新年度

新年度となりましたので,抱負というか,計画のようなものを。

【研究】
基本的には,これまでの延長としてやっていきます。いくつかの研究が複線的に走ります。

1:科研費プロジェクト
「日本語比較音韻論研究の新展開:東国系諸方言の調査研究から」(若手研究,2021-24)

 新規の科研費課題ですが,私の研究全体の中では,出雲の話からのつづきものです。「新展開」とかうたってますが,手法とかについて新しいことはありません。各方言の音韻論をちゃんと記述して,厳密に比較方法を用いる。ただそれだけの科研ですが,初年度である2021年度は,文献資料を用いた上代東国方言の研究を中心に行います。既にいくつかの先行研究がありますが,それらを批判的に再検討していきます。

2:公益財団法人 シキシマ学術・文化振興財団 研究助成
「愛知県尾張木曽川方言と東三河新城方言の文法記述のための基礎的研究」(単年度)

 学内の研究費担当の事務から推薦を受けて応募したところ,採択をされたものです。木曽川方言については,既にある文法概説から総合的記述に発展させていくための調査をし,記述の積み重ねがない新城方言については,まずは文法概説を書くための最低限必要になるデータを集める,というのを目的にしています。オンライン調査をすることを前提に応募したもので,学生を巻き込んでの勉強会もしています。

3:東京外国語大学AA研 共同利用・共同研究課題
「日琉語族内的声調類型論の再構築」(2021-23,代表:青井隼人氏)

 青井さんが代表となって進めるプロジェクトで,日本語の「アクセント」を,類型論的観点から,特に,バンツー諸語のtoneの分析に用いられるrestricted tone system(Hyman 2006)の枠組みという観点から,見直すというものです。restricted toneの枠組みで日本語のアクセントを分析した海外の研究について,かつて,書評を書いたことがあったということもあり,お誘いいただきました。既に勉強会も始まっていて,毎回,議論が白熱して,楽しんでいます。

4:科研費プロジェクト
「日琉諸語の有標主格性に関する基礎的研究」(2019-22,代表:下地理則氏)

 下地さんが代表となって進めていらっしゃるプロジェクト,3年目です。2の木曽川方言の記述とも絡めて,そろそろこのテーマで1本,論文なり何なりを成果としてあげたいと思っています。とりあえず,木曽川方言で,主語が主題化される場合と,目的語が主題化された場合とで,トピックマーカーの現れに差がありそうだ,という見通しがあるので,その観点から調査研究を少し深くやってみようと思っています。また,出雲の対格の話も,少しつめて,論文化したいと思っています。

5:学内研究費でのプロジェクト
「島根県仁多郡奥出雲町仁多方言の文法概説作成のための調査研究」(単年度,申請中)

 そろそろ,この方言の文法概説を,ということで,オンライン調査を主体としたプロジェクトで学内の研究費に申請中です。情けないことに,体系的に調査ができていないところが多いので,そこをきっちりやります。

その他,国語研のプロジェクトや,分担に当てられた科研などもありますが,前者はともかく,後者はどうなるかわからないので,ここでは言及しません。

【教育】
 今年度,まず,ゼミは4年生1名と,3年生4名。4年生1名の卒論は既に見通しが立っているので,ゼミでの指導をベースにして,着実に進めていけば大丈夫だろうと思っています。3年生については,大事にやっていこうと思います。まずは,言語学的に議論することになれる,というところから入るつもりです。
 講義科目は,100分*14回になったことを受けて,基本的に全て1から組み直しています。「毎年同じだから」っていうレベルには,なかなかいかないですね。春休み中に,例年と比べれば準備ができていると思うので,こちらも一回一回の授業を大切にやっていきます。
 また,大学院の担当も新たにやることになりました。学部と大学院の連携も視野に入れて,こちらも頑張っていきます。

【その他】
学会仕事は,ここ6年くらい続けているものを,また続けるのと,某学会の某委員長としての仕事をやっていく必要があります。
  下地さんや小西さんたちとやっているCOVID-19の影響下における方言研究の各種サポートについても続けていくつもりです。


さて,抱負でもなんでもなくて,とにかく,今年やるべきことを羅列しただけになってしまいましたが,なるべく計画的に,余裕を持ってやっていきたいと思っています。やることはたくさんですが,しっかりやります。