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モスクワ国際映画祭で上映

去年完成した長編映画『Shell and Joint』が、モスクワ国際映画祭のアウトオブコンペ部門で上映されることになりました。

モスクワ国際映画祭には、短編映画を何度もエントリーしたことがありましたが、一度も上映が決まったことはありませんでした。

カンヌ、ベルリン、ベネチアなどの映画祭情報は、ニュースにもなり、いろんな情報が入ってくるのですが、モスクワに関してはものすごく未知の映画祭という印象があります。新藤兼人監督の『裸の島』や、黒澤明監督の『デルス・ウザーラ』の印象がすごく強い映画祭です。

『Shell and Joint』は、ストーリーが特殊な構成で、かつ154分というそこそこ長い作品なので、映画祭に選ばれるには不利だなと思ってました。映画祭で選ばれやすい作品は110分前後の長編映画なんだと思います。

『Shell and Joint』も最初は85〜100分程度の作品にする予定でした。154分になってしまったのは、すべて私の責任です。あれも撮りたいこれも撮りたいとワガママを言ってしまい、あれもこれも撮らせてもらえたからです。すべての撮影が終わった時、4時間を超えてしまったらどうしようと不安でしたが、ざっと素材を並べた段階で160分ぐらいでホッとしたのを覚えています。

そして、154分の作品を通しで見た時にすごく面白かったんです。これは全く切らなくていいんじゃないかと思いつつ、プロデューサーたちに見てもらいました。もっともなご意見をたくさん頂き、最終判断は私に一任されました。編集の順番や、シーンの長さ、不必要かもしれないカットなど、いろんな意見を総合的に判断し、結果的には、一切何も変えずに完成させてもらいました。

『Shell and Joint』を見た方はわかるかもしれませんが、シーンが適当に並んでいる様で、実は撮影前に決めた順番通りに構成されているんです。なので、ひとつ動かすと、他も動かす必要があり、どこかを修正すると、結果的に構成が破綻することがわかったんです。

などという、もっともらしい理由にすることも出来るのですが、本当は自分の判断だけで作ってみたかったんです。長編映画第一作目というのもあり、「エゴの塊」で作りたいと思ったんです。

企画の最初は「東京オリンピックを見据えて、東京を舞台にした奇想天外で、笑って泣けるエンタメムービー。」を作る予定でしたが、シナリオを書いていく段階で大きく変わってしまいました。これも「エゴの塊」が変えてしまったんです。

そしてやっぱり本当にすごいのは「エゴの塊」でOKを出してくれたプロデューサーの勝俣さんと伊東さんです。こんな環境で映画が作れる監督が他にいるでしょうか?と言いたくなるほどです。幸せすぎます。

一方で、お金の使い方に関して、私は本当に素直だった自負があります。一切反抗しなかったと思います。お金に関してはすべて「承知しました!」だったと思います。衣装や小道具に関しても、率先して最安値のものをAmazonや楽天で探し購入しました。2000円を超えるものは高くて買えませんでしたし、実際に「高いな〜!」と思いましたから。環境ってすごいですね。居酒屋で980円の刺身は安く感じるのに、スーパーで980円の刺身は高く感じます。スーパーで買う方が刺身の量も多いのに。いや、例えが違いますかね。

話が脱線しました。映画祭を目指して長編映画を作り始め、「東京をテーマにした100分程度の作品が映画祭への最短距離」と言っておきながら、「節足動物をモチーフに生と死を性をテーマにした154分の作品」になってしまったのはすべて私の責任、という話でした。「映画祭を目指すと言っておきながら、何で自ら崩壊していくんだよ。」という無責任さも感じているのですよ。

なので、モスクワ国際映画祭に決まってすごく嬉しいんです。カンヌ、ベルリン、ベネチア、ロカルノを目指すという掛け声で始まりましたが、カンヌ、ベネチア、ロカルノの結果は待ちませんでした。

結局、作品と映画祭との出会いなんだろうと思います。ものすごく強く片思いをしても、ダメなものはダメなんだろうと思います。あとは「運命」でしょうか。物事をポジティブかつ楽観的に捉えていれば、良い運が働き、悪いようにはならない気がしています。抽象的な言い方ですが。

そして、私が映画祭の結果にそれほど一喜一憂しないのは、日常が忙しすぎるからだと思います。「仕事が忙しい」のは、ダメ人間だとすら言われてしまう時代ですが、結果をいちいち気にしなくなるという良い面もあります。「気にしていられない」というのが正直なところですかね。

あとは、短編映画でさんざん落とされて来た事もあると思います。映画祭にエントリーして、実際に決まった率は、1割も行かないと思います。決まったときだけ「わーい!わーい!」と騒いでるだけで、落ちるのが日常です。映画祭からのメールの文章をパッと見て「Unfortunately」と「I regret to inform you」は、0.05秒ぐらいで見つけ出すことが出来ます。もう職人の域に達しています。

モスクワ国際映画祭は4月18日から開幕で、実際にモスクワに行く予定です。またその様子もnoteに書きたいと思います。

そして『Shell and Joint』のWebページも作りました。ひとまず英語版です。

http://shellandjoint.com/

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