四元康佑講演会 現代詩事情 メモ 日本詩人クラブ

四元 康祐(よつもと やすひろ)講演会
現代詩最新事情

1959年生まれ日本の詩人、作家アメリカ、ドイツで日本語の詩を発表していた。2020年から日本に拠点を移している。大阪生まれ、上智大学、1991年第1詩集『笑うバグ』1994年ドイツ移住、2022年4月から日本経済新聞にコラム「詩探しの旅」を連載。

IWPのレポート

アイオワに詩のレジデンシーがある

中上健次
田村隆一
白石かずこ
吉増剛造らがレジデンスをしている

エジプトやウクライナ、フィジー中国韓国、リコトミ(芥川賞 台湾の作家)
何もしなくていい 3ヶ月暮らすことが条件
そこで出会った海外の詩人についてレポートする


❶ヤシカ・グラハム ジャマイカ

詩「サステナンス」日本語だとめぐみ

ご飯ちゃんと食べてる/うちにいる方がいい/母は心配している
芋も豆も金が必要/うちにいる方がいい/街には祖父の畑はない/母はレモングラス買ってくる/心を温めるために/街ではオクラを積むことができない/タネを持ってくる
大地の人である/パンはどこでも焼くことができる/母は原野からやってきて/おじさんはサヤエンドウを持ってきて/ライムを一つだけしかもっていかない/
街は食べ物はおいしくない/かぼちゃのは木の下で/山芋を掘る/パッションフルーツからジュースをつくる/飲みなさい/食べなさい

◉ジャマイカの女性詩人は英語で全て書く 
◉元モデル ラジオのパーソナリティ
◉ジャマイカは英国の植民地
◉文化を根こそぎ奪われ詩を英語で書く
◉ 「土地の他言葉で書こうかな」

❷スーニネス ナタニエル ナイジェリア

◉ギャングスターのようだがクリスチャン

詩「カメルーンウーマン」
カメルーンの母は少年の陰毛と顎髭で藤のカゴを編む/
ビールと穀物/頭蓋骨を子宮に/歌う/悪しきことが希望
/渇望と強欲は織り手である/正直ものの唇は/誰よりも甘美な嘘を語る/彼女は美味しそうな歌を繰り返す/愚か者は咀嚼しないが/愛はココヤム/我慢は油/ご馳走を楽しむなら乳歯を生やせばいい

◉アフリカ全体のアイデンティティを探す
◉いつか部族の神話をまとめる
◉ポストコロニアルという言葉が生々しい

❸アイゲルム・タジン カザフスタン(中央アジア)
ウクライナ ジョージアに近い


◉中央アジアは詩の空白地帯 
◉カザフスタンの言葉ではなくロシア語で書く 
◉80年代の生まれだからロシア語で教育を受けている
◉お父さんとはカザフ語を話す。お母さんはロシア語
◉神童、16歳で大学 18歳で卒業
◉詩のコンテストに参加 ソ連的な枠で
◉カザフスタンに詩の出版社は一社もない
◉詩をロシアで発表する
◉欧米はロシア語への反感があるから大変
◉例えばチャイコフスキーは演奏しない!とか

詩 タイトルなし

窓に花瓶/花瓶には花/まぶたのやわらかさ/靴下/お腹の中の魚/
空気なし/モジモジ

日常が好き/路上の怒号/壊れた街灯/絶望的報道にも/子宮に微笑みかけるように/
呟く/生まれる子は女の子でもいいよと
→微笑んでいる対象は怒鳴り声

◉ペトロイスカのカザフスタンはひどかった。街に死体がゴロゴロ 
◉個人的な社会性であり、政治の所作はない

鏡の深みに何かいる/見ない方がいい/魚は三日月/腹を上にして泳ぐ
天国で/波紋の広がり/遠くへ遠くへ/よそよそしい/話している/夢を見てはならない

うわのそらで/何も気づかず/ベット/ゆりかご/ねむる人/硬い絨毯
その人は誰?/葬列/土は冷たい/誰がそばで眠ってやるのか

◉エミリーディケンズとホイットマンの対比 極私的 個人的なものと政治的なものの両立

◉IWPについて話す

◉作家を養成する 巨大な装置としてある
◉中心は MFA マスターオブファインアート
◉2年間ひたすら書く。書いては合評しあう 
◉小説/詩/翻訳の三部門 200名の学生
◉アメリカの学費は高い 1年間1000万円
2年2000万円
◉コロンビア大学もMFAがある
◉アイオワ大学はアメリカで初めて創作を教える大学
全アメリカから集まり競争率はハーバードより高い

◉日本人もいた 早稲田を卒業してきていた
◉アイオワハウスは大学のホテル 南北に長細い

❹リコトミ


◉IWPのことを「スバル」に連載で書いている
◉李琴美 台湾生まれのレズビアン。

⚫️香港事情について

◉香港四年ぶり、逃亡犯条例反対デモのの時から様変わり、町中に
革命の落書きがあったが一つ残らず消され、
◉2020年夏国家安全法 一国二制度はなくなる 詩も書けなくなる
◉本土からどんどん人が入ってくる 香港らしさらは失われた
◉高校の図書館の本棚が国家安全法ガイドブック
◉大学の先生と話すと本土から移住した学生が増え 

◉愛国精神信じ密告制度もある。そういう中で 連詩をつくった 

即興詩「春」

人々は/運命と出会い/マッシュポテト/川のように/富士の麓/雪/時の推移を耐える/マッコウクジラ/落ちた花嫁のベール/一日は始まる/つばめ/ひさし/凍りつき
隕石となり/宙に吊るされた/週末/世界の終わり/ガタガタしない/タバコの灰/
落とし揉み消した/黒い雨/インク/真っ黒/銅/塩/燃やす/気づく/インクで描けばいい/描き続ける/読まれぬまま/宙吊りの/詩の挽歌を

おもちゃのアルファペットを入れたペットボトル/降っている/文字の音だよ/娘が言う
文字で組み立てられないのなら/娘の真似をしよう/リビングは大騒ぎ母音と子音の雄叫びを響かせよう


❺ミャンマー詩人

ココテ
ジャッキーワン
ミャンマーと、香港は似ている
◉私的な連帯
◉クーデターの翌日から英訳し世界の詩人に送った

「新芽を積んでも春の到来を妨げられない」
◉ミャンマー証言詩集 英語版
◉日本語版をつくった この詩集に序文を書いた
◉現代詩手帖を参考に「ミャンマー詩人は抵抗する 特集」11月号

【総括】
日本語で日本の社会で生きていると居心地がいいが、どうしても
趣味的なところに詩がいく。
世界の詩に目を向ければ生々しい現実と衝突しながら書いているものある。

日本はそもそも叙事的なものが弱い海外は全体文学的なものが尊重される。
エズラパウンドのキャントーズ/ダンテの神曲/ウィリアム・カーロス ウィリアムズのパターソン

例えば辻井喬や飯島耕一は海外に弱い/叙情的な詩人/ダンテが神曲で出会う 薄情 
キーツの影響/まさにネガティブケイパビリティ
心の深いところにおりていき/ディキンソンや芭蕉のような
個人的な断片/
一方ドンキホーテの野望のようなゲーテのファストやダンテの神曲
のような大作を書くか/深層に行くべきか叙情であるべきか悩む

印象的な細見さんの挨拶

「大学のメーリングリストを見ていて 呆れる ウクライナに注目されればガザが嫉妬する イスラエルの報復でガザが注目されれば水俣が嫉妬する くだらない 本質ではない
石牟田道子の一言を思い出せ 詩的感受性こそ重要 確かに個人的なことと 叙事的なことと悩むのはわかるが 個人的なところにどんなに入っていっても 底の底で世界につながる そこで一点突破を考える それが詩ではないか」

石牟礼道子「銭は一銭もいらん。そのかわり、会社のえらか衆の、上から順々に、水銀母液ば飲んでもらおう。、、、、上から順々に四二人死んでもらう。奥さんに飲んでもらう。胎児性の生まれるように。そのあと順々に六九人、水俣病になってもらう。あと百人ぐらい潜在患者になってもらう。それでよか」

石牟礼 道子(いしむれ みちこ、1927年3月11日 - )は、日本の作家。熊本県天草郡河浦町(現・天草市)出身。水俣実務学校卒業後、代用教員、主婦を経て1958年谷川雁の「サークル村」に参加、詩歌を中心に文学活動を開始した。73年、「アジアのノーベル賞」と言われるフィリピンのマグサイサイ賞を受賞。93年、小説「十六夜(いざよい)橋」で紫式部文学賞。2003年、詩集「はにかみの国」で芸術選奨文部科学大臣賞。

「私にとって田中正造は“思想上の父”です。」「100年の歳月を超えて、我々は正造の魂を受け継ぎ、生きていかなければならないのです。冒頭に掲げたのは昭和43年から始まった水俣病患者互助会と新日本窒素(チッソ)水俣工場との補償交渉でチッソからゼロ回答があったときの、患者たちの吐いた言葉である。石牟道子「苦海浄土 わが水俣病」にある。石牟礼道子はそれは「もはやそれは、死霊あるいは生霊たちの言葉というべきである」と記している。因みに鎮魂の文学「苦海浄土」は第1回大宅壮一ノンフィクション賞を与えられたが、石牟礼道子は受賞を辞退している。

何もなかった状況に戻って、失われた日常を取り戻すことが、患者や家族たちの本当の願いだ。それがかなわないから補償という次善の策になった。それでも償おうとしないことに当事者も、そして石牟礼も怒りを持つのだ。石牟礼の生まれた3月11日は、奇しくも東日本大震災の起こった日である。原発の災禍に見舞われた人たちの姿がだぶって見える。石牟礼道子の仕事は尊い。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?