二郎丸 大

ショートショートと短編小説を書いています。「また読みたい」と思ってもらえる話を書きたい…

二郎丸 大

ショートショートと短編小説を書いています。「また読みたい」と思ってもらえる話を書きたいです。 作品の投稿頻度:週2、3回(毎週ショートショートnote/シロクマ文芸部/140字小説)

マガジン

  • 色とりどりのメシの種

    不思議な種を食べて依頼人の悩みを解決する少年の物語です。創作大賞2024の参加作品です。

  • シロクマ文芸部

    小牧幸助さんのシロクマ文芸部に参加させていただいた作品をまとめています。

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    たらはかにさんの企画に参加させていただいた作品をまとめています。

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本を書く幸せ #シロクマ文芸部

「本を書くのって結構大変なんですね」 編集者の男がおどけて言った。 「おいおい、今さら何を言っているんだ」 元作家の男が笑う。 「いやあ、先生は毎年四、五作ポンポン書かれていた印象があって。いま自分が書く立場になってみると改めて大変だなぁと。私が書くのはエッセイですけどね」 「君にはポンポン書いているように見えていたかもしれないけど、ポンポンは書いてないんだ、ポンポンは」 「そりゃそうでしょうけどね。憧れましたよ。よく毎年、名作ばかり書けるなと。担当編集としては有り難

    • 色とりどりのメシの種【第四話】#創作大賞2024

      白い靴を履いて、サトシがヨチヨチ歩きをできるようになった日。嬉しくて私はあなたに電話した。 あなたはいつも忙しくて、私からかける電話には出てくれないけど。 ……やっぱり出てくれない。 諦めて電話を切った。 ヨチヨチ歩きをするサトシの笑顔。 早くお父さんにも見てもらいたいよね。 数時間後、思いがけずあなたは帰ってきてくれた。 でも、帰ってきてくれない方がよかったのかもしれない。そしてあなたが考え直してくれていれば、もしかしたら、まだ私達は……。 ◇ 「ごめん、兄ちゃん

      • 二億斉藤 #毎週ショートショートnote

        私の名前は斉藤権蔵、六十歳。 斉藤という苗字が多いことはよく知られているが、年に一度、評価会が行われることを知る人は少ないだろう。 斉藤姓の幹部が集まり、被評価者が何斉藤に値するのか評価する。評価対象年齢は六十歳で、まさに今年、私は評価される。私は何斉藤なのか。 好むと好まざるとに関わらず、六十歳になったら何斉藤か評価されてしまうのだ。この評価会は斉藤姓にとって呪いとも言うべきものかもしれない。 私は飲食業で起業し、ガムシャラに働いて一代で全国に百店舗を持つ規模にまで

        • 色とりどりのメシの種【第三話】 #創作大賞2024

          「風薫る、いい季節になったね」 買い出しの帰り道、ユイが言った。 「そうだねって、兄ちゃんは言えないよ。ユイ、お前いくつなんだよ」 「知らないの?十二歳。小学六年生です」 「いや、知ってるけど。発言が風流過ぎるんだよ」 「いろいろあったもの。経験が人を作るのよ」 「そうですか」 束の間の、穏やかな時間。 生活が落ち着いたら祖父母の家を出て、ユイと二人、穏やかに暮らしたい。 今の望みはそれだけだ。 スマホの着信音が鳴った。 マツダからだ。 「はい、もしもし」

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        • 色とりどりのメシの種
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        • シロクマ文芸部
          66本
        • 毎週ショートショートnote
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          38本
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        • 応募作品
          22本

        記事

          放課後ランプ #毎週ショートショートnote

          高校に進学したけど毎日つまらない。昼休みに図書館に行って面白そうな本を探すのが最近の唯一の楽しみ。 今日は自然と一冊の本が目に入った。 『放課後ランプ』 手に取って中を見るとタイトル以外は白紙で、最後のページにこう書いてあった。 チャイムが鳴ったので本を借りて図書館を出た。 ランプのある所って……。 午後の授業は何も頭に入らなかった。 放課後、理科室に行ってみたけど誰もいなかった。なんだ、ハズレか。 悪あがきでアルコールランプに火をつけてみると、目の前に教師と

          放課後ランプ #毎週ショートショートnote

          色とりどりのメシの種【第二話】 #創作大賞2024

          子供の日って子供が働く日だったっけ。 むなしい自問自答。 俺は一緒に行きたいというユイに留守番を命じて、ひとりで放火魔の両親の家に向かった。 少し緊張してインターフォンを押す。 「はーい」 「あ、すみません、『何でもヘルプ屋マツダ』です」 「あ、はーい」 優しそうな女の人の声で安心した。 玄関のドアが開いて60代くらいの女性が出てきた。 マツダに言われた通り、挨拶をする。 「こんにちは。私、ハヤシ サトシと申します。本日はよろしくお願いいたします」 「まあ、お若

          色とりどりのメシの種【第二話】 #創作大賞2024

          色とりどりのメシの種【第一話】 #創作大賞2024

          【第一話】メシの種との出会い 腹が減ったら飯を食べる。至極当然のことだ。 その飯は誰が用意してくれるか。 未成年の子供の場合は、お母さん。お父さんが用意してくれる家も多いだろう。 でも、これは当たり前のことではないと知っている。 ウチの場合、ばあちゃんが飯を用意してくれていた。 俺達には両親がいない。生きているか死んでいるかも分からない。ある日、目の前からいなくなってしまったのだ。 だから、じいちゃんとばあちゃんが俺達兄妹を育ててくれた。ついさっきまで、だけど。 俺の中

          色とりどりのメシの種【第一話】 #創作大賞2024

          創作大賞2024にチャレンジしてみようと思います。心折れて2万字に到達できないかもしれませんが、温かい目で見守っていただけると幸いです🙇‍♂️

          創作大賞2024にチャレンジしてみようと思います。心折れて2万字に到達できないかもしれませんが、温かい目で見守っていただけると幸いです🙇‍♂️

          トラネキサム酸笑顔 #毎週ショートショートnote

          「オイ、ゴホン、オマエ、ゴホゴホ、起キロ」 え?誰? 「オイ、ゴホン、起キロッテバ」 嫌だ、怖い。寝た振りしよう。 「寝タ振リヲシテモ無駄ダ。俺ハ宇宙人ダゾ」 ガーン。 風邪ひいてるならマスクしてよ。 宇宙の風邪ってヤバそう。 「宇宙ノ風邪デハナイ。地球ノ風邪ダ」 本当に? 「本当ダ。何トカシロ」 病院行け。 「病院?テ言ウカ、ソロソロ直接話セ」 仕方なく起き上がると、いかにも宇宙人的なのがいた。手足がタコみたいな奴。 「病院には医者がいて、治してくれ

          トラネキサム酸笑顔 #毎週ショートショートnote

          誰かの夢を見た話 #シロクマ文芸部

          春の夢と間違えて誰の夢を見ているのだろうか。 朝からカツ丼を食べさせられた。 カツ丼は好きだけど朝からは胸焼けする。 勘弁して欲しい。 スマホを観ながらゴロゴロする。 たまに動画で大笑い。 そんなに面白い? でも今は大笑い。 動きやすい服装に着替える。 ああ、サッカーをしに行くのか。マジか。 もう少し寝ていたいのだけど。 行くのね?はい。 友達がいると思ってサッカーをしに行ったのに誰もいなくてすぐに帰ってきた。残念。 さすがに少し休むよね? 嘘だろ。オンラインゲーム

          誰かの夢を見た話 #シロクマ文芸部

          春ギター #毎週ショートショートnote

          ♪ これが これこそが 俺がお前に 見せたかった 春の風景 ♪ 「どう?」 曲が出来るといつも最初にミー子に聴いてもらう。 「うーん、なんだろ、全然春って感じがしないのよね……あ、わかった!ギターの音が春っぽくないのよ。日本海が目の前に広がってる感じ。寒い」 「春の音を出せばいいんだな」 「駅前にギター教室できてたよ。行ってみたら」 そう言ってミー子がビラを渡してきた。 「春ギター教室」と書いてある。 「いや、いまさら行かないよ」と言うと、ミー子は心底つまらなそう

          春ギター #毎週ショートショートnote

          花吹雪にとらわれた男 #シロクマ文芸部

          花吹雪の映像をずっと観ている。 桜が舞い散る様子は観ていて飽きることがない。 観るようになったきっかけを誰かに話すつもりはないし、その必要もないだろう。生きている限り、この映像を観続ける。ただそれだけだ。 ◇ 「いい加減、吐いたらどうなんだ!」 取調室に若い刑事の怒号が響く。 「おお、怖い。でもカッコいいね。そういうセリフ、俺も言ってみたいよ。ところで今日の昼メシは何?昨日のカツ丼うまかったから同じでもいいよ、別に」 容疑者の男はこんな調子で軽口を叩くばかりで自供す

          花吹雪にとらわれた男 #シロクマ文芸部

          適応力 #新生活20字小説

          変わっていく妻と娘。化石にもなれない私。 #シロクマ文芸部 #新生活20字小説

          適応力 #新生活20字小説

          気になる人ができました #新生活20字小説

          あの人とたまに目が合う。 合わせてくれる。 #シロクマ文芸部 #新生活20字小説

          気になる人ができました #新生活20字小説

          花冷え全員集合 #毎週ショートショートnote

          「お父さん、今日なんか寒いね。桜も咲いたのに」 三女の夏子が帰ってきた。 高校生にもなれば父親となんか話したくもないだろうに、毎日何かしら声をかけてくれる。 「花冷えっていうらしいぞ。風邪引くなよ」 「何それ、知らない」 「俺も今日知ったよ」 「なーんだ」 呼び鈴が鳴った。 玄関のドアを開けると、長男の春生が立っていた。今年の春から大学生で一人暮らしをしている。 「なんだ、何しに帰ってきた?」 「ひどいな。寂しがってるかなと思ってちょっと寄ってみたんだよ」

          花冷え全員集合 #毎週ショートショートnote

          風車探偵 #シロクマ文芸部

          風車を手に持ち、息を吹きかけてクルクルと回しながら、その探偵は現れた。 「皆さん、お待たせしました。犯人が分かりましたよ」 陸の孤島の古い屋敷に集められた男女五人。 彼らはみな、屋敷の当主から招待状をもらったと言ってやってきたが、奇妙なことに屋敷の当主は招待状など送っていないと言う。 五人の中には「当主が嘘をついているのではないか」と疑っている者もいたが、「せっかく来られたのだから今日はお泊まりください」と当主が言うので、全員大人しく宿泊した。 しかし、朝になり当主が姿を

          風車探偵 #シロクマ文芸部