大澤裕一

千葉県市川市出身/つくし幼稚園→平田小→市川中・高→東大(理1・理学部数学科)・東大大…

大澤裕一

千葉県市川市出身/つくし幼稚園→平田小→市川中・高→東大(理1・理学部数学科)・東大大学院(数理)→SEG・エデュカ/「大学への数学」ほかに連載/数学の魅力・学びの楽しさを伝える/数検1級・統計検定1級合格/趣味はマラソン/19,21東京完走ほか/いつか市川に戻りたい/

最近の記事

数検1級を受験しました。(2回目)

このnoteでは、私が受験した数検1級(2024/04/14(日))について、受験勉強、試験の出来、合否発表などを冗長に記述します。数検1級に興味のある方、受験予定の方で、時間のある方はぜひお読みください。 数検1級の概要は次の通りです。 1.2024年4月の試験まで 2022年7月に数検1級を初めて受験しました。このときの詳細については、以下をお読みください。 前回の受験のときは、対策の勉強をけっこうした記憶があります。この蓄積があったので、今回はほぼ対策をしません

    • 「二項分布の補累積分布関数」とF分布の関係

      2024/04/14(日)実施の数学検定1級の2次試験で、「二項分布の補累積分布関数($${P(X \geqq k)}$$)の値をF分布を利用して考える」と言う話題が出題されました(原題は仮説検定の問題)。これについては、「そもそもそんな話、知らない」と言う方も多いかと思います。そこで、今回は、このことをできるだけ分かりやすく解説したいと思います。実際の試験問題を掲載することは禁じられているので、そのエッセンスだけ取り出したものを考えてみましょう。 二項分布$${\disp

      • ケンブリッヂの入試 口頭試問問題サンプルの1問

        数学セミナー 2017年4月号「試験のゆめ・数理のうつつ」(時枝 正 先生)の第1回「ケンブリッヂの入試」より抜粋しました。理系の大学受験生の皆さんは、ぜひ考えてみてください。 (定積分の数値評価に関する問題は、大学入試でもしばしば出題されます) 解答は以下のツイートの下にあります。 実は、はじめは以下のツイートのような解答を用意したのですが、数学するひよこさん(@mathmathpiyopi1)に$${B}$$の下からの評価の良いアイデアを教えていただきました(上の解答は

        • 2024名大理系前期大問4(2)を一発で解く

          数理統計学における、比較的有名な事実(二項分布とベータ分布の関係)に関する証明問題です。ぜひ考えてみてください。解答は、この下の原題の画像の下に載せます。 普通の証明は、 「右辺の定積分を部分積分の反復で計算し、$${f(k)}$$に一致することを示す」 だと思います(あるいは、この方法と実質的に同等だが、部分積分+数学的帰納法で示す)。 さて、この等式を「一発」で示すこともできます。一様分布と順序統計量を用います。 キレイに示せましたね! 数理統計学を学ぶと、大学受

        数検1級を受験しました。(2回目)

          期待値の問題(2024共通テスト)

          上記は、2024年の大学入学共通テストの数学2・数学B本試験の第3問(統計的な推測)の中で扱われていた問題の表現を変更したものです。ただし、この問題そのものが直接問われたわけではありません(詳細は問題文をご確認ください)。面白い問題だと思うので、ぜひ取り組んでみてください。特に、2022年度から施行された学習指導要領(期待値の必修度合いが前課程よりも高まった)で高校数学を学ぶ高校生には、ぜひ考えてもらいたい1問です。略解は以下です。 「和の期待値=期待値の和」を用いています

          期待値の問題(2024共通テスト)

          ウォリス積分をベータ関数とガンマ関数を利用して求める。

          ウォリス積分    $${\displaystyle I_n=\int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \sin ^n x~dx~\Big(= \int_{0}^{\frac{\pi}{2}} \cos ^n \theta~d\theta \Big)~(n=0,1,2,\cdots)}$$ の一般項は普通、$${I_n}$$の漸化式を立式して再帰的に計算して求めますね。ここでは、$${I_n}$$の一般項をベータ関数とガンマ関数を利用して求めてみます。(式変形の説明は

          ウォリス積分をベータ関数とガンマ関数を利用して求める。

          統計検定1級を受験しました。(2回目)

          このnoteでは、私が受験した統計検定1級(2023/11/19(日))について、受験勉強、試験の出来、合否発表などを冗長に記述します。統計検定1級に興味のある方、受験予定の方で、時間のある方はぜひお読みください。 統計検定1級の概要は次の通りです。 1.2023年11月の試験まで 2022年11月に統計検定1級を初めて受験しました。このときの詳細については、以下をお読みください。 2022年11月の統計検定1級で統計数理・統計応用の両方で合格(統計数理はS合格)を頂

          統計検定1級を受験しました。(2回目)

          数理統計学のゼミ(第2弾)を行います(2024/01/12-2024/05/24)【2024/04/26で終了】

          「むぐむぐ勉強会」(むぐれしあさん(@Mgreshia4)が主催されるDiscordサーバー上でのオンライン勉強会)にて数理統計学のゼミ(第2弾)を行います。概要は次の通りです。 (1) 教科書: 「データ解析のための数理統計入門」(久保川達也、共立出版)  ※参考書として以下を挙げておきます。なお、2023/03/03-2023/11/17にこちらの書籍の第2~9章(+α)をゼミで扱いました。 (2) 主な対象:  (a) 数理統計学の基本を学びたい方  (b) 数理

          数理統計学のゼミ(第2弾)を行います(2024/01/12-2024/05/24)【2024/04/26で終了】

          exp(x)/x^α→∞(x→∞) のとても簡潔な証明

          基本極限である$${\displaystyle \lim_{x \to \infty} \frac{e^x}{x^\alpha}=\infty}$$($${\alpha}$$は正の定数)の証明については、様々な方法が知られています。今回は、とても簡潔な方法を紹介します。私が知る方法の中で最も簡単な方法です。「増加で下に凸な関数は$${x \to \infty}$$で正の無限大に発散する」(直観的には当たり前で証明も容易)を用います。 $${\displaystyle \fr

          exp(x)/x^α→∞(x→∞) のとても簡潔な証明

          「極小値の個数が1個」とは!?

          数II微分(多項式関数の微分)が既習の方向けの問題です。考えてみてください!少しイジワルな問題ですが…。以下のtwitterの投稿の下に略解を載せます。 [略解] あり得る場合は、以下のいずれか。  (ア) $${f(x)}$$の極小値を与える$${x}$$が$${1}$$つ($${a=0,1}$$)  (イ) $${f(x)}$$の極小値を与える$${x}$$が$${2}$$つで、これらが同じ極小値を与える($${\displaystyle a=-1,\frac{1}{2

          「極小値の個数が1個」とは!?

          「難しい」定積分の問題

          原題は東工大の編入試験あるいは院試の問題のようです(原題には$${|a| \neq 1}$$という仮定はありませんでした)。ツワモノはぜひ考えてみてください。高校数学の範囲で解けます。略解は次の通りです。 区分求積法と複素数(1の累乗根)を利用するところが面白いですね。 ■$${|a|=1}$$のときは、この積分は広義積分になります。この場合を除外するために、仮定に$${|a| \neq 1}$$を追加したのでした。

          「難しい」定積分の問題

          tan(89.99…9°)の値

          大学生のときの基礎実験の時間中、実験をさぼって電卓で遊んでいたら、以下の事実を発見しました(「実験、さぼるなよ!」というツッコミが来そうです。すみません…)。 何と、$${89.99\cdots9^{\circ}}$$の末尾に$${9}$$を1つ追加すると、$${\tan}$$の値が約10倍になるのです!しかも、はじめの$${\tan 89^{\circ}}$$の値は$${\displaystyle \frac{180}{\pi}}$$の値とほぼ一致しています。ちょっと感動

          tan(89.99…9°)の値

          スコア関数を用いた期待値の計算

          幾何分布の期待値を「スコア関数(logP(X=x)をパラメータで微分したもの)の期待値=0」を利用して求めました。無限和を計算することなく、簡単に求まります。 他の指数型分布族(二項分布、ポアソン分布、正規分布、ガンマ分布など)でも同様の計算ができます。ぜひやってみてください! 参考までに、コメントを下さった黒木玄先生(@genkuroki)の引用ツイートも掲載します。

          スコア関数を用いた期待値の計算

          a,bが互いに素⇒a+b,abが互いに素 の証明

             「互いに素な整数$${a,b}$$に対し、$${a+b,ab}$$も互いに素」 の一風変わった証明を紹介します。これについては、素数の性質(整数$${a,b}$$と素数$${p}$$に対し、$${ab}$$が$${p}$$で割り切れるならば、$${a,b}$$の少なくとも一方は$${p}$$の倍数)を用いる方法が有名ですが、今回はこの性質を用いません。 整数論における基本定理「整数$${A,B}$$に対し、$${A,B}$$が互いに素$${\Leftrightarro

          a,bが互いに素⇒a+b,abが互いに素 の証明

          大澤の「朝日新聞 明日へのLesson」への寄稿について

          大澤がこれまで「朝日新聞 明日へのLesson」に寄稿したものについて列挙します(新しいものから順に載せています)。宜しければ、ぜひお読みください。(有料記事ばかりですが…)

          大澤の「朝日新聞 明日へのLesson」への寄稿について

          大澤の「大学への数学(東京出版)」への寄稿について

          大澤がこれまで「大学への数学(東京出版)」に寄稿したもの(ツイッターへの投稿)を列挙します(新しいものから順に載せています)。宜しければ、ぜひお読みください。なお、2024年度も6,8,10,12,2月号に連載を担当します。 2021年10月号では、「区分求積の和と定積分の誤差」に関して書きました(「大学への数学」の執筆デビュー)。近年の大学入試において、この話題がよく出題されています。後半では、この話が成り立たない例(高木関数)について書きました。 ■あと、執筆ではない

          大澤の「大学への数学(東京出版)」への寄稿について