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ベーシックインカムとマズローの欲求5段階説

こんばんは、
廣木雄一郎です。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行によって失業者が増加した結果、経済政策の一環として無条件かつ一律に一定額の給付を行う「ベーシックインカム」に注目が集まっていますね。

そもそも「ベーシックインカム」とは、最低限所得保障の一種で、政府がすべての国民に対して、一定の現金を定期的に支給するという政策です。

実は、数年前から、世界中で限定的なパイロットプログラムが次々と始まっています。ベーシックインカムというのは、もともとは資本主義的な発想の中から出てきた概念です。

資本主義経済では、消費者にたくさん消費してもらわないと、企業活動を継続することができません。つまり、消費者である国民の所得の保障を国家がすることで、企業活動が滞りなく行えるようにしていこうというのが、ベーシックインカム論の背景にある、もともとの考え方です。

2019年2月からカリフォルニア州ストックトンで開始されていた「使用用途を制限せずに毎月500ドル(約5万4000円)を生活に困窮する人々に与えたら何が起こるのか?」という実験が、2021年1月に終了しています。この実験がもたらした成果について海外メディアのThe Atlanticで解説しています。

実験内容は、ストックトン在住かつ平均年収の中央値である4万6000ドル(訳494万円)を下回る住民から、ランダムに選ばれた125人を対象として行われました。選ばれた住民には毎月500ドルが支払われ、住民はそのお金の使い道などの報告義務はなく、自由に使うことが許されました。

テネシー大学のステイシア・マーティン・ウェスト助教授とペンシルバニア大学のエイミー・カストロ・ベイカー助教授は何人かの住人をこの実験の対象となった住人と対象になっていない住人のグループに分け、データを収集し分析を行いました。その結果、3つの事実が明らかになっています。

①お金を受け取ったグループの収入の変動性が減少したということです。お金を受け取っていないグループの世帯月収が68%変動したのに対し、お金を受け取ったグループの世帯月収は48%に抑えられていました。受け取ったお金の大半は食料品や公共料金などの生活に必要な費用の支払いに充てられ、1%未満がタバコやアルコールなどの嗜好(しこう)品に充てられたとのこと。

②「人々はお金を受けとることで働かなくなる」という考えが誤りだったということです。お金を受け取ったグループの就業率は、お金を受け取っていないグループに対して7%高かったことが分かっています。ウェスト助教授らはインタビューで「お金を受け取ったことが個人の目標設定やリスクテイクに影響を与えた可能性が高い」と述べました。

③お金を受け取ったグループの幸福度が高く、健康で、不安が減少したということです。この実験を主導したストックトンの元市長であるマイケル・タブス氏は「お金は向精神薬よりも、うつ病を治すずっといい手段です」と語ります。

また、カナダのオンタリオ州では2017年7月から、4000人近い人々を対象にベーシックインカムを支給する大規模な社会実験が行われていましたが、予定の3年間が経過するより早い2019年3月にプログラムは打ち切られました。

オンタリオ州のベーシックインカムプログラムについて「参加者はベーシックインカムの支給が始まった後も仕事を続け、より健康的になった」という調査結果が発表されました。どの調査の結果から明らかになったのは、人々がある程度の安定性を得ると、健康やメンタルヘルス、人生の見通しが改善したということです。

マズローの欲求5段階説でもあるように、人間の欲求は5段階のピラミッドのように構成されていて、低階層の欲求が満たされると、より高次の階層の欲求を欲するとありますが、まさにベーシックインカムによって、低階層の欲求が満たされているのではないか、と思いました。

第一階層の「生理的欲求」は、生きていくための基本的・本能的な欲求(食べたい、飲みたい、寝たいなど)が満たされ、

第二階層の「安全欲求」は、危機を回避したい、安全・安心な暮らしがしたい(雨風をしのぐ家・健康など)という欲求、つまり、最低限の暮らしを確保したいという欲求が満たされ、

第三階層の「社会的欲求」の次に芽生える欲求は、「尊厳欲求(承認欲求)」(他者から認められたい、尊敬されたい)を満たしたいとなり、

仕事を辞めることなく、働く人々が多かったのではないでしょうか。人間の欲求から考えると、ベーシックインカムは、人々が幸福に暮らす上で非常に理にかなった政策のように思いました。

廣木雄一郎

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