【毎週ショートショートnote】会員制の粉雪
「ゆき先生、お母さん、まだかな」
預かり保育中のみえちゃんが聞いてきた。
「今日は少し遅くなるかもって言ってたよ」
「……あたし、ちょっと頭が痛い」
「大変!お熱測ろうね」
38度!
お薬は飲ませられないし……。
急いでみえちゃんのお母さんに電話したが応答なし。
留守電を残して切る。
氷枕を作ろうと冷凍庫を開けたが、氷がなかった。
「何だか身体がポカポカするー」
「そうだよね、辛いよね、ちょっと待ってね」
お布団を敷いて寝かせる。
タオルを冷水で洗ってしぼり、みえちゃんの額に載せた。
「お母さん、早く来てくれるといいね」
お迎えまではまだ時間がある。
みえちゃんが熱でうなされ始めた。
……使うしかない!
ゆきが指先をクルクル回すと、みえちゃんの顔の上で粉雪が舞った!
「わあ、冷たくて気持ちいい。ゆき先生って魔法使いなの?」
「違うよ。先生、粉雪の会員だから使い放題なの。みんなには内緒ね」
「カイインって凄いね!」
みえちゃんは頭痛を忘れて笑顔になった。
(410文字)
※こちらの企画に参加させていただきました
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