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ペドロ・コスタ監督とロイ・アンダーソン監督

今日は楽しみにしていた、ペドロ・コスタ監督の『Vitalina Varela』を10時15分から観に行きました。ペドロ・コスタ監督はさすがに人気で、かなり大きなシアターでの上映でしたが、入り口がごった返すほどの満席でした。『Vitalina Varela』は去年のロカルノ国際映画祭で金豹賞を取った作品です。

映画は、ものすごく淡々と進んで行き、かつ暗闇のシーンばかりでずっと重たい空気が流れています。何か面白いことが起きるわけでもなく、事件が起きるわけではないのに、ものすごい緊張感と重さがあります。主役の女性の顔の皺をジッと観続ける感じでもあります。それを微動だにせず、500〜600人の観客が観ている状況が、本当にすごいと思いました。

映画とは何なんだろう?と改めて考えてしまいました。言い方は難しいのですが、「映画って面白い必要あるんですかね?」という感じと言いますか。ソフィア美術館でピカソのゲルニカの本物を見た時の、重さと本質を浴びる感じがありました。でもそこにはいわゆるエンタメ的な要素は一つもありません。

世の中に面白い映画がたくさんある必要は絶対にあるのですが、いわゆるエンタメではないけれども、存在しなければならない映画というのもたくさん必要なんだと思いました。『SHELL and JOINT』はよく分からない映画なんだろうなと思っていましたが、『Vitalina Varela』に比べると、どエンタメです。観た人に面白いと思ってもらおうと思って作ってますから。ニッチな面白さを追求してますけど。でも、面白さを追求してない映画を、たくさんの人が観に来る状況ってすごく理想的だなとも思います。これも映画祭ならではの光景なんだと思いますけれども。

上映後、ペドロ・コスタ監督自らが来て、Q&Aをやる予定になっていましたが、急遽キャンセルになり、監督は現れませんでした。

そして19時ぐらいから『SHELL and JOINT』の2回目の上映があったのですが、同じ時間にやっている、ロイ・アンダーソン監督の『About Endlessness』がどうしても観たかったので、『SHELL and JOINT』の上映前の挨拶はキャンセルして観に行きました。

ロイ・アンダーソン監督の『About Endlessness』はいつものアンソロジー映画で、『SHELL and JOINT』でも強く影響された作風でもあります。それにしても、相変わらずすごく面白かったです。淡々ととりとめもないシーンが途中から始まり、ブツッと途中で終わっちゃうのですが、本当に面白かったです。大きな会場に若者たちがたくさん観に来ていました。76歳の監督の作品を、若者が観に来てゲラゲラ笑ってるって、これもまた凄い状況だなと思いました。ロイ・アンダーソン監督の作品は、基本的な作りが知的でオシャレでデザインされているから、老若問わず支持されるのかも知れません。でも、日本ではウケないだろうなとも思います。たぶん劇場公開もされないんじゃないでしょうか。いやどうだろうなあ。

Q&Aがあったので、ロイ・アンダーソン監督が来るかと思ったら、プロデューサーの方だけが来て、いろいろ話していました。Q&A後に話しかけたかったのに残念です。『SHELL and JOINT』の紹介で、ロイ・アンダーソン監督の名前が出てくることが多かったので、その事をお伝えしたかったのですが。プロデューサーの方にはポストカードを渡しておきました。

そのQ&Aが終わったらすぐに劇場を移動して、『SHELL and JOINT』を上映している方に向かいました。『SHELL and JOINT』は尺が長いので、上映後の舞台挨拶には間に合いました。昨日の半分以下の大きさの劇場で、満席で70人ぐらいのお客さんがいました。終盤にそーっと入っていきましたが、全部の席が埋まっていました。途中退席のお客さんがいなかった様でホッとしました。

Q&Aでは、やはりここでも音楽の質問が来ました。「同じ音楽が繰り返しつ使われてますが、どういう意図なんでしょうか?」という質問です。私は「同じメインテーマの曲を繰り返すことで、その世界観を印象づけたかったからです。」と答えました。でもこういうシンプル過ぎる質問が一番難しいですね。意図が無いことも多いですから。ちょっとしたザラつきが欲しいだけの時もありますし。

あと「昆虫とかそういう生き物が全篇に渡って出てくるけど、どうしてですか?」という質問も来ました。私は「私は昆虫などの節足動物が大好きで、初長編映画ということもあり、それをモチーフとして入れたかったんです。」と言ったら笑ってくれました。その方はよくよく聞いてみると、自然環境の研究者みたいな人でした。

『SHELL and JOINT』は、節足動物をモチーフにした映画で、ミジンコがpH次第でメスだけで増えていく話が出てきたり、ネオニコチノイドという殺虫剤や、カニムシという土壌生物も会話の中に出てきたり、そういう科学者向けのアプローチもある気がしています。

こうして、ロッテルダムでの2回目の上映が終わりました。

全然話は全然変わりますが、この映画祭ツアーに持っていくために、試しにコンデジを買ってみたんです。いつもは、ミラーレスのカメラを持って行くのですが、ボディに比べてレンズがデカいので、スマートにレンズが収まるコンデジを買ったんです。

レンズが収納されるので持ち運びや取り回しは最高で、いろいろ撮っていたのですが、パソコンに取り込んで見て愕然としました。画質が悪すぎるんです。特に暗いところで撮った写真はザラザラなんです。ISO400を超えると使えない画質なんです。ザラザラどころか、ザラザラザラザラザラなんです。iPhoneよりもレンズも大きいしセンサーも大きいはずなのに、あまりにも画質が悪くて投げ捨てたくなりました。スマホに押されてコンデジが売れなくなったんじゃなくて、商品性能として負けてたんじゃ売れなくなるよなと思いました。

勝俣さんから「今日のQ&Aのテンションが昨日より低かったのは、コンデジのせい。」と言われましたが、まさにコンデジのせいなんです。

「画質が悪い」ってメチャクチャストレスですね。ストレスは身体に悪いから、画質が良いカメラを買わないと、身体を壊してしまうかも知れません。

何て終わり方だ。

(写真は『SHELL and JOINT』のポストカードを配る勝俣P)

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