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平林映画

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平林勇の映画つくり日記
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2018年12月の記事一覧

長編映画で国際映画祭は配給次第?

長編映画で国際映画祭は配給次第?

何度も書いてますが、今年始めて長編映画を作りました。短編映画の時からそうですが、作品が完成したらまず映画祭にエントリーします。『Shell and Joint』を作った今年も同様でした。

完成した翌日、カンヌの監督週間のベンジャミンさんと奇跡的に会うことが出来、作品のプレゼンテーションが出来ました。でもベンジャミンさんから開口一番聞かれたのは、「配給はどこですか?」という事でした。私とプロデュー

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ワタナベアニさんと①(会社時代篇)

ワタナベアニさんと①(会社時代篇)

ワタナベアニさんと出会ったのは、ライトパブリシティという広告デザイン会社に入ったことがキッカケでした。まさかその後の私が映画を作ることになるとは、自分も含めて誰も思ってなかった時代の話です。

私のライトパブリシティでの一年目は、本当に24時間働いている状態でした。Macが使える若者ということで、プレゼン用のカンプの写真合成をPhotoshopでしたり、先輩が作った版下をIllustratorでリ

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自分をさらけ出す作戦

自分をさらけ出す作戦

作品を作るときは、自分をさらけ出すように心がけています。

頭で考えた「企画」や「アイデア」というのは、作品としては弱くなる気がしています。「企画」や「アイデア」も、自分の頭で考えてるので、自分の内側から出てきたものなのですが、どうしてもフォーマットやテクニックで作ってしまいます。

「アレとアレを組み合わせたら面白いんじゃないか?」「アレをあんなフォーマットで表現したら新しいんじゃないか?」みた

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仕事ではない「作品」を作る、ということ。

仕事ではない「作品」を作る、ということ。

仕事というのは、仕事の対価としてお金を貰えたり、待っている人がいるというプレッシャーもあるので、仕事をもらったのにやらない、という事はほとんどありません。

でも、誰にも頼まれてない、自分の意志だけが原動力の、仕事ではない作品作りというのは、本当に自分との戦いになります。作品を作れる人、作り続けている人と、作品が作れない人との差は、自分との戦いに勝ったか負けたかだと思います。本当にしみじみと思いま

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国際映画祭に取り憑かれた30代

国際映画祭に取り憑かれた30代

私は30代の時、国際映画祭に取り憑かれました。

一番最初に国際映画祭、海外の映画祭で作品が上映されたのは、『HELMUT』(2003)という作品でした。その当時、博報堂にいた大学の同級生の船木くんが原作を書き、パラダイスカフェの櫻井さんがプロデューサーをやり、今や売れっ子のCMディレクターの月田さんがHELMUTというキャラの「中の人」をやっていたり、河瀨直美監督の初期の作品を沢山やっていた茂野

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勝俣さんというプロデューサー

勝俣さんというプロデューサー

監督とプロデューサーの理想的な形は、どんな形なんでしょうか?

私は長いことCMディレクターをやってきたので、いろんなプロデューサーと仕事をしましたが、CMのプロデューサーでは、「監督とプロデューサーの関係」として語る内容は、それほど無い気がします。CMのプロデューサーは全権を握ってないからです。全権を握ってないですし、CMディレクターとプロデューサーは完全に仕事の関係にもなります。CMディレクタ

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面白い作品て何だろう?

面白い作品て何だろう?

作品を作る時に、見る人、観客を意識して作るのと、意識しないで作るのでは、出来る作品がまるで違って来るのは、当たり前のことだと思います。

特に映画を作る時に、観客を無視した作品を作るのは映画への冒涜だ、ぐらいに言う方々もいます。でも、誰にも見せるつもりのない映画が作られてもいいと思いますし、そういう姿勢で作られた作品の方が面白いんじゃないかとすら思います。

観客を意識して作る時に陥りがちなのが、

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AfterEffectsが映像の教科書だった

AfterEffectsが映像の教科書だった

私は学校で専門的に映像の勉強をしたことがありません。

映像の勉強は、独学で始めました。大学生の頃に3Dのソフトを買って遊びで使っていたので、映像の仕組みは何となくわかっていましたが、本格的に仕事になるレベルで映像の勉強をしたのは、グラフィックデザイナーをやっていたライトパブリシティを辞めてからです。

学生の頃からAdobeのIllustratorやPhotoshopは普通に使えていましたが、会

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仮説を立てて映画を作る

仮説を立てて映画を作る

映画作りに取り憑かれた人はたくさんいますが、私の場合、「仮説の検証」という動機が大きいかもしれません。

こういう事言うと誤解されるかもしれませんが、感動的なストーリーで人々を感動させたいとは全く思ってません。いや、感動的なストーリーを軽蔑しているわけではありません。私も感動的な映画を見て泣くのが大好きです。スッキリします。

どちらかというと、感動的なストーリーを作れないと言ったほうが良いかもし

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『Shell and Joint』の撮影

『Shell and Joint』の撮影

今回は撮影機材を中心にやや専門的な話を書いてみます。

『Shell and Joint』では自分で撮影までやりました。

その理由はものすごく単純な話なのですが、20日や30日もの撮影日数、カメラマンに来てもらうお金が無かったのが最大の理由なのと、フットワーク軽く、極端に言うと、明日撮影しようと思った時にすぐ出来る体制にしたからです。

自分で撮影するにあたり、PanasonicのGH5Sをベー

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『Shell and Joint』のシナリオ

『Shell and Joint』のシナリオ

私は『Shell and Joint』で初めて、撮影を前提とした長編映画の脚本を書く事になりました。撮影を前提とした、と書いたのは、長編映画の脚本自体は今までにも2本ぐらい書いた事があるからです。1本はサンダンス・NHK国際映像作家賞の日本側の3本に選ばれた事もありました。

でもそれらは、撮影する事が決まっている訳では無く、上手く行けば撮影までこぎ着けるという脚本でした。事実、その脚本は撮影まで

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短編部門の無い日本

短編部門の無い日本

今まで短編映画ばかりを作って来て、本当に不思議というか疑問というか悔しい事がありました。

東京国際映画祭にも日本アカデミー賞にも短編部門が無い、という事です。

カンヌ映画祭にもパルムドールがもらえる短編部門があり、ベルリン映画祭にも金熊賞のもらえる短編部門があり、アメリカのアカデミー賞にも、実写の短編部門、アニメの短編部門、ドキュメンタリーの短編部門があります。

なぜ日本には短編部門が無いの

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人と違う作品を作る、ということ。

人と違う作品を作る、ということ。

人と違う作品を作る、という事に関して書いてみます。この、人と違う作品を作る、に関しては本当にたくさん思う事があり、一回では書ききれないので、今後も事あるごとに書いて行く事になるかと思います。

私は今まで20本の短編映画と1本の長編映画を作ってきましたが、常に意識しているのは「人と違う作品を作る」という事でした。幸か不幸か、映画というものに対しての思い入れが弱った事が、そういう思考にさせたのかもし

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『Shell and Joint』完成披露試写会

『Shell and Joint』完成披露試写会

昨日、映画『Shell and Joint』の関係者試写会としての完成披露試写会があり、150人以上の方に来て頂きました。

『Shell and Joint』は、分かりやすい作品では無いので、ちょっと不安でした。不安と言うか、ご迷惑かけちゃうなあ、みたいな感覚の方が近いのかもしれません。映画と言えば、1本のストーリーがあり、起承転結があって、見終わった後にスッキリとしたカタルシスが残るもの、とい

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