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ひたすら”消費”されないために、考えてみたこと

最近よく感じることですが、というか以前もちょこっと書きましたが、なんか世の中の色々を見ていて「消費のスピード」が早すぎるなと思うんですよね。特にWEB界隈の話題で。

次々ネタを投下していかないと「ネタ切れ」とか「視聴習慣がつかない」とか言われたりするので自転車操業な感じがあるし。その反面、同じような発信だと「飽きた」と言われる。じゃあどうすりゃいいのよ、という。

TV業界には「一周」という表現があるそうです。
ちょっとピックアップされた芸人やタレントさんが、とりあえずメジャーな番組やジャンルごとの番組に呼ばれる。そのターンが終わる=一周ということになるのだけど、「二周目」に行けるかどうかは一周目の出来次第、というわけです。

その周回のラップタイムが、WEBも相まってすごく速くなっているような気がする。前はもう少し緩やかな走りで良かったのだけど、今はTVとWEBの両方で露出するから、認知されるのも早いけど消費も早い。あっという間に周回しちゃうので、ランナーは心身ともに消耗します。それはインフルエンサーをはじめとして、個人での発信も同じことが言えるでしょう。

主導権はどこにあるのか

ここで思うのは、発信側と受信側においての主導権は、今受信側にあるということ。

以前はメディアや発信する側が絶対的な主導権を握っていて、新しい情報を受信側はありがたく受け取っていた。でも情報が民主化されてきて徐々にその関係が変わっていき、今では主導権を握っている受信側から「少しでも意に背いたら低評価つけるぞ」「少しでも退屈したら登録やめるぞ」という空気すら感じる。結局個人が力を持って発信できるようになったことで、それを支持するかどうかジャッジする側の意識が「支えてやってる」に傾いたり、権限が強くなってきたわけです。

どっちが健全なのかといえば後者なのでしょうけど、それも行き過ぎると不健全だと思うのは自分だけでしょうか。多くの支持を受けている「数字」を示すためにはファンに迎合的にならざるを得ないし、少しでも気に入ってもらうために積極的に消費されにいくしかない。そのスタンスの終着地点でどこなのだろうと。

このことを考えるきっかけになったこと

このことを考えるきっかけになった出来事があります。

以前某百貨店のイベントに店子側として参加していたのですが、あるターゲットに特化した内容のものでした。

十分なネームバリューがある百貨店だっだので”上手く主導してやっていくのだろう”と思っていたのだけど、雲行きが怪しくなっていきます。

いわゆるインフルエンサー的な人に乗っかる・投げる形で宣伝告知や企画が行われたので、全体的なコンセプトがぼやけていく。イベント設立時にあったはずの想いがぼやけていく。それが繰り返された結果、回を重ねるごとに売り上げを落としていき、遂には定期開催が出来ないレベルになってしまった。

開催元に十分な信頼と実績があったのだから、そこが主導してイベントの骨格を作りしっかりコントロールすべきでした。外部の要素はあくまで適材適所で投入すればよかったのに。正直な感想として「ほらやっぱり」と感じてしまって。

発信力のある人に任せた方がいい部分は必ずあるし主催者はラクかもしれないけど、やっぱり大元の熱がダイレクトに伝わらないとダメなんだと思う。まさに”消費されてしまった”事例として、僕の中に問題意識が生まれた出来事でした。

距離感の素晴らしいブランド①

じゃあ消費されない関係ってどんな距離感?というと、僕はスタイリストなのでファッションブランドで挙げてみますが、やはりまずシャネルでしょう。

シャネルはWEB販売を始めるのも、このクラスでは一番遅かった。セールもしません。アウトレットも出しません。他ブランドと比べて顧客とのチャンネルは間違いなく少ないはず。

でも、それがシャネルの権威を保つのに寄与していますよね。本当に欲しい人しか買わない・買えない。手軽さを極力排除することで、積極的な顧客だけが育つようになっている。

ファッション業界も主導権は買い手=消費者に渡っているのですが、それ自体は良いことだと思う。消費者が主体的に考え、買うことが正しいと思うから。そんな中でもシャネルに於いてはブランドが主導権を握り続けているし、それに対する反発は起こりません。圧倒的なブランド力があるからでしょう。

特にカールラガーフェルド というスターデザイナーの権威も大きなものがあったと思いますが、皆がシャネルのコレクションを熱望し、いち早く見たがった。そしてそれに答えて素晴らしいショーを見せ続けた。ここにはお互いのリスペクトが感じられるし、発信をしっかりコントロール出来ていると感じます。

二次流通品でも”値崩れしないのはシャネルだけ”と言われます。それは、これまでの歴史を正しく積み重ねてきていることの証明であり、特別な存在であり続けているのは、”ファンとの適切な距離感”を保ち続けているからでしょう。

距離感の素晴らしいブランド②

これはブランドというより取り組みですが、ユニクロの「+J」は見事だなと思います。

2009年、「JIL SANDER」の創業者であるジル・サンダー女史を引っ張ってきて「+J」を発表したときの衝撃は今でも覚えていますが、あのジルサンダーが首を縦に振るのだから、ということでユニクロの格が上がったことは間違いなかった。

ところが、世界中で行列が出来、初回のコレクションがいまだに話題になっているほどのインパクトがありながら、わずか2年後の2011年にあっさりと終了してしまいます。

その後2014年の再販を経て2020年に待望の復活をしましたが、これも今シーズンの秋冬を持って終了。あっさりしていますよね、今回も。欲しい方は15日に頑張って参戦を。

まだ食べたい、もっと食べたいというところでサッと御膳を下げ、まだ味を覚えている頃合いを測ってリニューアルオープン。みんなすぐに閉店するのを知ってるので結果行列という具合です。

正直、+Jは定番コレクションとして作れば売れ続けると思います。せめてTシャツやワイシャツくらいは残しておけばと思うけど、それもやらない。もちろんジルサンダー女史の意向も大きいと思いますが、ユニクロ側も「数年の一度のお楽しみ」として取っておきたいし、取っておける余裕があるということですね。

下手に定番として売って”消費”されてしまうよりは、さすがジルサンダー、次はいつ発売だろう、というリスペクトやワクワク感を大事にしようという思いが見えてきます。それを大量に消費されることがキモのユニクロがやってることがポイントでしょうね。

ユニクロは大衆のブランドですが、一般の声も聞きつつ、この+J含めしっかりブランド側が色々な提案をし、舵取りをしている。

大ヒットした”マメクロゴウチ”のウィメンズインナーシリーズもそうです。マメクロゴウチも日本の次代を担うブランドとして業界では注目されてきましたが、そこに目を付けたのは女性チームだったそうです。その辺がひらがな四文字の競合とは違うところかなと。

ファストファッション、プチプラというと安く、早く、というイメージがありますが、ユニクロが一歩も二歩も先を行っているのは、ユーザーにおもねるだけでなくちゃんと”主導権”を握っているからだと思います。

主導権を握るためには

じゃあどうやってそのポジションに収まるか、ということだと思いますが、これはもう「ブレない発信」「先んじた提案」「しっかりしたビジュアル」これしかない。

個人でも会社でも同じだと思ってるのですが、やはり発信内容が迷ったり右往左往していると周りの人や付いてくる人も迷ってしまいます。微妙な方向性や切り口は時代によって変えたほうがいいけど、芯はブレてはいけない。ブレないことが固定のファンを生みます。

一歩先に提案することも大事。
最近は意見を拾って具現化することも多いですよね。みんなの意見を反映しましたというのは一体感があるし、みんなが欲しいものを作れば安全だからいい部分ももちろんある。けど、それに安定してパワーバランスが曖昧になってしまっている例も見受けられます。やはり提供側が要望に先んじて提案する、発信のペースを作るというスタンスは大事でしょう。

そして、それらを統合するビジュアル。
結局はビジュアルでの説得力なんです。いくら良いこと言っててもビジュアルが整ってなかったり分かりにくかったりすることで伝わらなかったり、聞いてもらえなかったりするケースはいくらでもある。一発目の印象がダサかったら払拭するまでに相当時間が掛かるし、逆にポジティブな印象だったらスムーズに話が進みます。特に今はSNSだったりで先に”見られている”ので、印象は大事です。

ビジュアルについては、個人レベルではもう待った無しで取り組まなきゃいけないと思うのだけど、まだまだ腰が重い人も多いんですよね。ビジネス設計やサービス内容の方が大事だと考えているのか。もちろん大事だけど、まず自分がそれを体現する存在でなければ。

ちなみにビジュアルというと個人の美醜というイメージがありますが、実はポイントはそこではない。ファッション含めた見せ方・印象というのはそこと関係なく作れるものなんです。

いわゆる清潔感や信頼感、デキる人感というのはスタイリング次第でどうにでもなる。そして仕事で大事なのはむしろそっちだったりする。”自分のポテンシャルが高くないから素敵になれない”というのは間違った思い込みに過ぎません。

ブレなさと提案力があって、ビジュアルにも説得力があればしっかり主導権を握りながら物事を進めていくことが出来る。特に営業職や講師には必須の要素でしょう。そして企業も全体としてそういう人が増えればプラスしかない。中身がしっかりしている人ほど、外見にも力を入れるべきだと思います。その辺りはスタイリストとしても、講師やアドバイザーとしても力を入れて伝えているところです。

さいごに

発信側も受信側、正しい関係としては、お互い「ありがとうございます」というリスペクトを持っている間柄でしょう。

どちらかが一方的に押し付けたり意見を通させたりするのではなく、お互いの存在を尊重し、意見も尊重し合っていることがベースとしてある関係性。

例えばYouTuberも玉石混交ですが、問題を起こさず、炎上しないでも人気を保っている人も居ます。無理なファン化や献金を要求しないし、ファンが暴走しないようにちゃんとコントロールしている。ファンも節度を保って楽しんでいる。本気で、ブレずにやろうと思えば出来るんだと思います。

素敵な、楽しい発信をありがとう。
いつも応援してくれてありがとう。

そういうのを言い合える関係である以上は炎上したりもしないし、平和な空間が保たれるはず。

これってパートナーとか夫婦間でも大事なことですよね。数々の反省から肝に命じていることです。。

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オーダーメイドスタイリスト 神崎裕介

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