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7章:投げ銭のもらい方

 このテキストを読んでいる読者の方にとって、投げ銭というのは興味深い項目ではないでしょうか。
 どんなに魅力的な仕事に就いていたとしても、
「無給で仕事をしたい」
という話にはなりません。
 趣味でやるのであれば別ですが、仕事としてやるのならば、大道芸人もまた、きちんとした報酬を得なければならないのです。
 逆説的に、演技をしたのに報酬をもらえないようでは、仕事をしているとは言えない、ということにもなるでしょう。

 この章では、投げ銭についてどう考えるのか、なぜ投げ銭をもらえるのか、どう言えば投げ銭をもらえるのか、そういった内容を項目立てて説明します。


投げ銭についての考え方

 まず、投げ銭について、しっかりとした考えを持っていることが重要です。
 投げ銭をもらうことは、「結果」であり、「目的」ではないはずです。
 観客を楽しませるという「目的」を完遂すると、投げ銭をもらえるという「結果」に繋がるのです。

 これがブレてしまい、投げ銭をもらうことを「目的」としてしまうと、とても褒められないような、あらぬ手段がたくさん生み出されてしまいます。
 楽しんでもいない観客からどうやってお金を巻き上げようか、とか、どうやって逃げる観客を逃がさないようにしようか、とか、そのような、悪意ある考え方が出てくるかもしれません。
 しかし、そのようなことをしたところで、長期的にお金が稼げるという「結果」には繋がらないものです。
 そうではなく、観客を楽しませる「目的」のための手段に考えを巡らせたほうが、よりきちんとした「結果」に結びつくことでしょう。

 ですから、観客のことを考えた良い演技、良いパフォーマンスをすることが大前提となります。
 その上で、演技さえ良ければ価値が伝わるのか、良いパフォーマンスをしさえすれば投げ銭が入るのか、というと、そういうわけではありません。
 良い演技をして、それが良い演技だと認めてもらうためには、適切な投げ銭口上が必要になります。

 投げ銭口上とは、投げ銭をもらうためのセリフのことですが、これは自分のパフォーマンスの価値を伝えるためのプレゼンでもあります。
 良い商品であっても、その良さを伝えるためにCM放送をします。それと同じで、パフォーマンスもまた、その良さを伝えなければなりません。
 これを疎かにすると、せっかく良いパフォーマンスをしても投げ銭が入らず、
「お客さんがわかってくれない」
と嘆くことになってしまいます。

 投げ銭をもらうことを目的として悪意ある手段を考えることとは逆ですが、もしかすると「お金をもらうのは申し訳ない」とか「お金を出してもらうようにお願いするのは気が引ける」と思う人もいるかもしれません。
 しかし、これは喩えるなら、
「商品を売ったのだけど、お金を貰うのは申し訳ない」
と言っているようなもので、お客さんにとっても失礼です。
 パフォーマー自身が自分の芸の価値を認めていないとすれば、いったい誰がその価値を理解できるでしょうか。
 これを読む読者の方は、そのようなことにならないように、良いパフォーマンスをして、良い口上を述べ、適切に投げ銭を得ていただきたいと思っています。

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