発表を終えて

昨日,日本言語学会のWSで発表をしてきました。

東京外大の風間先生にお声かけをいただき,風間先生・伊藤英人先生と共に「日本諸語の形成に関する総合的アプローチ ―大陸倭語・八丈型基層語・アクセントの分布と機能の 3 つの観点から―」というWSをしました。私は「アクセントの分布と機能からみた日本諸語の歴史」として発表しましたが,新しいことはなく,なんか自分のアクセント史研究のまとめ,みたいになってしまいました。

さて,久々のnote。今日はその中身の話ではありません。実は,FaceBookの方で,学生時代から私のことをご存知の先生に「格段に発表が上手になった」とお褒めをいただきまして,その話です。まぁ,見る人が見ると,「あれで上手になったっていうなら,学生時代はどんだけ酷かったんや」と思われるのかもしれません。実際,その先生にも「最後はぐちゃぐちゃしてた」と言われてしまいましたので,「めちゃうまい」ということはきっとないですし,自分でもその辺は自覚しています。

発表が下手なことは,ずっと自分でも自覚をしていて,でも,どうすれば良いのか,なかなか分からなかったのが,学生時代でした。誰も教えてくれないし。今思えば,自分でそういう本とかをちゃんと読めばよかったんでしょうけれど,そういうのを読むようになったのは,実は教員になってからです。

発表の仕方,プレゼンの仕方,っていうのを意識するようになったのいつくらいからか,よく覚えていませんが,刺激を与えてくださった存在というのがあったのが,一番だったと思います。

九大に学振の研究員でいた頃,まず,下地理則さんに出逢います。彼はご存知の通り,非常に分かりやすい発表の仕方をするし,それをちゃんと学生にも指導できるスキルを持っていらっしゃいます。下地さんの授業に出たりしているうちに,こうすればいいのか,というのを肌身で感じることができたのは大きかったと思います。

同じ時期から東京で就職した頃,今は国語研にいらっしゃる五十嵐陽介さんと九州諸方言の調査を集中的にしていました。五十嵐さんも,ご存知の通り,発表が分かりやすく,何より色んなことを突き詰めて,論理的・客観的に示す,ということに,非常にシビアです。共同で発表したり,共著で論文を書いたりすることが,この時期にはあったのですが,そこでだいぶ勉強をしました。

そして,この時期だったか,もっと後だったか分からないですが,青井隼人さんとの出会いも大きかったと思います。やはり,青井さんはご発表・ご論文とも極めて分かりやすく,そして,下地さん同様に,その辺りを人に伝えられるスキルを持っていらっしゃいます。分野も近く,彼の発表を何度となく聞く機会がありましたが,私にとっては身近な見本,目標でした。

きっと,上に挙げた御三方以外にも私に影響を与えてくださった人はいて,「学生の頃よりも格段に上手になった」と言ってもらえるようになったのは,そうした色んな人たちのおかげだと思うのです。

今こんなことを書いているのは,この歳になっても,成長できた,と思えることは嬉しいことだな,という思いと,色んな仕事に追われている状況からの逃避みたいな気持ちからですが,「格段に上手になった」とおっしゃってくださった先生のように,私のあれこれをたまにでも見てくださっている方がいるんだと思うと,仕事に忙殺されて,荒んだ心も,少し潤った気がします。

一方で,学生時代からプレゼンの仕方・論文の書き方をきっちりみっちり指導してもらっている学生さんたち,もうそれが一人前にできるようになっている学生さんたちを見ると,羨ましく感じたりもします。そして,学生時代の自分が,そうしたスキルのみならず,研究って何かってことを,何にも知らずにやっていたことを恐ろしく思うと同時に,よくそれでここまで生きてこられたと不思議に思います。

何か強烈な運に守られた,としか思えない。と言うと,また何処かから槍が飛んできそうですが。