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グリセルダ

※ネタバレあり

Netflixで「グリセルダ」を観る。実在した「コカインの女王」グリセルダ・ブランコの物語だ。

何故だかわからないが、いわゆる「麻薬モノ」のドラマや映画をよく観る。Netflixでは「ブレイキング・バッド」に始まり「ナルコス」「ナルコの神」…「ベター・コール・ソウル」もだいぶ麻薬モノだし、てか、アメリカや南米のクライム系で麻薬が絡まない方が珍しい。チャイルディッシュ・ガンビーノ主演の「アトランタ」は平和的ではあるが、ドラッグ愛好家たちの話で、時折りバッド・トリップはするもののだいたい楽しそうだ。好きなドラマだが、薬物に憧れちゃう人もでてくるのではないかと少し心配になる。

グリセルダに話を戻すと、70年代〜80年代にかけてマイアミを中心に「麻薬帝国」を築いた「強過ぎる」女性のストーリーである。生まれ育ったコロンビアでは貧困と女性蔑視に苦しみ、持ち前の度胸と頭脳でアメリカへと渡る。特殊で強固な男社会であるカルテルを相手に命がけの取引を挑むグリセルダ。3人の息子を愛する母性と、悪魔のような残虐性を併せ持つ。

華やかな暮らしを手に入れるが、他の麻薬ドラマに付き物のように、女王の最期は惨めだ。手を差し伸べる大切な人間を信じられず、孤立して刹那的な行動を繰り返す。もはや狂気。売人が薬物に逃げる状況というのは、目も当てられない。後悔と妄想、保身と恐怖が入り乱れる。

劇中のグリセルダは美しい「悪女」だが、実在のグリセルダは中々にリアルな「犯罪ママ」といった感じである。
目鼻立ちだけを見ると、若い頃は…美人だったかもな…と思う。

衣装やインテリアも70's〜80'sをよく再現していて楽しめる。特に音楽!職業柄かナイトクラブやパーティーのシーンが多いのだが、そのたびドンズバなヒット曲がかかるので時代の移り変わりがわかる。業界的に避けられない
グロシーンもあるが、それはまぁ…このカテゴリーを見る限り仕方がない。
「関わるとこういう目に遭うぜ」という見せしめである。

グリセルダは滅多に笑わない。その代わりというか、物凄く煙草を吸う。時代だなぁと思うし、この人煙草やらなかったら、どんだけ炙ってたのかしら…とも思う。知恵と勇気を讃えられ「ゴッドマザー」と崇められた女でも、実は何かに依存しないと生きられなかったのか。誰よりも勝気な彼女の真骨頂はスペイン語でのスピーチである。「そんなに舌回る?」ってくらいの強いアクセントで、喉が枯れるまで仲間を鼓舞する。聴衆も本人も酔いしれていく姿はカリスマとその周辺の特別な空気をよく伝えていた。

麻薬カルテルといえば、クレイジージャーニーでのゴンザレス丸山さんによる取材が衝撃的だった。高速道路に死体が棄てられているような、何でそんな街にわざわざ行くのだろう…と疑問を持つが、わからないでもない。私もスケールは小さいが日本各地の「なぜそこに?」みたいな街に行く癖があるからだ。あくまでも危険の少ない範囲で、だが。物見高いだけで、褒められたものではない。

メキシコにチワワという街がある。あの可愛らしいチワワの原産地だが、今はレベル2の渡航危険地帯だ。やはりカルテル絡みの誘拐や殺人、強盗や窃盗が頻発し、観光などに訪れる場所ではない。警察もまともに稼動していないようだし、治安が悪すぎて移民しようという人が後をたたない。何をどうすれば平和を取り戻せるのか、皆目見当がつかない。

チワワという犬は、犬の中では最も寿命が長く、20歳ぐらいまで生きるのはザラだと聞いた。あんな不自然に縮められたような犬の中にどんな力が宿っているのだろう。グリセルダも華奢な体の中に信じられない怒りとエネルギーを持っていた。チワワはよく吠えつくがあれはきっとスペイン語で鳴いている気がする。


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