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9 SHISHAMOの新曲と6つ分類について

SHISHAMOの新曲がYoutubeにUPされた。結構気に入ったのでヘビロテしている。

SHISHAMOの楽曲の分類について

SHISHAMOのミュージシャン活動はもう7年。7枚のアルバムをリリースし、楽曲も多くなってきた。ファーストアルバムの頃から聴いているが、ある程度傾向が見えてきた。分類を試みた結果、大体6種類くらいの分類において、傾向が見えやすくある程度の精度が確保されることとなった。
 もちろんこの分類はやや荒くどれにも該当しない曲や、複数にカテゴライズされる曲もあるが、この合成ベクトルをとると、SHISHAMOの方向性に近くなるようなものを割と的確に押さえていると思う。

1.好き好き!型
 スタンダール的にいうと、感嘆から第一の結晶作用における心情の描写。恋愛の発生時のときめきや高まりを描写したもの。ストレートな歌詞をキャッチーなメロディーに乗せているので、ここから入門する人が多い。
例:第3ボタン、君と夏フェス、君とゲレンデ、デートプラン、フェイバリットボーイ、恋に落ちる音が聞こえたら、僕に彼女ができたんだ(吉川作詞)、バンドマン

*「恋に落ちる音が聞こえたら」は第一の結晶作用における「確信」にあたる。


2.ひっちゃかめっちゃか型
 第二の結晶作用と、その前の「疑惑」の表現。一人で悩んだり、嫌われちゃったかな、本当はあの子が好きなんでしょう?という曲。このようなテーマは種々のミュージシャンが歌ってきたが、かっこよく、もしくはかわいくデフォルメされているケースが多く、SHISHAMOは対照的に素直な表現に感情移入しやすく共感を呼んでいる。長いファンほどここが好きな印象。

例:二酸化炭素、笑顔のとなり(嫌いだと言われて目が覚め、確信する部分は明らかに第二の結晶作用)、恋する(希望と絶望の振動は第二の結晶作用と扱っていいだろう)。


3.ごめんね、恋心型
 SHISHAMOは失恋の曲が多く、そういう歌を歌う人としてメディアに露出しインタビューを受けていることもあった。確かに失恋の曲は各アルバムに1曲以上入っている。葛藤や自己否定の描写が特に秀逸だと思う。これも長いファンが好き。

例:花、夏の恋人、ごめんね恋心、さよならの季節、あの子のバラード、夢で逢う
*なお、自己否定が終わり吹っ切れフェーズに入ると、BYE BYE、忘れてやるもんか となる。


4.君とのこと型
 SHISHAMOは「心変わり」の描写を頻繁に表現していて浮気の話、ゲスい話、すなわち報われない話と相手の言い訳の話など。両性それぞれの目線の曲があり、上手に描き分けていると思う。SHISHAMOの個性はここにあると思うので、あえて失恋とは違う分類をしている。過度な美化も卑下もせず、あえて詞的でない(等身大の)詞が現実味をもって語り掛けてくる。ハマるきっかけはここだと思う。

例:こんな僕そんな君、君とのこと、女ごころ、彼女の日曜日、僕、実は(吉川作詞)、恋愛休暇(この曲のピッキングの音はわざと入れているのだろうか)


5.卒業制作型
 エッセイに近い作品で、宮崎朝子の感性の中でもノスタルジック、メルヘンなどの要素が叙述されている印象。アルバム「卒業制作」中の作品の多くはそのような形態であることから卒業制作型とした。

例:サブギターの歌、キスをちょうだい、手のひらの宇宙、中庭の少女たち、音楽室は秘密基地、旅帰り、お菓子作り、タオル


6.生きるガール型
 ヒットした「明日も」をはじめとして、強く生きること、自立することに関してよく歌っている。「あなたについていきたい」とか絶対に言わない彼女の恋愛観とも通じていて、あくまでも対等。そのために強くなる。負けない。辛いことがあっても負けない。恋愛に溺れない。
 僕自身は男性だが、生きるガール型の曲がとても好きでよく聴く。ちなみに生きるガールは、僕がはじめて行ったSHISHAMOのライブ、鹿児島公演で初披露された。

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今日も笑わなきゃ。無理してでも笑わなきゃ。


自身に言い聞かせるような強い歌詞は、ベースにある強さと、失恋ごときでは負けない自立心、本気で凹むけど絶対に負けない、芯の強さを感じさせ、それは励ましでもあり宣言でもある。
 彼女が悩み、落ち込み、それでも必死に強がり、笑顔で歌う姿に僕は心打たれるし励起される。
例:みんなのうた、魔法のように、ほら、笑ってる、明日も、明日はない。

*OH!は違う気がしている。

新曲「明日はない」とヒット曲「明日も」

 僕が「生きるガール型」が大好きなのはわかっていただけたと思う。その中でも「明日も」はドコモのCMに起用されたこともあり、かなり露出があった。

「明日も」には一度も疑問形の歌詞は出てこないが、一見ポジティブに見える歌詞には「カラ元気」的な、言い聞かせるような励ましに聞こえ、明らかに葛藤を孕んでいる。新曲の「明日はない」はこの曲に対するアンサーなのだろうか。

周りとバランスをとって金曜日までは頑張る「明日も」に対して「どいつもこいつも腹立つな。言えない自分も腹立つな。」から始まる歌詞からは「もうお前らとは合わせねえ」という決意めいた、そして「もう自立しきった」という宣言めいたメッセージを受け取り、面食らった。その後の歌詞も宣言文のように淡々と続き、そして

「つまんない恋はしない。死にたくなるような恋がしたい」

極めつけは

「つらいときに前を向いたりもしない」

絶望も飼いならし、完全に自己を確立した強さ、そのうえで、本気のやつだけかかってこいという気迫を感じる。

死にたくならなきゃ恋じゃない。つらいときに前を向いたりもしない。
俺は一生この曲を聴き続ける。

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*番外篇

SHISHAMOはミュージシャンであると同時にエンターテイナーでもあり、セットリスト構成が面白い。アルバムツアーなのに1曲目に新曲を持ってくることをはじめとして、ファンを上手に驚かせ、喜ばせる。興味がある人はライブに足を運ぶことをお勧めする。


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