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作品と生活

仕事をしながら作品を作るのは大変です。私の場合、仕事は誰かから頼まれた映像で、作品は自主的に好き勝手に作った映像になります。

私は映像のディレクターなので、CMやテレビ番組やWEBムービーなどを監督する仕事です。監督というのは映像を作り上げる大工の棟梁みたいな立場です。

一方で、作品は私がアイデアをゼロから考えて好き勝手に作る映像です。仕事の場合は大工の棟梁に例えましたが、作品の場合は白い紙にスケッチから始める建築家の役割も含まれて来ます。好き勝手に作ると言ってますが、仕事と同じ様にたくさんの人に支えられながら作っています。

仕事をしながら作品を作るのは大変なんですが、実はそれは人によります。本人が作品だと思って作っているものが世の中に受け入れられる作風だった場合、仕事と作品は同じになります。だから、その人にとっては「仕事=作品」を作るのは大変かもしれませんが、それは私が抱えてる大変さとは違う大変さです。

私の場合、私が作品として作っている映像は、世の中に受け入れられる作風ではありません。これは運でしかありません。たまたま私が心の底から好きだと思える作風と、世の中の趣味趣向と合ってなかったんです。だからそれを嘆いても仕方がありません。そして、世の中に受け入れられるように寄せていくと、それは私にとっては仕事になってしまいます。だから、世の中に受け入れられない作風だということを納得して作品を作っています。

世の中に受け入れられないということは、それはお金を1円も生み出しません。むしろ制作費がかかっているので大赤字です。ということは、私がいくら作品を作っても、私はそれで生活していくことは出来ないんです。

神は試練を与えました。

私が作品を作り始めたのは30歳になってからなので、今どきの自主映画界隈からするとかなり遅いスタートです。印象としては、オジサンがやっと作り始めたという感じでしょう。

でも、30代の頃は体力もあるので、仕事で多忙を極めているすき間を縫いながら短編映画を作っていました。仕事も多忙でしたしCMディレクターをやっていたので、安定した収入もありました。若い頃というのは勢いで生きていけるものです。

若い時のメリットは、体力があることと世の中をまだよく知らないことです。あとは不完全という自覚があることでしょうか。体力があるので無茶が出来ますし、世の中をよく知らないのでこんなもんかと諦めもつきます。不完全な自覚というのは、よく言えば未来を見据えているということです。完成する途中であるという自覚ですね。

いやしかし!

50代になった今、若い時のメリットがありません。体力は30代の頃に比べたらだいぶ落ちています。30代の頃には想像もしなかった不定愁訴が現れます。原因不明の腹痛、原因不明のめまい、原因不明の疲れ、原因不明の腰痛、原因不明の不安感。本来、生物としては50歳ぐらいで寿命が尽きる頃なんでしょうが、人類は野生動物に比べて丁寧に生きてるので長生きしてしまいます。

そして、世の中の酸いも甘いも見て来てしまった年齢です。裏も表もと言いましょうか。若い頃にはこんなもんかと諦めがついたことでも、裏側を知ってしまったことで自分が搾取されていることを知ってしまったり、不本意な扱いを受けている事を感じ取ってしまうんです。知らなくていいものを。

そうなると仕事を選ぶんですよね。あの人達とは仕事をしたくないとか、あの種類の仕事をしたら嫌な思いをするとか、そいうネガティブな想像をしてしまうんです。若い頃はそれも経験だと諦められましたが、50代にもなるとそんな炎の中に突っ込んで行けないんです。原因不明の不定愁訴も持ってますから。

さらに、50代にもなると仕事においての結果が出てしまっています。「その程度でしたで賞」という賞状を渡されてしまうのです。もらいたくないと抵抗しても無駄です。「その程度でしたで賞」は町の掲示板に貼り出されてるようなものですから。自分は認めたくなくても、自分以外の世の中からは「その程度でしたで賞」と思われているんです。

いやしかし!(2回目)

仕事は「その程度でしたで賞」で終わりかも知れませんが、私の場合の作品づくりは幸か不幸か利益を生まない作風なので、勝手に作る分には誰にも文句は言われないんです。そもそも、若い頃から勝手に作って来てますが、誰にも文句は言われてません。なぜなら、勝手に作っているからです。

いやしかし!(3回目)

ここからが本題なんですが、30代の頃と50代の今で大きく違うことがありまして、それは子供が大きくなって来たことです。子供が小さい頃は育児の時間をたくさん取る必要があったので、仕事と育児と作品制作と本当に常にスケジュールがパンパンでした。でも、体力で乗り切れました。

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