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スポーツに特化した筋力、スピード、持久力の組み合わせ(続き)


「周期運動」と「非周期運動」

このトピックをさらに議論する前に、「周期運動」と「非周期運動」について簡単に説明する必要があります。
周期運動とは、一定の時間間隔で同じ状態が繰返される運動のことを言い、ランニング、ウォーキング、水泳、ボート、スケート、サイクリングのような運動を指します。
つまり、このような運動は、動作の1サイクルを学習すると、同じ連続性を持って何度でも繰り返すことができるようになります。

一方で、非周期運動は、異なる運動パターンの組み合わせを指します。
例としては、体操、格闘技、投擲競技、そしてチームスポーツにおける多くの技術的な動作が当てはまります。

スポーツに特化した生物学的運動能力の組み合わせ

下の図は、筋力(F)、スピード(S)、持久力(E)の様々な組み合わせを分析したものです。
F、S、Eそれぞれに近い矢印は、スポーツやスキルにおいて、その特定の能力が優位的な役割を果たすことを示しており
軸の中間にある矢印は、両方の運動能力が同等に寄与していることを示します。
矢印がFに近い場合は筋力が優位なスポーツやスキルであり、矢印がSに近い場合はスピードが優位なスポーツやスキルであるということです。

スポーツに特化した生物学的運動能力の組み合わせ
出典:Periodization Training for Sports

F-E軸


F-E軸は、筋力と持久力つまり、筋持久力が優位な組み合わせのスポーツに適用されます。しかし、すべてのスポーツで筋力と持久力が同程度に必要なわけではありません。
例えば、陸上競技では短距離走(100m、200m、400m走)から中長距離(800m、1,500m、3,000m障害、5,000m、10,000m)、マラソン(42.195km)まで様々な距離があります。
短距離では筋力-スピードが優位ですが、中距離となるとパワー持久力が優位になります。またマラソンにおいては筋持久力が支配的な運動能力になるでしょう。
つまり、距離が長くなると筋持久力が重要になります。

パワー持久力(PE)がF-E軸の上位にあるのは、バスケットボールのリバウンドやバレーボールのスパイクなどの活動において筋力が重要であるためです。
これらの動作は、すべてパワー優位です。これらの動作は、1回の試合で50~200回行われるため、継続的に行うには、パワーだけでなく持久力も鍛える必要があります。
そのため、パワーとパワー持久力の両方を鍛える必要がありますが、パワー動作を繰り返し行えるように、量と強度の調整を行わなければなりません。しかし、チームスポーツで用いられるような短時間のパワー動作の繰り返しと、100m、200m走や50m水泳で用いられるような長時間継続するパワー動作は区別する必要があります。

どちらもパワー持久力を必要としますが、前者の主なエネルギーシステムはATP-CP系であり、最終的には乳酸系です。
これに対し、後者は主に乳酸系の力に頼っています。

筋持久力(短時間)とは、40秒から2分程度の競技に必要な筋持久力のことで、乳酸系の能力と有酸素系の力が混在しています。
水泳の100mや400m走、スピードスケートの500~1000m、カヌーの500mなどの競技がこれに当てはまりあます。

筋持久力(中時間)は、典型的な周期的スポーツで、活動時間は2~8分です。有酸素性パワーを必要とする周期的なスポーツでに用いられ、200-400m水泳、3,000mスピードスケートなど。非周期的運動であれば格闘技、フィギュアスケート、シンクロナイズドスイミング、競輪などが当てはまります。

筋持久力(長時間)とは、標準的な抵抗に対して、より長時間(1時間以上)力を加えることができる能力を指します。
長時間筋持久力を必要とする活動には、マラソン、クロスカントリースキー、ロードサイクリングが含まれており。また、水泳、スピードスケート、カヌーなどの長距離走も含まれます。

S-E軸


S-E 軸(スピード持久力)は、多くのスポーツで要求されます。
スピード持久力とは、野球、バスケットボール、ラグビー、サッカーのように、10~20秒間スピードを維持したり、1試合に何度も高速な動作を繰り返せる能力のことです。
そのため、これらのスポーツを行う選手は、スピード持久力を鍛えるためのトレーニングを行う必要があります。スピードと持久力の割合は、距離が長くなるにつれて変化します。
以下の図に示すように、スピード持久力の組み合わせは、以下のように変化します。

スピード・持久力 コンビネーション
出典:Periodization Training for Sports

F-S軸


F-S(筋力-スピード)軸は、主にパワーが優位なスポーツを指します。例えば、フィギュアスケート、体操、チームスポーツなどでは、着地力と反動力が重要な要素となっています。
このようなスポーツでは、多くの選手はジャンプの跳躍部分のみをトレーニングし、着地のコントロールやバランスを重要視することは少ないです。適切なトレーニングを行うことで怪我を防ぐことにもつながります。
適切な着地技術は重要な身体的(パワー)要素を含んでいます。着地の衝撃を吸収し、すぐに次の動作に移れるようなバランスを保つために、アスリートはエキセントリックトレーニングを行う必要があります。
ジャンプの衝撃を吸収する着地では体重の3~4倍の力が、脚の関節を硬くして行う着地では体重の6~8倍の力がかかることが実験で明らかにされています。
例えば、体重60kgのアスリートは、着地の衝撃を吸収するために180〜240kg相当の力を発揮します。
同じアスリートでも、脚の関節を硬くして着地する場合は、360~480キログラムの力を発揮することになります。
フィギュアスケートのように片足で着地する場合においては、着地の瞬間にかかる力は、衝撃を吸収する着地では体重の3〜4倍、脚の関節が硬い着地では5〜7倍となります。

短い距離で速い加速が求められるスポーツでは始動力が求められます。
高い始動力を生み出すためには自分の体重を早く動かす能力が必要であり、つまり体重に対する高い相対筋力、相対パワーに依存します。
加速力とは急激にスピードを上げる力のことです。手足を早く動かし、足の地面への接触時間を短くし、地面を押しつけ力強く前進させるための速い筋収縮とパワーよって決まってきます。
ですので、速い筋収縮とパワーを達成させるために筋力トレーニングはとても有益なトレーニングとなってきます。

減速力は、アスリートが速く走り、頻繁に方向転換するスポーツで重要です。
例えば、サッカー、バスケットボール、ラグビーなど、選手が速く走り、方向を素早く変えることが多いスポーツで は、減速力が重要になります。
スピードをできるだけ落とさずに方向転換し、それからまた別の方向に早く加速しなければなりません。
加速、減速ともに脚の大きなパワーが必要になってきます。

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