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【Clubhouseアプリグロース徹底解剖】 Part3:Clubhouseのスピーカー・オーディエンスの間の強いエンゲージメント構築設計

■ はじめに
こんにちは!Repro Growth Marketerの稲田宙人(@HirotoInada)です!

前回・前々回から引き続き全3回に渡って、急速なユーザー数の拡大をしている話題の音声SNS「Clubhouse」に関して掘り下げます。

最終回にあたる今回は、「Clubhouse」と旧来のメディアの、スピーカー・オーディエンスの関係構造と、それによるエンゲージメント強度に関して比較考察していきます。
また、最後に、今後「Clubhouse」上でどのようなコンテンツが展開されていくかを考えてみます。

尚、本noteの元ネタは僕と伊藤直樹さん(@n_11o)でやっているポッドキャスト番組「Mobile Update // モバイルアップデート」で収録した第58回「Clubhouseアプリグロース徹底解剖 Part3:Clubhouseのスピーカー・オーディエンスの間の強いエンゲージメント構築設計」なので、そちらも併せてお聴き頂くと理解が深まると思いますので是非!

ハッシュタグ 「#モバアプ」でご意見ご感想もお待ちしてます!

1. Clubhouseと他コンテンツのスピーカー/オーディエンスの関係構造

Clubhouseは音声SNSである為、他の音声メディアと同様に発信者・受信者、すなわちスピーカーとオーディエンスが存在します。
まずは、本章では、Clubhouseと別音声メディアの間の、スピーカー/オーディエンスの関係の構造を比較してみます。

■ スピーカー/オーディエンスの関係構造
①:レコーディング動画・ポッドキャスト
→Youtube動画やポッドキャスト配信が該当
②:生配信
→ニコ生・YoutubeLiveなどが該当
③:Clubhouse

上記3メディアの、スピーカー/オーディエンスの関係構造を、コミュニケーションの主導権・同期有無で整理すると以下のようになります。

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まず、①レコーディング動画・ポッドキャストに関しては、完成した作品をもってして初めて世の中にコンテンツが発信されます。それ故に、自ずとコミュニケーションは相互に一方通行の非同期コミュニケーションになります。

次に、②生配信ですが、配信に対するオーディエンスのコメントをリアルタイムでスピーカーが拾うなどの一種双方向の同期コミュニケーションが発生し得ます。しかし、流れてくるコメントの内容をスピーカーが基本的には制御できない点が特徴的です。

最後に、③Clubhouseですが、②生配信と同じく同期コミュニケーションでありながらも、スピーカーが受信するコンテンツを選択できる、スピーカー優位の一種エクスクルーシブな環境である点が特徴です。

どういうことか?これは以下のUIの特徴からです。

①:発言者はスピーカーが決定できる
→受信するコンテンツをスピーカーが選択できる構造

②:コメント機能・リアクション機能は一切なし
③:オーディエンスは「Leave Quietly」で静かに退出可能
→オーディエンスの存在は見えるが、反応は気にせずにスピーカーは好き勝手にしゃべれる

このように、Clubhouseは従来の音声・動画メディアと比較すると、スピーカー側にコンテンツの強い主導権が渡されており、それ故に発信される有名人の方も多いのではないかと思います。

2. オフライン体験をアプリUI上で表現する

Clubhouseのアプリ体験の根幹にある「ルーム参加」ですが、ここにもスピーカー/オーディエンスの関係構造を可視化するUIの特徴が存在します。

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ルーム画面は上記のように3つの段に分けることができます。

①:スピーカー
→画面最上部。スピーカー・モデレーターのみが表示
②:オーディエンス最前列
→画面中部。スピーカー・モデレーターがフォローしている人が表示。
③:オーディエンス後列
→画面下部。一般オーディエンスが表示。

この構造ってどこかで見たことありませんか?
そう、ライブ会場・劇場の席の構造です。

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言うならば、画面最上部のスピーカー・モデレーターはステージ上にあたり、彼らはステージ下の聴衆を見下ろす構図になっているんですね。
海外だと、オーディエンスをスピーカーに変更する際には、「Welcome to the stage!」と言うこともあるらしく、この構図の捉え方は強ち間違っていないなんじゃないかと思います。
そして、聴衆の最前列にはVIP席よろしく、スピーカー・モデレーターの「お知り合い」がまとまって表示され、それ以外のオーディエンスはルームに入った順番でVIP席の後ろに並んでいく。

前回・前々回とClubhouseにハマってしまう理由を考察してきましたが、このルームのUIにもユーザーの自尊心・承認欲求をくすぐるような設計がされているのが特徴的と言えるでしょう。

Twitterで言い得て妙だと思ったのが以下のツイートです。

Clubhouseでは、相互フォローのユーザーがオンラインでいるかどうか分かるだけでなく、どのルームにいるかまでもが分かるようになっています。
それ故に、友人が入っているルームに参加したり、そのルーム終了後にルームの感想を言い合うプライベートルームを作るなどのコミュニケーションが可能になります。

その場にいないと聞けないコンテンツ・同時刻に複数のコンテンツは受信できない点は、まさに野外ライブフェスの体験に似通っており、オフラインのエンタメ体験をオンラインに持ってきた点が非常に評価されるべき点だと感じます。

ただ、オンラインで話すチャットルームでしょ?と思っている人がいれば、それはClubhouseの体験設計の表面しか捉えられていないと思います。

3. スピーカー/オーディエンスのエンゲージメント強度

1章で各メディアと比較したスピーカー/オーディエンスの関係構造の違いを取り上げましたが、本章では各メディアのスピーカー/オーディエンスの繋がり、すなわちエンゲージメントの強度に関して考察していきます。

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上記は、①レコーディング動画・ポッドキャスト・②生配信・③Clubhouseの3つのメディアの発信コンテンツを、縦軸にソーシャル・クローズド、横軸に同期コミュニケーションの有無で整理したものです。

上記の整理を元に、エンゲージメント強度を順位付すると以下のようになると思います。

1位:③-1 Clubhouse プライベートルーム
2位:③-2 Clubhouse ソーシャル・パブリックルーム
3位:② 生配信
4位:① レコーディング動画・ポッドキャスト

上図・上記順位からも分かる通り、Clubhuoseは同期コミュニケーションのソーシャル・クローズドの両面を間口を広く取る形で押さえており、個人での利用から公の場までユースケースが広い点が特徴です。

では、何故Clubhouseは他のSNS・メディアと比較してエンゲージメントが高くなると予想できるのでしょうか?

■ Clubhouseのエンゲージメントの強さ

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Source:The Stickiest, Most Addictive, Most Engaging, and Fastest-Growing Social Apps—and How to Measure Them

上の図は、縦軸にセッションあたりの利用時間・横軸に1日のセッション回数をとり、各サービスをプロットしたものです。
例えば、GENSHINのようなオープンワールドアドベンチャーの場合はセッション回数は少ないものの、1回あたりのプレイ時間は長くなる為、概して左上の象限に位置します。

SNSの場合は右上に位置するのが理想形ですが、Clubhouseは間違いなく右上の象限に位置すると考えています。

まず、セッションあたりの利用時間に関しては、ルーム終了時刻が未決定な点・音声なのでながら聞きができる点の2点から、利用時間が非常に長くなることが予想されます。

次に、1日のセッション回数に関しては、外的トリガーとして機能しているプッシュ通知・内的トリガーとして機能しているFOMOにより、自然と高くなることが予想されます。

既に、テキストSNSのTwitter・音声チャットSNSのDiscordが右上の象限に位置することからも、Clubhouseが彼らよりも更に右上に位置するのはかなり見込みがあるのではないかと思います。

■ Clubhouseは他SNS・エンタメと共存するのか?
旧来のSNSと比較しても、エンゲージメントが高くなる設計が秀逸なClubhouseですが、今後他のSNSやエンタメサービスと共存をしていくのでしょうか?

まず、Twitter・FacebookのようなSNSに関しては共存が可能でしょう。
前述の通り、Clubhouseは音声メディアである為、ながら聞きが可能であり、実際Clubhouse運営自身も、ながら利用を推奨しています。

Enjoy multitasking.
Don’t worry about splitting your attention between Clubhouse and work, hobbies, chores, or an evening walk. People are often doing other things while they Clubhouse!

Source:Clubhouse Community Guidelines

一方のエンタメサービスにとってClubhouseは脅威となり得ます。VODやポッドキャストのようにいつでも見られる・聴けるコンテンツとは違い、Clubhouseはアーカイブが残らずそのタイミングでしか聞けません。
FOMOからとりあえずアプリを開いておく・開く頻度が多くなるのは予想でき、他のエンタメサービスにとっては可処分時間を奪いあう競合関係になるでしょう。

4. 今後のClubhouseの利用シーン・コンテンツ

最後に、Clubhouseが今後どのように利用され、どのようなコンテンツが発信されていくかを考えてみます。

①:レギュラー番組化
現状は、スタートアップ界隈を中心にゲリラ的に番組が乱立している状況ですが、今後はスピーカーとオーディエンスの固定化・すなわちレギュラー番組化が進むのではないでしょうか?
D2Cでも毎週曜日固定のライブ配信もあるので、D2Cに限らないレギュラー番組利用は今後進むと思います。
実際、既にOffTopicさんは毎週月曜に「Cereal Talk」と呼ばれるレギュラー番組を開始しており、我々Reproも毎週月曜に「アプリマーケティングお悩み相談室」を開設しました。

②:エンタメ有名人の交流の場
アイドル・芸人・有名人のファンとのコミュニケーションの場として機能することも考えられるでしょう。
モノマネ芸人の方は非常に使いやすいプラットフォームだと思います。(個人的にはアイデンティティ田島さんに言ってもらいたいことをリクエストとかあると面白いなと思いますw)

③:採用メディア
既にLayerXさんがやられていましたが、会社説明会・採用メディアとして使えるのではないかと思います。
音声の方が会社や人の雰囲気は伝わりやすく、且つZoomなどよりも申し込みハードルも低い為、試してみる価値はあるのではないかと思います。

④:ユーザーコミュニティ
既にFabricTokyoさんやAnkerJapanさんがやられていましたが、D2C領域は特にClubhouseをユーザー交流の場、ユーザーコミュニティとして活用するのはいいなと思います。
対面で集まってもらうよりも参加ハードルが低く、且つ音声で熱量ももってコミュニケーションも取れるので。
これはD2Cに限らず、SaaSなど別の業界でもできそうなので、僕もやってみたいです。

⑤:グループインタビュー
④ユーザーコミュニティと近いですが、消費者へのリサーチ・インタビューの場として活用するのはありだと思います。
特に、ユーザー属性にあまり依存しない商材の場合は、ルームのトピックに記載をすることで、そこそこ人が集まるのではないかと

⑥:他社事例を聞く場
TwitterやFacebookでいきなり知らない人にDMで質問しても返信はなかなか貰えないかと思いますが、Clubhouseなら1対多のオーディエンス構造であることもあり、話す側もハードルが下がるのではないかと思います。
一方で、会社として運用ルールが定められていないと、情報漏洩もあるのでここは慎重になる必要があります。
特に、Clubhouseではアーカイブが残らない為、情報漏洩が発覚した場合に、スピーカーの責任追及ができない点も注意が必要です。


■ 最後に
Clubhouseアプリグロース徹底解剖の最終回である第3回は、スピーカー・オーディエンスの間の強いエンゲージメント構築設計を考察してきました。
また、他サービスと比較したユーザー定着度と、今後の利用シーンの多様化に関しても掘り下げてきました。

今回まで全3回に渡ってClubhouseのグロース理由を掘り下げてきましたが、久しぶりにエゲつないサービスが現れ、新しい文化が作られつつあるのを目の当たりにしています。

長い目で見てこのサービスが残るのか、それは正直僕も分からない。
しかし、今までも多くのサービスがすぐに消えると言われて、今も人気のまま残ってます。

Clubhouseが現状のサービス形態を変えて生き抜いてく可能性もあり、今後も注視していきたいです。答え合わせは、まずは3ヶ月後・次に1年後に。

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また、今回のnoteの内容は、Repro伊藤直樹さん(@n_11o)と2人でやっているポッドキャスト「Mobile Update」でも解説しているのでそちらも併せてご視聴ください!
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