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「ワゴン価値」のなかに紛れ込むスバルのオタク魂 スバル レヴォーグ 試乗レビュー

今回は、スバルのレヴォーグ(VN型)についてレビューしていこうと思う。

内装編では何かと印象が良くないように感じるが、走りに関しては以前ディーラーで試乗した際に感じたこととほとんど変わってない。実は初めて欲しいと思ったのがレヴォーグだったりするのだが、その出来の良さは色々なクルマを乗った今でも健在だった。内装のネガをも打ち消してしまう走りについて解説して行こうと思う。

皆さんは、VN型のレヴォーグといえば何を真っ先に思い浮かべるだろうか。ワゴンであるということ自体の独自性?アイサイトX?水平対向エンジン?
今この記事を書いている段階で。レヴォーグという車種ひとつだけで、これだけのワードがすぐ浮かんでくる。それだけでスバルがこのレヴォーグという車種に対して思い入れがあり、どれだけしっかり作り込んできたかということがわかる。
現代においてあえてSUVやミニバンではなく、ワゴンを選ぶのか。消えてしまったMazda6との違いなど、いろいろな意味でレヴォーグというクルマは興味深い。

内装は未来的

内装は、いろいろな意味で未来的である。デジタルメーター、巨大なディスプレイ。フォレスターなどに比べて圧倒的にボタン類が少なく、スバルなのにメカメカしさは少ないように感じる。有名な話ではあるがブレーキホールドはディスプレイの中に収まっており、しかも少し深層部にある。
これが素晴らしく面倒で、本当であればボタンひとつ押せば済むはずで、なおかつそれですら面倒なのに、なぜせっかくの便利機能を深層部に配置してしまうのか。もちろんブックマーク、ウィジェット的に表に出すことは可能だが、ボタンひとつ配置するなり、記憶させるようプログラムするなり、ブレーキを深く踏み込むと働くようにするなり、もっと使いやすくする選択肢は他にもある。このシステム自体もどことなくUIが古臭く、正直使う気になれない。ナビの案内自体はそこそこわかりやすいので、ナビとCarPlayを使う、もしくはエアコン以外はこのナビに触れることはなかった。というか、触れる気になれない。アイサイトXがつくのでこのナビは必須だが、正直使いづらくストレスである。ディスプレイに集約しすぎという意味でも未来的…
電子タイプのウインカーレバーも使い勝手が悪く、アイサイトXのためとはいえ印象は良くない。そういう意味でも未来的。

ただ質感はよく、各所に使われたソフトパッドや、スバルらしい堅牢感のあるデザインなど、所有欲は満たされる。デジタルメーターもデジタルのメリットがうまく生かされており、地図も表示できる。自分は試乗中ずっと地図の画面にしていた。

ただ、エアコン周りの操作系はよくない。温度設定などが表に出ているのはいいが、何がボタンで設定できて、何がディスプレイから設定しなければいけないのか非常に混乱する。それならいっそ全てディスプレイでタッチパネルにするか、縦長ディスプレイなんてやめて物理ボタンで配置していただきたい。日本のように四季のある国において、この車格で快適に使用することができないというのはあまりにも致命的だろう。

マツダ以上に「クルマを小さく感じさせる」走り

気持ちのいいエンジン音

まずレヴォーグの特徴として、CB18エンジンを外すことはできない。2000回転くらいの日常回転域でも独特で重厚な音がする。しかし、VQエンジンのように遠くから高らかに聞こえてくるような、粒がそろっていくようなエンジン音ではない。水平対向6気筒の音がどんなものか気になるが、このCB18エンジンでは、直列4気筒よりはるかに独特で重厚な音を出している。これはワゴン価値というよりはスバル車の価値のひとつだが、最新車種でもしっかりその魂はあるといえる。

CVTは優秀

CVTは優秀で、全開加速は段があって面白い。おおよそ思った通りの出力がアクセルを踏んだら踏んだ分だけでているようで、普段使いでぎくしゃくしたり、ラグがあるようなこともない。

ただ気になる点がいくつか。
iモードとsモードがあるのだが、iモードだとあえてなのか全開加速でレスポンスがおくれてしまう。sモードではそんなことはないので、気になる場合は力が欲しい時や、気持ちよく走る人はsモードを使うとよさそう。ただ、それを切り替えていくのは面倒なうえに、sモードは極端に燃費が落ちていく。それを考えるとiモードとsモードの間を埋めるノーマルモードのようなモードが欲しいと感じる。
普通に巡航している分には、エンジン音は入ってこず、気づいたらsモードでバイパスを走っていたというようなこともあるので、どっちのモードにしているかは覚えておいたほうが良さそう。

また、発進時も若干ペダル操作には気を使う必要がある。ちょっとでも気を抜くと急発進になってしまう。軽快感こそ出ているが、意図した通りにクルマが進んでくれないというのは運転手としても同乗者としても快適ではない。

ただ、多くのCVTが街乗り領域でギクシャクガコガコしていることを考えると、やはりギクシャクしないというだけでかなり優秀と言える。

優秀な四輪駆動とステアリング

このレヴォーグの一番の肝は「四輪駆動であること」だろう。
スバルといえば四輪駆動といわれることが多いが、このレヴォーグというクルマ、直進安定性が高く、グリップ感や安心感が常にある。

これはトヨタ車にて自分はよく使う表現だが、トヨタ車の場合はクルマのボディのフロント部分をしっかりと仕事させて、リアはそれに追従するといった感じで四輪の接地感を出しているようなかんじ。直進安定性のためにステアリングのセンターの範囲を広くとり(遊びではない)、それで安心感や安楽に運転できる感を出している。
スバルでは、どちらかというとステアリング自体はマツダに近い雰囲気で、少しでも動かしたら反応するように作られている。それでいて、四輪に仕事を割り振り、しっかりとすべてのタイヤを駆動させることで直進安定性を出している。ステアリングを曲げるときも、フロントで発生した曲がる力がボディを介してリアに伝わりしっかりと四輪で曲がることができる。ノートepowerの四駆もリアをしっかり使って四輪で曲がることができるが、それをもっと全面に押し出していったような感じで、これがシンメトリカルAWDの力かと思わされる。比較対象としてはクラスこそ違うが、二輪駆動をベースとして設計されているノートと、最初から四輪駆動であることを前提として設計されているレヴォーグといったところ。つまりはFFベースの四輪駆動なのか、それとも四輪駆動ベースでそもそもが設計されているのかという感じで、後ろ側に仕事をさせている感はやはりレヴォーグのほうが強い。

高いボディ剛性と乗り心地

スバルといえば出た当初によく言われていたが、「スバルグローバルプラットフォーム」だろう。
全てを作るための基礎の部分で、やはりスバルのクルマは基礎ががっちりしている。上質とスポーティーをうまく両立されている乗り心地だと感じた。
まず、多少突き上げを拾う感じはあり、段差をひろう感じはあるが、無駄なものは一切伝えず、ビリビリした振動はほぼないといってもいい。つまりは道路のインフォメーションはしっかり伝えてくるが、まるで一枚壁があるかのような雰囲気で、開放的な室内空間ではあるが守られているような安心感がある。音の部分ではエンジン音こそ聞こえてくるが、環境音もロードノイズもそこそこ静かというような感じで、後ろからの音が気になったり、とんでもなくうるさいというようなこともなく、よく調教されている。

信頼できる運転支援

運転支援系のできは前評判どおりかなりいい。アイサイトXを試すことは今回残念ながらできなかったが、Xでなくても他のホンダセンシングやトヨタの運転支援と比べてもかなりレベルは高い。
前車を見つけるスピードはかなり早い。例えば横からクルマがギリギリで車線変更してきたとしても、まるで予測していたかのように滑らかに減速してくれる。
ステアリングの支援力も強く、カーブを曲がる時のハンドルを切るタイミングもかなり早い。正直バイパスや高速道路を走っていて、これより不安定な運転手はごまんといるだろう。
ただ警告は仮にハンドルを持っていたとしても出ることがあり、これだけ支援力も高いのに最大限活用させてくれないのかと少し残念に感じる。これだけの技術力があるならぜひともスバルにもレベル3の運転支援を実現していただきたい。

まとめ

レヴォーグと聞いて、何を思い浮かべるか?その選択肢がたくさん出てくる時点で、このクルマの価値は十分にある。しかも目に見えるものから目に見えないものまで多岐にわたる。つまりはこのクルマ、ぱっと見でわかる魅力がたくさんあるということである。
フォレスターに新型の噂が出て来ているが、流行りのSUV×そのような魅力を兼ね備えているとなると、俄然注目度は上がる。

ただ、表示のフォントが子供っぽく、どうしてもやんちゃ感が出ていたり、例によってボンネットに穴が空いていたりなど、オタク感が滲み出てしまっている。それがスバル車の個性となり、このクルマに機能性だけではない「味」を持たせてくれている。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。スキやフォローお待ちしております。


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