鳥獣戯画ノリ
「このクラブでのノリ方を教えてやるよ」
上京して1か月。
初めてのクラブで浮き足立っていた俺を見かねてか、1人の男が声をかけてきた。
少しでも早く都会に溶け込みたい俺は、その男に教えを乞うことにした。
「このクラブではまず、足を開いたまましゃがんで、床に手をつく。これが蛙のポーズ。その後は両手を耳みたいに頭に当ててジャンプする。これが兎のポーズ。この2つをリズムに合わせて繰り返す。あ、跳ぶとき、ピョーンって叫ぶのも忘れずにな」
なかなか奇妙なノリだがこういうものなのだろうか。
「これを『鳥獣戯画ノリ』って言うんだ。蛙と兎だからな。いいか、最初の跳躍は特に素早くド派手にな!じゃあな!」
そして緊張の1曲目。
俺は、音が鳴り始めると同時に素早くしゃがみ、そして跳んだ。
「ぴょーーーーん!!!」
次の瞬間、俺は地に足ついた都会人どもの頭を見下ろしていた。
やられた。
俺は着地と同時に出口へと駆け出した。
井の中の蛙、逃げ出すこと脱兎の如し。
(410字) お題:「鳥獣戯画ノリ」
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