Neuralinkの発表をどう評価すべきか? [修正予定]

2022年12月に Neuralinkから発表があったのは多くの人たちもご存知だろう。

この発表の目的はリクルーティングと最初に述べられており、素直に捉えれば、この発表の目的がリクルーティングに適したメッセージを送っていたのかを評価する必要があるだろう。

この文章では、この観点に立って、2022年12月14日行われるイベントのためのメモとして残しておく。

本発表とのちに出てきた報道に基づいて以下の三つの論点を中心に各論を展開したいと思っている。

  1. 目的とその目的にあった発表ができているか?

  2. どのようなプロダクト開発をしているのか?

  3. なぜ倫理的課題がでてくるのか?

1. 目的とその目的にあった発表ができているか?

文頭でも述べたように、Neuralinkの発表はリクルーティングを目的としておりその目的にあった発表ができているのかの観点で評価すべきだと筆者は考えています。

その観点で、筆者は二つの点で評価を考えるべきだと思っている。一つは、プロジェクトが構造化されているか、二つ目は専門性をもつ人材が貢献したいと思わせるかという点である。

今回の発表では、各エンジニアチームが登場し、それぞれの進展について述べることとなった。つまり、各チームの役割が明確に分割されており、専門性が発揮しやすい構造になっていると想像できる。

筆者はエンジニアではないが、エンジニアとして貢献できる領域が明確化され、ターゲットとなるエンジニアとチームのマッチングも上がるのではないだろうか?

その意味でリクルーティングターゲットによいシグナリングになっていると筆者は考えている。

(イーロンの滑舌は悪いが)発表の目的と発表の内容が噛み合い、よい発表であったと評価できると筆者は考えている。

2. どのようなプロダクト開発をしているのか?

今回の発表は、一年半ぶりの発表と言われているが前回や前々回と比べて多くの改善点が見られた。

複数回のプロダクト開発のルーティンを回しつつ、基本的にはインプットとアウトプットの構造は変化しておらず同じ目的のためにプロダクト開発をしていると推定できる。

これをプロダクト開発の枠組みで考えると、基本的に短い期間でサイクルを回してプロダクト開発をするアジャイル的な開発になっていると言えるのではないだろうか。また一方で、基本的な要件が最初に決まっているため、
ウォーターフォール型とのハイブリット的にみえる。

よく言われているアジャイル開発の利点として、チームを分割してそれぞれ構築し統合テストを高速に行えるためモジュールごとの効率化により効率的な開発ができる。

このような開発ができることの一因として、イーロン自身の個人資産を含めて多額の一元的資金ある。具体的な年限が決められず開発ができる環境によって逆に失敗を許容した複数回の開発ルーティンを回す効率的な開発ができるように見える。

例えば、普通の科学予算だと、複数の所属の異なる研究室に対して資金が投下される。このような空間的にも離れている異なる研究室(チーム)間で開発を行う必要がある場合アジャイル開発ができるかは怪しい。

3. なぜ倫理的課題がでてくるのか?

Neuralinkの動物実験の環境に対する疑念の目は常にある。

Neuralinkはそれに対しても事前に対応策を持って応答している(以下動画)。

現状として本当に倫理的課題が出ているのかは現在確定ではないという前提で、動物実験行うNeuralinkが抱える難しさについて述べておく。

Neuralinkは脳に埋め込むチップを開発しているが、2.で述べたように製造業的なアジャイル開発を採用していると筆者は考えている。

仮説として、アジャイル開発で効率的に回せる分、一定期間内で利用した被検体が再利用はできず新たな被検体が必要になってくるではないかという憶測も成り立つ。

また、イーロンはこの開発のサイクルを加速させることを求めていると想像できる。

しかし、動物実験は、動物ケア自体がプロジェクトの律速になる場合が多く、短縮することはできない。

この点に関するチームメンバーとの認識の齟齬がこのような疑念を生んでいる可能性はある。

つまりNeurailnkの開発はアジャイル的ではあるが、プロジェクトの律速は動物のケアにあると考えられる。

Neuralinkが実際に問題を抱えているかとは独立に、この観点はこの分野での開発を考える上で重要な観点になると筆者は考えている。

他. 科学者と開発者の思考の違い

Neuralinkの開発をみて科学者からしばしばある応答として、基本的には新しいことはしていないという点である。

筆者は、その点に同意しつつ、科学者と開発者の思考の違いについてここで述べておきたい。

そもそも科学における研究は概念検証である場合が多く、これまで行われてきたことを再現性を持ってプロダクト開発を行うためには異なる難しさがある。

(筆者も科学者である理解しているわけではないという前提で)、開発者という観点では、以下の3点が重要になると筆者は考えている。
1. 開発チームのメンバーの入れ替えに強いかどうか
2. 再現性のある開発ができるか
3. プロダクトの逐次的な改善が高速に行うことができるか

プロダクト開発においては、しばしばメンバーが更なるキャリアップを目指して入れ替えが起こる場合がある。そのため、プロダクト開発においては、開発チームのメンバーが入れ替わっても再現性がある開発ができるかが重要になる。

これらの点で、Neuralinkは必要なサイクルを高速に何度もプロダクト開発できる環境を整えており、Neurotechとしてのプロダクト開発を確立しつつあると評価して良いように思う。

遅かれ早かれ、多くの問題を解決するだろうと予想している。

一方で、これらの技術が社会に受け入れられるかは別の問題である。

どれだけの需要があるのかは、今後実際に問われていくだろうと筆者は考えている。


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