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実はKPTは難しい

最近、あらためて考えると・・・むむむ?ということがあった。

きっかけは及川さんのツイート。

非常によく聞く話。この状況、冷静に考えると・・・

「ふりかえりがしやすい方法」をやってみたが、ふりかえりがうまくできない。この「ふりかえりがしやすい方法」が「よりやりやすい方法」をみんなが考えている

これって・・・

 痩せるためにランニングを始めたが、効果が薄い。よりランニングがしやすいランニングウェアを考える

みたいな感じが否めない。

 ランニングで痩せないなら、ランニングじゃない方法が良いのでは?

 中には、サウナスーツみたいな効果的な方法があるかもしれないが、いつの間にか痩せることよりランニングが目的になっていないか?という感覚が否めない。

 そこで、今日はそもそも KPTって難しいよ?っていう話をまとめていく。

 ちなみにKPTが嫌いなわけでもなければ、否定しているわけでもない。あくまで「初めてのチームがまず選ぶのにはあまり向いていないのでは?」と思っているので、その部分を解説したい。

Keep と Problemは難しい

今では聞く機会がなくなった、「とりあえず生!」。

スクラムを始めて、ふりかえりを始めるとよく目にするのが「とりあえずKPT」。

しかし、KPTのステップ1にあたる「Keep(とProblem)を出す」という作業は実は頭の中で複雑なことをしている。

Step1-1.   Sprint期間内の出来事を思い出す
Step1-2.  自分の解釈で"Keep","Problem"に選別
Step1-3.  みんなにアウトプット

  そもそも、ふりかえりに慣れていないと思い出すことが難しい。カイゼンの経験やポイントが見えていないときにも止まらないだろう。

 経験やポイントは、選別の軸になる。そもそも、Keep、Problemにどの粒度で何を挙げればいいのかをぶっつけ本番で実施しているようなものだ。

そうなると、思いついた素案の大抵が脳内で予選落ちする。

 「些細な出来事過ぎて、Keep、Problemに挙げるまでもない」
「 これを言ったら、周りの反応が怖い(深掘りされるとめんどくさい) 」
「これは当たり前すぎて、誰かが挙げるだろう」

他にも予選落ちの理由はたくさんある。

 そして、予選を通過してもまだハードルはある。

私のKeepはあなたのProblemかもしれない。

 「せーの」でだすならまだしも、自分がKeepに描こうとしたことを誰かがProblemに書いているのを見たらなんだか萎縮してしまうのも無理はない。

つまり、誰かと違っていても、安心して自分の選択や判断をアウトプットできる環境、雰囲気でなければ、そもそもKPTの本領発揮とはならない。

これが、経験値の少ないチームであるとなおのこと難しい。

Tryも難しい

 大きくて壮大すぎる Try だと直近のアクションにつながらず形骸化を招く(サグラダファミリアTry)。その対応策としてKPTにActionを追加したKPTAも有名。

  一方でとりあえずできる小さなカイゼン も必ずしも良いとは限らない。

実は重要な課題から目を背けて、小さくて着手しやすいが、全体への影響が実は少ないTryに時間を割いているのかもしれない(玄関先の雪かきTry)。

故に Tryのレベル感もまた難しい。

「残り10分しかないのでとりあえずできることをTry(Action)に挙げますか!」

 これを繰り返していても、非連続的なカイゼンの効果は生まれず、質の向上ははかれない。

 これを続けていくと

「毎回1時間もやってるのに、Tryは"当番を決める"だけ?」
「やたらと細かいルールだけ生まれていって本質が変わらない」

といった状況を招く。


 いっそのこと、

「1週間単位でのTry(Action)は出なかったものの継続で協議すべき大きな課題が見え、別の時間で議論しようというきっかけができた。」
「答えは出なかったけど新しい気づきが生まれて"ハッ"とした」

という方がよっぽど、得られるものがあるのではないだろうか?

  タイムボックスを気にしすぎて「木を見て森を見ず」になっていないだろうか?


 このような状況に陥らない質の良いTryには質の良い問いが必要だ。

質の良い問いの傍にはそれを生むファシリテーターが必ず君臨している。

これはYWTにおけるTryなど他の手法でも同様と言える。

初めてのふりかえりで気をつけたいこと

そもそもふりかえりに慣れていないと以下が難しい。

- 日常の中で何かを感じること (受信)
- 感じたことをアウトプットすること (発信)

まずはそれぞれが持つアンテナを磨く練習から始めるのはいかがだろうか?

具体的には思い出してアウトプットすることに特化するのだ。

手法で言うとこの辺りが適しているかもしれない。

 ちなみに、経験値が高いファシリテーター(スクラムマスター) + 経験の少ないチームとかだとまた別の方法もあるだろう。

最近やり始めたこと 「K6」

 新しいチームと仕事を始めて、こんなふりかえりを始めた。これは数々の手法のエッセンスをもとに私が組み上げてみたものである。

Step.1 感じたこと(K)、気づいたこと(K)
Step.2. 共感(K)
Step.3. 考え(K)、語り合う(K)
Step.4. 確認(K)とまとめ

ポイントは以下と考える。

▼ 感じたこと(K)、気づいたこと(K)
 1. 思い出してただただ書く練習
 2. 良し悪しではなくありのままの感情を書く。
 3. (慣れるまでは)最初の頃はファシリテーター地震の感じたことでも良い  かもしれない
▼  共感(K)
 1. どっと投票で共感をすることでアウトプットに対する承認
 2. この後の優先順位の参考にする
▼  考え(K)、語り合う(K)
 1. 共感の多いものや話したいものをみんなで語り合う
 2. 背景を深掘りしたり、違う視点を上げてみたり
▼ 確認(K)とまとめ
 1. 内容のラップアップ
 2. 結論、継続議論、発散などどうであっても良い。ありのままを受け止める

これはあくまでアンテナを磨く練習である。

 ある程度、感じたことや気づいたことが出始めたり、もっとアクションを具体化したいという声が出てきたら、別の手法に移っていくのが良いだろう。

その時の自チームの状態によってその後の手法は選べば良い。

最後に

 というわけで、ふりかえりはチームの状態や練度で選んでいくことをお勧めしたい。

 「とりあえずKPT」はふりかえりの形骸化、質の低下のもとであり、思考停止が招く弊害は大きい。

 この記事が改めて自分のチームのふりかえりについて考えるきっかけになったらと思う。

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主にPjM、PO、セールスエンジニア、AWS ソリューションアーキテクトなどを務める。「映像業界の働き方を変える」をモットーにエンジニア組織を超えたスクラムの導入、実践に奔走。DevLOVEなど各種コミュニティーにおいてチームビルディングやワークショップのファシリテーションを行う