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「生きるための話題作り」、もうやめない?

もう9月が近付いてきましたが、まだまだYouTube界隈の話題が熱い感じですね。某メンタリストさんと元雨上がり決死隊の宮迫さんの話ですが。

どちらも散々評論が出ているので内容には深く触れませんけども、メンタリストさんなのにみんなの反応は予測できないのね、ということと2年現場を離れているとやっぱり感覚は錆びるんだね、というのがざっくりした感想です。やっぱりリアルな肌感と現場第一だなと思いましたです、はい。

どちらも根本として

「話題を作らないと生きていけない」
「そのためには逆張りや賛否両論こそ絶好のエサ」

という部分があると思うのですが、最近どの業界でもそれが過ぎるように感じるんですよね。炎上が銭になるという根本的な問題もあるんだけれど。

ファッションやビューティー業界でも、そんな焦燥感に駆られて無駄な炎上を起こしたりしています。

どこまでそういった部分を意識したのかは分かりませんが、何割か「これは良くも悪くも話題になるだろう」という部分はあったのではないかと。

ポジティブな支援の拡散に加えて、ネガティブな「ちょっとこれどーよ?」という拡散も見込めるわけですから、賛否両論になるようなテーマにした方が「おいしい」というのは分かります。新しく知ってもらえる、興味を持ってもらえる可能性が広がるわけですから。

ですが、その行く末がどうなるのかということですよね。

極論で人気になった人や過激なテーマのブランドは支持者も更にそこを求めていくわけで、そのルートに乗ったが最後、商売のために賛否両論をやり続けないといけなくなる。結果、どこかで行き詰まって反社会的なスタンスになったり周囲の信頼を失うようなことになってしまう、ということは先人たちが反面教師として示してくれています。

ファッション業界の話題づくり

今は明るい話題が少ないからと、ファッションブランドも色々な話題作りをしています。あの人、あのブランドとのコラボ、インフルエンサー(自称含む)を起用したり個人で立ち上げるブランドも雨後の筍のように乱立している状況。新商品や新ラインも話題になること優先が否めません。

僕が関わっていたとあるファッション企業も、お客様とのコミュニケーションを深めることよりSNSで話題になることやうわべの美しさを追求し出したのできっぱり離れました。それだけ注目が集まるということに魔力があるんだなと思いましたけども。

もちろん、話題にならないとビジネスにはなりません。知ってもらわないと先がありません。じゃあ常にセンセーショナルな話題を提供し続けないといけないのか?多大なギャランティーを払って露出し続けないといけないのか?というと、決してそうではないと思います。

ひとつの方向性:究極の定番を作る

以前から個人的に”アパレルとして一番良いやり方は、人気の定番商品を長く売っていくこと”だと言ってきました。それはセレクトショップでの実体験に基づくことで。やっぱり毎シーズン新しいブランドを探したり、出来の良し悪しに左右されることが大変なわけです。だから「究極の定番」があれば、売る方も仕入れる方もラクなのにな、と。

それを最初からやっているのがジェームスパースです。

アメリカ西海岸発のハイカジュアルブランドとして日本でも人気ですが、シャツやTシャツは定番品としてずっと販売されていて、基本的に定番品はセールになりません。それで価値が保たれている。買う方としても不公平感はないですよね。

もちろん新作も出ますが、定番品を愛し、買い換える・買い足す人たちに支えられているブランドと言えるのではないでしょうか。ブランドのアイデンティティーとなるアイテムに自信があるから、その良さを時代に合わせて伝えていけば良いわけです。話題性のためだけににお金を投じる必要はありません。

ドメスティックで言えばsacaiもその傾向がありますね。

少しずつ定番を裏切りながら前に進んでいきたい、と阿部デザイナーはおっしゃっていますが、sacaiも毎シーズン”らしい”アイテムを望む、創業時からの熱心なファンに支えられています。その熱量は本当に高く、業界にもファンが多いことからゴルチエやディオールとのコラボといったオファーが向こうから来る。それがまたファンを熱狂させ、自然発生的な話題が新たなファンを作るという理想的な展開と言えるのではないでしょうか。

もうひとつの方向性:ボッテガヴェネタのスタンス

なんと、ボッテガは現代の生命線とも言えるSNSアカウントを皆閉鎖してしまいました。インスタもTwitterも何もかも。代わって立ち上げたのが、Issuedというビジュアルブックです。

コレクションの発表に合わせて内容は刷新されるそうですが、これは意図的にバズるとか話題作りのためだけに動くということを拒否する、という意思表示でしょう。

ブランドの説明では

「ペースの速いデジタル社会に一石を投じること、消費文化がよりゆっくりとしたペースになることを願っています。それは何にも邪魔されずにゆったりと座って映画を観るような、没頭するような感覚です」ーhttps://www.pen-online.jp/news/fashion/bottegavenetaissue/1 より

とあります。まさに話題が打ち上がっては消費されて次を求められるという繰り返しに疑問を呈し一石を投じたわけですが、それをボッテガのような大ブランドが実行に移したという事実は重いですよね。今SNSを止めるという決断は中々出来るものではないでしょうから。

ここにも、ブランドを愛してくれている顧客の方に向き直すという要素が感じられます。SNSはマス向けであって、顧客を育成したり上顧客との絆を結ぶことに寄与していないという判断なのでしょう。強い言い方をすれば「本当にボッテガが好きな人だけ集まって」ということになるかなと思う。

個人も例外じゃない

これは、個人にも当てはまることだと僕は考えています。

話題作りのためにあえて目立つことをしたりビジュアルで注目を引こうとしたり、発信内容を過激にしたり、それが苦もなく続けられるならいいですが、毎日毎週それを続けるのってストレスじゃないでしょうか?

そういうスタンスに、正直疲れを感じている人も多いでしょう。見せ方も、話題性のためもっと多くのいいねを獲得するためだけにコーディネートを考えるのはすぐに限界が来ると思う。本職の僕だって大変ですもん。

だからこそ、その人の「究極の定番」、ブレない、根幹になる部分のブランディングが大事なんじゃないかと。

話題性で勝負するより、深い信頼関係や共感で繋がる関係性。Twitterでバズっても大してフォロワーが増えないのと同じで、ちゃんと自分を知ってもらって共感してもらえないとファンにはなってもらえません。話題性で動く人はまた別の話題が盛り上がったらそっちに行く。そういう属性じゃない人と特別な関係を結ぶことが必要です。

ファッションで言えば、しっかりその人を表現できるスタイルを発信すること。見栄えやトレンドも大事ですが、それより自分がやりたいことや方向性と一致しているか、説得力があるかどうかの方が重要だと思う。

この人はこういうスタンスの人だ、見た目からも納得、と思ってもらえれば共感する人が勝手に集まってくるし、SNSをビジネスで運用していればオファーにも繋がります。なによりベースになるスタイルを変えなくていいから自分がラク。

一番大事なポイントは、そこをしっかり作っておくと過去から現在への流れに筋が通って、全てが資産になるということ。過去のことであっても再利用できる。逆にその時々でブレていると過去と現在が断絶してしまうので、混乱回避のためむしろ削除した方がいいということになるでしょう。

どうせなら連続性があった方がいいし、変化があったとしても理屈が通っていた方がいい。ブレない人は信用される。僕もこだわりの強さがポジティブに働いて、少なからず恩恵に預かっているように思います。

量より質、の時代

結局、一時的にリアクションが増えてもそれが続かない、継続的な関係に繋がらないということが分かってきて、そこに労力を割くのがバカらしいという感覚になってきていませんか。

でもそれをやり続けるしかないからやる、というのは無駄な努力になる可能性が高い。SEOだってあれこれ仕掛けをしていた時代を経て、最終的には良コンテンツを発信するしかないという根本に戻ってきています。

企業も個人も、根幹の部分をしっかり伝えてブランディングしていく。ファッションや見せ方も根幹の部分からブレないようにする。これしかないと思う。

センセーショナルなタイトルや内容より、普遍的なものを現代的に解釈したものの方が長く評価されます。ビジュアルだってそうです。

本当に伝えたいことは何か?知ってほしいことは何か?受け取ってほしいイメージは何か?

これを改めて考えてみる必要があるんじゃないでしょうか。あれもこれも、ではなく、濃く深く、の方が誰かにしっかり響くはずです。

僕もセンセーショナルなタイトルにしようと思えば「〇〇診断系が一切不要な理由」とか「絶対買っちゃダメな通販サイトベスト3」とか書けますが、それ以上に過激になったら業界を敵に回しそうなのでやめておくことにします。。

ちなみに、根幹のブランディングにはnoteは適しているような気がするんですが、ファッションブランドやショップでしっかり運営しているところは少ないようです。勿体ないなぁと思いますけどね。

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オーダーメイドスタイリスト 神崎裕介

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