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#0205300

乗客たちは、その夜、不機嫌だった。人身事故の影響で、電車がひどく遅れていた。深夜にもかかわらずホームは、人であふれ、皆、イライラを隠さなかった。

「折角、気持ちよく飲んだ帰りなのに」、「何十分も足止めを食らって」、「明日もまた仕事なのに」、「どうせどこかの酔っ払いの不注意だろう」。

不満渦巻く車内においてもホームにおいても、しかし、事故の犠牲となった「どこかの酔っ払い」に思いを馳せる人は、いなかった。

不快なサイレンが鳴り止み、誰かの子か、連れ合いか、あるいは親かもしれない「どこかの酔っ払い」の移動が終わって、電車は、ようやく鈍く動き出した。

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