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Die with Leica 〜「いつかはライカ」が決定的にダメな理由〜


こんなツイートエックセズをした。

最近のライカの値上がりがヤバい、いや、海外の方からのリプを見ると値上がりはどうやら日本だけらしい。

円安。

いつかはライカ、そんな言葉を胸に秘めた人たちもいるだろう。
しかし、それは蜃気楼のように貯金をして近づいたはずが遠ざかる。

政治のせい?
時代のせい?
それとも?

誰かのせいにするのは簡単だ。

普通に100万円を借りようとすると利子が5%つく。
無金利60回払いはこの蜃気楼という幻影を撃ち破る一つの手段だ。
一年で10%以上値上がりしてしまうのであれば、100万円を米国株ETFにぶっ込んだのとほぼ変わらないかむしろよいリターンである。

だがポイントはそこではない。
ライカを使って撮ることの体験価値は年齢を重ねるごとに毀損するのだ。
高い買い物だ。最大限の価値を引き出せるタイミングで買うのが正しいお金の使い方だ、と言うことに誰も異論はないだろう。

さて、ここに一冊の本がある。
「DIE WITH ZERO」

「DIE WITH ZERO」はBill Perkinsによる本で、2020年に出版されました。この本の主要なテーマは、人生を最大限に生き、お金や経験を蓄積するのではなく、それらを使って最高の瞬間や経験を享受することに焦点を当てることです。

以下は、この本の主要なポイントのいくつかです:
時間は最も貴重な資源:お金は再び稼げますが、過ぎ去った時間は戻ってきません。だからこそ、人生の適切な時期に最良の経験をすることが重要です。
人生のバランス:若い時に過度に節約すると、その経験や旅行、趣味などを楽しむ最適な時期を逃す恐れがあります。
資産の消費:お金を使って人生の経験を楽しむことを恐れないでください。適切な計画とバランスがあれば、退職後も十分な資金を持っていることができます。
人生の価値:お金だけでなく、友人や家族との時間、新しい経験、教育など、人生の他の側面にも価値を見いだすことが重要です。
この本は、お金と時間の関係を再評価し、人生を最大限に生きることの重要性を強調しています。

「Die with Zero」ChatGPTの要約

人は老後を心配しながら、貯めることに執心するが多くの人が資産を使い切らずに死んでしまうことを指摘し、その使い道、使うタイミング、使うことによる価値の再考を迫る名著である。

死ぬタイミングでは貯金がゼロであることを理想(現実的には難しいが)としつつも、ではそれを目指してどのように使っていくべきか、を指摘する。

自分には関係ない、と思うかもしれないが実は日本国内の相続した財産額の平均は3,273万円、中央値は1,600万円である。虎の子の1000万を残したとしてもライカ一式買って余るほどの財産を残して人は死ぬのだ。

ちなみにこの著に寄れば、
・若い時のほうが同じ金額からでもより多くの喜び(価値)が引き出せる
・よい思い出や体験の記憶が後からでも継続的・長期的に喜び(価値)を提供してくれる
・この喜びがより多く引き出せるうちにより多くのお金を使うべきである

ということだが、シンプルに多くの人に共感してもらえる内容ではないだろうか。

特に30代を越え、「焼肉でもカルビがあまり食えなくなってきた」人とっては納得する部分も多いと思う。そうなのだ、あれだけ欲したものでも気がつけば心ではなく体が受け付けなくなる。そしていずれ心もあのときの情熱から冷めていく・・・こんな悲しいことがあるだろうか。でも現実なのだ。


個人的にはこの著者が「お金を使った際に引き出せる瞬間的な価値とそれによる記憶の複利的な価値」という2つに着目している点を特に強調したい。
前者は肉体的な能力・キャパシティ・感受性が最大の時に効果を発揮し、後者は残された時間が長いほど効果が大きい。

では、この方程式を写真撮影に代入するとどうなるか?

答えは、

いつかはライカ・・・




じゃねぇ、買うなら今すぐライカを買えッ!


である。




いつかは・・・などと寝言を言っているうちに時間は経過し、ライカから引き出せる価値は失われていく。140万円もするカメラ、レンズも含めれば200万…なのに、撮れるのは写真だけ。大変シンプルだ。

購入が遅れれば遅れるほど、値段が上がっていくだけではない。
体力は落ち、撮るために歩ける距離は短くなる。
老眼になればレンジファインダーで撮ることも大変になる一方だ。
拡大機能のあるEVFのほうがどんどん撮りやすくなるし、テクノロジーの進歩も大きい。
反射速度も落ちていけば、決定的瞬間を逃してしまうことも増えるだろう。
肖像権の変遷で撮りづらくなるシーンも、きっとある。
興味と熱量も多くの人の場合、若いうちのほうが持ち得るだろう。
ライカを通じた繋がりも若いころの方が間違いなく作りやすい。
もしかするとカメラの存在そのものが過去のものとなってしまうかもしれない。

加えて写真は思い出の価値を維持するのにも大いに役に立つ。思い出を残すのに、ほどよく余白のある、写真という手段以上のものがあるだろうか。
2つ目の価値である「記憶の複利的な価値」を最大化してくれるのが写真である。
どんなに良い思い出でも人は忘れてしまう。それを思い出す鍵が写真だ。
つまり、このDie with Zeroの理論と非常に相性が良い。

最近若くしてライカを購入した方々と絡む機会があったがみな幸せそうである。20代であれだけカメラにぶっ込める胆力は純粋に尊敬に値するし、彼ら以上に今自分が同じ機材から価値を引き出すことはできないと言うこともより理解できる。振り返ると20代の自分は10万円のレンズキットを買うのが関の山だった。給与も大きくは違わないと勝手に予測するが、彼らと私のスタートを分けたものは決断だけだ。
以前よりもライカユーザーが増えたので「なんかライカの価値が下がってきた…」とかぼやくエックセズも見たが、下がったのはライカの価値ではなく、ボヤいてるだけのあなたの体験価値だ。

諸君、この記事に辿り着いたというのであれば、躊躇う必要があるのだろうか?ライカの価格改定は10月10日、週末に迫っている。

Die with Leica or Just Die.

選ぶのは他の誰でもないあなただ。

無論これはライカだけに限らない、あらゆるカメラや機材、またそれにまつわる体験に今お金を使うか、どうか。

より多くの体験と価値をあなたが引き出せることを願っている。天国に行くにしろ、地獄に堕ちるにしろ、お金はあの世には持ってはいけないのだから。

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