オリンピックの各国衣装レビューと、見えてくること。
いよいよオリンピックが開幕しましたね。やっぱりアスリートの皆さんのイキイキとした姿、悲喜こもごもの様子を見ると開催したことは間違ってなかったのかなと思ってしまいます。怒涛のメダルラッシュにもう10回は泣いたかも。
開会式でドラクエとFFをはじめゲームミュージックが掛かったときはファンとしてイオナズンとサンダガを食らったような衝撃を受けましたが、素直に嬉しかったなぁ。
そんな中で職業柄、個人的に注目していたのは入場行進の衣装でした。
美しいファッションを見ることは単純に楽しいし、毎回様々な趣向を凝らして参加してくる各国の衣装はまさに国を代表したアピールの場でもあります。そんな各国の衣装から見えることを考えてみました。
まずひとつは、普段あまり表舞台での露出が多くない国々にとっては「晴れ舞台」的な側面も強いのではないかと。
英領バージン諸島
まず注目したのは、英領バージン諸島の衣装でした。
見よ、このハイブランドのリゾートコレクションのような完成度。
白をベースに鮮やかな色味の柄を散りばめたデザインはクオリティ高いですね。写真に映ってませんが、メンズはエスパドリーユのようなシューズでコーデは完璧です。Rhenique CooperさんとRuth Fraserさんによるデザインとのことですが、アカウントが確認できず残念。凄い才能が眠っていました。
キルギスタン
あとキルギスタンの衣装も良かったですね。
白を基調としたオーバーコートですが、肩や袖口の柄の入れ方が絶妙でのっぺりさせないバランスの良さ。ウィメンズのピンク&グリーンのスカーフも可愛く、花を添えています。
ネットでも指摘されていましたが、左肩には桜と思しき意匠が。キルギスタンだけでなく、多くの国で「日本」を意識したデザインが見られたのも嬉しいことでした。イタリアは絶対日本人が着たらドラえもんになるけど。
エルサルバドル
個人的には一番と言っても良かったのが、エルサルバドル。
黒いジャケットに白いパイピングでビシッと決めつつ、パンツやスカートにはコーヒーの樹花と思われる柄が。このミスマッチな感じにやられましたね。エルサルバドルは中米の太平洋に面した国ですが、そのマリンなイメージを打ち出しつつしっかりコーヒーもアピール。そのバランスが素晴らしい。
しかも、どうやらこの衣装をデザインし仕立てたのは地元のブティックだとか。デザイナーに困っているブランドはすぐそこのオーナーをスカウトだ。いや恐れ入りました。
そしてもうひとつは、民族としてのアイデンティティや歴史を表現したもの。
ケニアの衣装は目にも鮮やか、ファッション的にもモードな感じで素敵でした。
柄だけで見たらマルニとかドリスヴァンノッテンが採用しそうなモダンさ。マントが先住民のマサイ族をイメージさせるものと言われていますが、それを現代的にアップデートさせたという見方も出来ますね。またケニアの方々が着るから色味が映えます。
ウガンダ
アフリカからはもう1カ国、ウガンダも素晴らしかった。
国旗の黒、黄色、赤を採用しつつ、単に国旗の色を使いましたよ、に止まらないデザイン性の高さ。ウィメンズは民族衣装風なテイストを濃く、メンズは白を効果的に使ってモダンに、さらにスカーフのようなアイテムをプラスしたところにセンスを感じました。アフリカらしさもありますしね。
様々な民族的な要素が組み合わさっていて興味を惹いたのは、ROC・ロシアオリンピック委員会。
ROC(ロシアオリンピック委員会)
紅白のセットアップに巻きベルト(日本を意識した?)に、ウィメンズはスカーフを思い思いに巻いてスタイルアップしていました。ロシア女性といえばスカーフを使ったスタイリングがイメージされますが、それを首に巻いたりカチューシャにしたりと自由に使っているところが素敵でしたね。
カザフスタン
そしてネットで話題になったのは、カザフスタンの旗手の2人
特に女性のオルガ・リパコワ選手に注目が集まりました。
衣装はカザフスタンの伝統的なデザインを使ったものだそうですが、地理的にイスラム、アジア、ヨーロッパと様々な文化の影響を受けていることが見て取れるコスチュームでした。イスラムやアジアの王族のようでもあり、ドレスのようにも見える素敵な衣装だったと思います。
フランス
ちなみに個人推しのフランスですが、ラコステが提供。
3色に分かれた選手たちが並んで歩くとトリコロールになるというアイデアでした。集団になると意味が分かるというマスゲーム的な発想は面白かったかなと思います。
日本
そして我らが日本。ニッポンじゃなくてニホンが正しいのか。
提供は紳士服のAOKI。
ひとりひとり採寸して、オーダーメイドで製作したそうです。
その点は大変な作業だったと思いますし、苦労がしのばれます。スポーティな素材にもこだわっているようなので着用感は良かったのかも知れません。
が、晴れ舞台での日本を代表する衣装はこれがベストなんだろうか。僕の周りでも残念ながら高評価の声は聞こえてきません。
良い悪いということではありませんが、別の可能性があったのではないかなと思ってしまいます。正直な感想、前回の東京大会へのオマージュという要素はあるにせよ、見た目がアップデートされていない。
ポイントで金色を取り入れるとか、前回と同じ生地、極力似た生地を現代の仕立てでブラッシュアップするとか、着た人がオリンピックの高揚感を感じられるようなものであって欲しかったなと。選手というより審判員です。欲を言えばですけどね。
どうも日本の国際舞台での衣装は突き抜けないものが多いなぁというのが本音です。sacaiあたりにデザインを依頼する勇気が欲しいところ。受けてもらえるか分からないけど。
さいごに
今やSNSによって、どんなイベントもあっという間に世界に広まってしまう時代。それはオリンピックだけでなく、政治的なものもそうです。範囲を狭めれば個人の発信も同じでしょう。
まず人々が目にするのは、写真や動画であり、ビジュアル。
それで印象が決まってしまうんです。
お洒落、素敵、ダサい、地味、楽しそう、陰険そう…継続して見てくれるかどうかは相手任せなので、最初にマイナスの感想を抱いた場合そこからひっくり返すのは容易ではありません。
国単位で言えば、その国のアイデンティティや自国ブランドをアピールするようなもの、個人で言えばキャラクターやセンスをアピールするものであることが望ましいですよね。どうせ見られるのであれば何かを伝えるべきだし、ポジティブに評価されに行くべきです。
今回で言えば、確実に”カザフスタンを意識した人”は増えたでしょうし「あのお姫様みたいな人の国ね」と記憶してもらうことに成功しました。それだけでも十二分な費用対効果があったわけです。韓国もK-POPをイメージ戦略として上手く利用してますよね。実際世界的にファッション業界での起用が急増しています。
翻って個人でも、多少服にお金が掛かったとしても「素敵な人だった」「個性的なファッションだった」と好印象に残れば安いもんなんです。次に繋がりやすくなる。口でどんなに自分が素敵かを語るより簡単でしょう?見てもらえばいいだけなんだから。
今は、もうそういう時代。
国も、企業も、個人も、もっとファッションを含めた”見た目”を効果的に使って欲しいなと思っていますし、その部分のお手伝いをしていきたいと思っています。
同時に、今は昔のことが掘り起こされて引きずり降ろされることもある怖い時代。僕も”今考えるとダサいんじゃないか”という自分のスタイリング写真を削除しておくことにします。
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リンクの表示がヘンですが、ちゃんと飛びます
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