あるバリトンくんの声と音楽の成長記

若きバリトンくんの7年間の成長記。私のレッスンを受講した、7年間の変化です。(本人に許可をもらったので、公開します。)

イタリア古典歌曲 ”Vergin, tutto amor”を歌っています。
2016年9月1日 東京・幡ヶ谷


「ノドの奥をあける」を間違ってやっていた典型的な例でしょう。実際にはノドを下に押さえつけているので、バリトンでも声が出ない(彼の場合はひっくり返る)んです。

<レッスンメモ>
・調子が悪い?
そんな時どうしますか?→それを隠そうとしてがんばります。
→がんばらないで、そのまま始めるといいですよ。

・ひっくり返りそうになります
→ひっくり返らないように、何とかしようとします。
→でもそれを隠さないで、今のところから始めましょう!
そのまま始める必要があるんです。
大丈夫です!


2018年8月24日 東京・表参道

『うまく歌える「からだ」のつかいかた〈実践編〉』の収録のためレッスンです。最初の14秒は上記の2016年のものです。15秒あたりから2018年の歌声です。すでにいくらか改善されていることが、わかっていただけるでしょう。

・「ノドの奥をあけて」いるつもりで、結果的にノドを押さえつけて声が出にくくなっている例
→「ノドの奥をあけようとしないで」歌ってみましょう!


先日、2024年2月4日 京都_SomaFeliceの演奏会《ドイツ歌曲な午後》
シューベルトの「歌びと Der Sänger」と「魔王 Erlkönig」を歌っています。

大きく改善されていますね!

私がレッスンでしたことは、発声法やからだの使い方を新しく指導したのではなく、彼本来の声がスムーズに出るように、邪魔をしているもの(よいと思っていやっていたこと)を修正したのです。

また、コロナ禍があったことでレッスンはオンラインだけとなり、そのために場所から自由になれたことで(レッスンのためにお互い、移動しなくてよかったので)逆に回数を増やせ、ドイツ語の発音や詩の意味をいっしょに読み込む時間をたくさん取りました。ただただドイツ語を覚えたり、よい発音をするのではなく、自然なドイツ語、子音を最初に強調せず”ふつうに”話すこと。わかった分だけゆっくり進むこと。その時に、”ふつうに”意味がわかっていることのみ歌うことを勧めました。それはなんともゆっくりな歩みでしたが、このコンサートを企画した1年で、ここまで2曲ができあがりました。
しかも彼は超多忙だった。。。

まだまだ、十分ではないところが、もちろんあります。
ですが、声がひっくり返ったり、高い声が出ない、息が続かない、思ったように歌えないと悩んでいる皆さん、辛抱強くゆっくりと、何より”自分を大切に”進んだら、少しずつ開けてくることがあるのではないでしょうか?成長できるのです!変えられるのです!

彼の成長が、その勇気を与えてくれませんか?
私もなんだか元気が出ます。

そんなレッスンを、これからもずっとやっていきたいと思います。
このコンサートの詳しい様子はこちら↓↓


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