に来たためしがなかったそうで、災害への備えができていなかったという。

街の中心部の広場。行政によって仮設の相談所が設けられ、多くの人が生活の再建に向けて給付金などの相談に訪れていた。
道には大量のゴミ
看板が倒れ廃墟のようになったメキシコのコンビニ「OXXO」
根こそぎ倒された木々

一方で、今回アカプルコの人たちに話を聞いて驚いたのが、皆めちゃくちゃ明るいということだ。誰も将来を悲観せず、希望を持って目の前の再建に取り組んでいる。そしてレストランやホテルの一部は、建物が壊れたままで営業を再開していて、アカプルコの人々のたくましさを感じた。

建物は壊れたままだが営業を再開したホテル
ビーチにも少しずつ観光客が戻り始めている
アカプルコの海に沈む夕日は美しい

次の記事では、実際に行ったボランティアの活動と、ハリケーンを無傷で耐え抜いた「支倉常長像」について書いてみたい。


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