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2020年製作の作品を作る

新型コロナウイルスが収束した後、どういう動きになるのかよくわかりません。でも、今こそ何かを作っておきたいとも思っています。具体的には年内に短編映画を作って残しておくつもりです。2020年の作品、という事が大事なんです。これは作っておかなければダメなんじゃないかと、自分に言い聞かせてもいます。東日本大震災の時もそれを強く思い、『663114』というアニメーション作品を作りました。

そしていま作る作品は、いま起きていることの「真実の姿」を探求して描かなくても良くて、その時代に生きていた市井の人間が、何を感じて、どう表現したのかを残す事でいいんだと思います。ジャンルは問わず、映像でも文章でも音楽でも。

ペストが流行した時、スペイン風邪が流行した時、やはりそれはその頃のアートにも残されています。それをいま見たり読んだりすることで、当時の人々の恐怖がリアルに伝わってきます。そういう痕跡として、作品を残しておきたいなと思っています。美術館に飾られるアートとしてというよりも、遺跡から発掘される茶碗のカケラみたいなイメージでしょうか。

一方で、今回の新型コロナウイルスに関しては、作品作りがちょっと難しいなとも思っています。東日本大震災の時は、アジアの日本の東日本で起きた大災害だったので、まさに自分の出来事として作品を残しました。そして、その作品を見る海外の人々は、自分たちの国から遠い日本で起きた大災害を表現した作品から、その作品で描かれた表現の普遍的な部分を理解し、共感してくれました。

何と言うか、観客よりも作り手の方が圧が強かったと感じと言いますか。「私たちはこんな大変な状況になりました。そして、その中でこの作品を作りました。」という圧が強く出ました。無理に圧を強くしたんじゃなくて、相対的に圧が大きくなってしまったんでしょうけどね。

やはり、その問題の当事者が作った作品というのは、必然的に圧が強くなる気がするんです。シリアの映画監督が作る難民問題の映画。韓国の映画監督が作る南北問題の映画。イランで軟禁されている映画監督の映画。などなど。

でも、新型コロナウイルスは、ほぼ世界同時に広がりました。そして、ほぼ全世界の人が当事者になりました。そして、直面しているのは全世界共通のウイルスです。作り手と観客のギャップが無くなってしまってるんですよね。

そうなると、新型コロナウイルスに直面したことは、全世界の人にとって特殊なことでは無い気がするんです。当事者に取っては前代未聞の出来事だからと、特殊性を強く押し出した作品を作ったつもりでも、みんなが直面している事だから、特殊じゃないんですね。だから「2020年の冬に新型コロナウイルスってウイルスが、日本を襲ったんですよ。」という語り方が出来ません。全世界の人のスタートラインが同じなんです。

そして、間違いなく、新型コロナウイルス関連の同じ様な作品が大量に作られるはずです。そこに飛び込んでいくのは怖いですね。カタチの違う、同じ味のクッキーになってしまう気がしまして。口の中に入れたら、どれも同じ味という。

いや。

私は前半の方で、遺跡から発掘される茶碗のカケラのイメージの作品を作れればいい、って書いてますね。とすると、別に他の作品を意識して、差別化をはかる必要もなく、ただ作ればいいんですけどね。自分が作りたいように、2020年に作ったという事が大事と言いますか。作品の出来の優劣は問わないと言いますか。

でも、それが難しいんです。「作りたい」というモチベーション無く完成した作品はひとつも無いんです。そもそも、そのモチベーションが無ければ、完成というか始動すらしてませんから。始動させて、完成させるためにも、人と違った作品を作りたいと思うんです。私の場合。

だからまあ、モチベーションは何でもいいから、最終的に完成に持っていければいいんですけど、私の場合は、「人と違った作品を作りたい」を先に設定しないと、作品を残せないんでしょうね。実際に作った作品が、人と違っているかどうかは別として。

という自分語りはいいとして、結局、人間の普遍性を描くしかないんだと思います。新型コロナウイルスでとんでもない状況に置かれた中で、人間はどう動くか、みたいな事なんですかね。それが、小惑星の衝突だろうが、核戦争だろうが、変わらないと言いますか。

そう言えば今日、ふと思ったことがありました。例えば、自分が高熱を出して、PCR検査をしたら陽性で、その検査の帰り道に高齢者が倒れていたら、どうしたらいいんだろうかと。周りを見渡しても人がおらず、救急車を呼ぼうとしてもつながらない。そこで人間的な行動って何なんだろう?と思いました。

これは、いかにも短編映画になりそうな始まり方ですけど。そういう切り口の作品もたくさん出来る気がします。で、もっと言うと、これを実写で撮らずに、丸と四角の図形だけのアニメーションで表現するとかなんでしょうね。私の思考パターンだとそっちに行っちゃいます。

話はシンプルに、表現はヒネる。

いやまあ、それはいいとして、2020年製作の作品を残すつもり、というnoteでした。

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