天竺桂さんウジ虫2

スラムダンス映画祭!

1月に「ロッテルダム映画祭」で上映されることになった『Shell and Joint』ですが、同じ時期にアメリカのパークシティで開催される「スラムダンス映画祭」でも上映されることになりました。しかも、映画祭のメイン部門である長編コンペ部門にです。応募総数は8231本あったそうで、その中から11本が長編コンペ部門に選ばれました。8231本というのは、長編、短編、ドキュメンタリーなどすべて合わせた本数だと思いますが、スラムダンスでの過去最高の応募数だったそうです。

この前の「ロッテルダム国際映画祭で上映」というnoteでは、コンペ部門に選ばれる事を諦めたような事を書いたんですが、その直後のまさかの選出でした。

こういう事が起きる度に「諦めが大事」と思います。これはスピリチュアルな意味でです。フッと気持ちが抜けた瞬間に、欲しかったモノが降ってくることが何度もありました。「果報は寝て待て」みたいな感じでしょうか。

逆に今か今かと「朗報」を待っている時はダメですね。これは確実に言えます。これもスピリチュアルな意味でです。いや、もしかしたらスピリチュアルな意味ではなく、作品を作っている時から「狙いすまして」作ってるからダメなのかもしれません。先日、カンヌ映画祭の偉い方と話をすることがあったのですが、「カンヌを狙っている様な作品は選ばない」と断言していて戦慄しました。

幸いにもと言いますか、不幸にもと言いますか、『Shell and Joint』は観客の事を考えずに作った作品なので、もちろん映画祭ウケも良くないんだろうなと思っていました。154分もあってストーリーも無いですから。「いやいやいや!そんなこと言ってオマエ、傾向と対策を練って長編撮ったんだろ?」と思ってる方もいるかも知れませんが、見て頂けたら分かります。もし『Shell and Joint』が、何らかの傾向と対策を練って作られたとするならば、どこの何の傾向と対策を練ったのかと。『Shell and Joint』みたいな作品を選ぶ傾向のある映画祭はありませんし、だから対策も何も無いんです。見て頂けたら分かります。劇場公開したらぜひ観に来てください。「何だこの作品は!」と思いますから。良くも悪くも。

話が逸れましたが、居酒屋のメニューで例えると「ミョウガと豚肉の酢和え揚げ」みたいな、「何料理?」と言われるような作品が、コンペ部門に選ばれたんです。他にも何千本ものウェルメイドなちゃんとした映画が応募されて来ているのにも関わらずです。どういうつもりなんだろう?と戸惑いすら覚えます。観客からクレーム入りませんかね?と心配にもなります。

スラムダンス映画祭の選考は、コネがあるとか、有名な監督の作品だとか、スターが出演してるとかは考慮されないと、わざわざ書いてあります。コネがあってもスターが出てても、普通にエントリーしないと選考の対象にならないとわざわざ書いています。私も普通に「FilmFreeway」からエントリーしました。

「FilmFreeway」は、今一番勢いのある映画祭エントリーサイトです。海外の映画祭に出したかったら、必ず登録したほうが良いサイトです。

スラムダンス映画祭では私の作品をこう紹介しています。

A wild ride into a world of ideas, alternately profound, shallow, funny and horrific, conveyed by outspoken characters in powerful static compositions, in and around a capsule hotel.

要約すると「カッチリしたアングルのメチャクチャな映画」って感じでしょうか。このログラインからも、ストーリーが無い事が分かるかと思います。ちなみにロッテルダム映画祭ではこう紹介されています。

Understated, intelligent comedy by award-winning director of short films Hirabayashi Isamu. Japanese capsule hotel users philosophise about sex, death and love. The tight framing and absurdist humour make it seem as if the makers of Toren C (offbeat Dutch TV series) and Roy Andersson have had a completely idiosyncratic Japanese love child.

こっちでも「カッチリしたフレーミング」が入ってますね。そして、やっぱりシノプシスは書かれていません。ストーリーが無いですから。

撮影は私自身がしましたが、ミリ単位でカッチリしたアングルにしました。単純に打っただけの文字でも、カーニングをキッチリやる事で、ある瞬間にロゴにすら見えるという経験を、デザイナー時代に知りました。このニュアンスはなかなか伝わりづらいのですが、料理にしても何にしても、職人の世界にはあるニュアンスなんだと思います。

そして、何とスラムダンス映画祭とロッテルダム映画祭は、同時期に開催されるんです。スラムダンス映画祭の最終選考段階で、決まった場合、映画祭に来れるかどうかの確認のメールが来ました。私はロッテルダムに行くことを決めていたので、「決まってもスラムダンスには行けません」と正直に書きました。それでも決まりました。

決まってからはテンションの高い熱烈なメールが来ました。いろんな角度からメールが来ました。かつてスラムダンス映画祭に参加した日本人の方を通してもメールが来ました。あまりにも熱烈なので、行くことにしましたよ。「この作品の運命と、キミの映画人生が変わる!」ぐらいの事がメールに書いてありましたので。だから、ヨーロッパとアメリカをはしごして来ます。

そして、公式に長編コンペのラインナップが発表された途端、いろんな映画祭やいろんな配給会社からドバーッとメールが来ました。スラムダンス映画祭をナメてました。すごい影響力を持ってるっぽいです。

ロッテルダム映画祭が『Shell and Joint』の最後の映画祭だと思っていたのに、またいろいろ盛り上がってきました。何が起きるか分からないですね。もっといろいろ起きてくれないかなあと願っています。

写真はダッシュの天竺桂さん。瓶の中にギッシリ透明カプセルが入ってますが、そのカプセルひとつひとつに、ウジ虫が入っています。ハッハッハッハ。

サポートして頂けたら、更新頻度が上がる気がしておりますが、読んで頂けるだけで嬉しいです!