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資料(Esoteric & punk)

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主に(ポスト)パンク、ヨーロッパ的秘教音楽。忍冬資料室 https://atochietebura.com/DATA/esotericindex.html の転載。
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記事一覧

5/25(土) あなたの聴かない世界特別編に向けてのメモ③The Partridge Family Templeとアンポップ

5/25(土) あなたの聴かない世界特別編に向けてのメモ③The Partridge Family Templeとアンポップ

 アンディ・ウォーホルは、大衆的なモノがノスタルジア(たとえばウォーホルが大量生産したマリリン・モンローのポートレートには、彼女に「失われた」という価値を与えた)を介して神話性を帯びることをポップアートとして裏付けた。この原理はフラワームーヴメントへの反発を推力にしたラヴェイのそれと共通する部分があり、両者は潜在意識に入り込む米国式消費主義=ポップで合流する。ラヴェイがテレビや映画に出演することで

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5/25(土) あなたの聴かない世界特別編に向けてのメモ②米英サタニック・パニック

5/25(土) あなたの聴かない世界特別編に向けてのメモ②米英サタニック・パニック

カルト宗教組織による犯罪の目撃者や捜査にあたった人物らの証言を下敷きに書かれたラリー・カハナー『Cults That Kill』(1988)や、モーリー・テリー『The Ultimate Evil』(1989)は、全米にカルトの恐ろしさを植え付けた。その結果、反動的にメディア上で異教の拒絶≒キリスト教が補強されていく。それはアントン・ラヴェイが記したように、アイデンティティの担保としての悪魔が必要

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5/25(土) あなたの聴かない世界特別編に向けてのメモ①

5/25(土) あなたの聴かない世界特別編に向けてのメモ①

5/25土曜日、大久保BUENAにて開かれる「あなたの聴かない世界」特別編に登壇します。テーマは西海岸フリンジカルチャー≒同地発祥のカウンターカルチャー(フラワームーヴメントなど)の反動。主なトピックはボイド・ライスと欧インダストリアル~ネオフォークの交誼や、ボイドが本物すなわち獣と讃えたアントン・ラヴェイとタイニー・ティム、さらにサムの息子事件や英サタニック・パニックの、これまた反動として表出し

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憑在論と幻想文学 永井荷風からあがた森魚まで(ラフ)

憑在論と幻想文学 永井荷風からあがた森魚まで(ラフ)

『FEECO』Vol.5 (2月発売予定)には昨年の研究の進捗を報告するページがあり、そこではパストラル憑在論の日本版について思索している。単に思いついたことを書いているだけといえばそうなのだが、先出し的にこちらにも書いておく。一つの文章としてはまだ完成させていないので、あらかじめそのつもりで。「パストラル憑在論」などの語はこちらの記事を事前に読んでいただければ。

パストラル憑在論の源泉の一つが

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憑在論と幻想文学 アーサー・マッケン篇

憑在論と幻想文学 アーサー・マッケン篇


まえがき何度も当note/当資料室内で述べてきたことだが、日本の憑在論と音楽の接続は、ほぼすべてマーク・フィッシャーと彼がウォーリック大学在籍時代に所属したサイバネティック文化研究ユニット経由の資本主義リアリズムが入り口になっている。それは(生活圏内に大学、クラブ、程度の差はあれど文化的な施設があるような)都市生活者のサイクルが孕む矛盾を呪い、反面その永劫的な再生産から抜け出せないという前提を受

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英国幻想弾語事始 :デスディスク

英国幻想弾語事始 :デスディスク

上ページの転載です。

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 Fairport Conventionのフィドル奏者デイヴ・スウォーブリックは、1975年に出版された『The Electric Muse: The Story of Folk Into Rock』の中で自分たちのフォーク・ロックという様式、その特色である電気によって増幅された音の魅力を説明している。

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エルフの子供たち~サイケデリックとJ.R.R.トールキン

エルフの子供たち~サイケデリックとJ.R.R.トールキン

『ユリイカ』2023年11月臨時増刊号「総特集=J.R.R.トールキン」購入に伴い、同誌1992年7月号のトールキン特集号を棚から引っ張り出して併読している。前者は今日ならではの視点(木澤佐登志『トールキンを読むシリコンバレー』、井辻朱美『ファンタジーの祖型はなぜトールキンなのか』など)もあるが、新しい視点が得られるというよりは、見え方が変わるといった方が正しいか。古典だけに時代が持つモラルの変化

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2023年6月報告

2023年6月報告

当マガジンに収録できるものは更新できず。しばらくビデオゲームの方に行ってしまっているので、ここはご了承願いたい。

『FEECO』バックナンバーを紹介する動画をアップロードした。それぞれJGサールウェル(Foetus, Steroid Maximus, Xordox etc.)インタビューを収録した「サウンドトラック」issueと、憑在論をテーマにした『MUSIC + GHOST』についての動画。

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2023年5月報告

2023年5月報告

まだ2日残っていますが、先に報告しておくと今月は何かと芳しくなかった。まずnoteの使い方が迷走というか、当マガジンに関する内容だけを投稿するつもりが、このように活動全体の報告になってしまっている。執筆時の名前をプロフィールなどに載せていないのは、私生活の事情が主なのだが、正直こんな風に投稿していたり他のサービスを使っている以上は無意味な工夫であった。どこで何を公開し、シェアすべきか。いや、一番い

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2023年4月更新報告

2023年4月更新報告

今月は駄目でしたね。幻想弾語(フォーク、フォークロック、フリーフォークetc)を追う記事が1本だけ。それと2017年のスティーヴン・ステイプルトンインタビューくらいでしょうか。

このマガジンとはあまり関係がありませんが、個人の活動歴をしたためた冊子を作ったので、そちらもご参照ください。

2023年3月更新報告

2023年3月更新報告

あまり発表できていない気がする。来月からはしばらくビデオゲームばっかり書くことになりそう。

J.R.R.トールキンの60年代再評価とサイケデリック・ロックの繋がり

ブリティッシュ・フォークからフリーフォークまで、各現象の音楽・文学的背景を調べる連続シリーズ。

過去記事はすべて上に移動済。

2023年2月更新報告

2023年2月更新報告

Death In Juneのニューアルバムが突如発表されたというので確認してみたら、なんと過去の曲をシンセウェイヴ化させたものだったので呆気にとられた…

WEBにもあるけど、NWW記事はnoteにもアップしているからそちらを。

ビデオゲームは遊ぶのにやっとで考えがなかなかまとまりません。

2023年1月更新報告

2023年1月更新報告

2000年代フォーク・リバイバルの陰陽 『Not Alone』と『Looking For Europe』COILのリイシュー音源(2020年~)を知る、聴く、探る

パストラル憑在論 Andrew ChalkとRobert Haighについて

パストラル憑在論 Andrew ChalkとRobert Haighについて

 『MUSIC + GHOST』で主に取り上げた英国のGhost Box Recordsは、本国の音楽ジャーナリズム内で憑在論(hauntology)の実例とみなされている。マーク・フィッシャーやサイモン・レイノルズが指摘した、失われた未来を幻視する方法論としてのサンプリング、過去を現在に召喚することへの執着という共通項で、Ghost BoxはBurialなどの作家と同じカテゴリに入れられていた。

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