皮膜

今あった話、昔あった話や、今も昔もなかった話。

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1,000記事目

1,000記事目の節目に際して、999の記事を掘り返します。これまでみんなのフォトギャラリーから画像をお借りした皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。 【執する記事】…

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4か月前
33

依頼者のそばに

依頼者のそばに身を寄せ、話を聞き、何もせず、ただ「いるだけ」。2018年から始まった「レンタルなんもしない人」というサービスは、今も続いています。 悩みを打ち明けて…

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4日前
16

水路を抜けて

水路を抜けて湖沼に出た瞬間、視界が一気に開けました。舟は、歩く速さで水面を滑ります。ヨシキリの鳴き声、櫓が水をかく音。あとは、静寂。 「昔から、櫂は3年櫓は3月…

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5日前
10

#1903205

駅前の雑貨屋の店先で、衝動買いに走った。柿色のミルクボールを2つ。その渋い色合いと、手の平にちょうど収まりそうなサイズが手頃だった。 ポルトガル製のパスタ皿も、…

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7日前
13

地方分権

地方分権は、中央政府と地方政府の間の綱引きのように思われがちです。どちらに権限があっても、国民・住民には関係のない話だ、と。 でも、そうとばかりはいえません。先…

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11日前
15

堯帝

堯帝は、古代中国の伝説の皇帝といわれます。ある日、お忍びで町に出掛けた彼は、そこで腹鼓を打ち、地面を踏み鳴らしながら歌う老人を目にしました。 「帝の力がどうして…

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13日前
12

京都タワーにまだ大浴場があった頃

京都タワーにまだ大浴場があった頃、半日だけ京都で過ごす時間を得ました。「何をしようか」。ひとまず駅前でレンタサイクルを借りて町へ繰り出します。 向かった先は、祇…

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2週間前
14

今年の12本目

今年の12本目、Barbie、観ました。 「もしもバービーとケンが人間世界に行ってみたら?」という映画です。そういう映画の場合、「バービーが自我に目覚める」というオチを…

皮膜
2週間前
16

#0205300

乗客たちは、その夜、不機嫌だった。人身事故の影響で、電車がひどく遅れていた。深夜にもかかわらずホームは、人であふれ、皆、イライラを隠さなかった。 「折角、気持ち…

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2週間前
18

花屋の看板に

花屋の看板に、今日が母の日と知らされる。何かにせっつかれる思いで、その人に電話をする。特別なプレゼントも、心のこもった言葉も用意していない。 ただ、母の日という…

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2週間前
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感染症の流行

感染症の流行や大規模災害の発生等の非常事態に際して国から地方自治体への指示を可能にする地方自治法改正案が国会で議論されています。 改正案を支持する人は、新型コロ…

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2週間前
15

居酒屋のいつものテーブルにAさんと2人

居酒屋のいつものテーブルにAさんと2人、向かい合って座っています。来月、Aさんは、「自己都合」という理由で退職します。 「どうして退職なんですか」「これからどう…

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3週間前
19

出産が間近い

出産が間近い女性が、クッキーに赤ちゃんのイラストと「産休をいただきます」「ご迷惑をおかけします」の文字が入った産休クッキーの写真を投稿しました。 好意的な反応の…

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3週間前
19

隠岐

隠岐は、古くは流刑地として知られ、多くの歴史上の人物が追放された場所です。島内には、流人としての彼等の生活をしのばせる史跡が点在しています。 都に戻り名を成した…

皮膜
3週間前
17

今年の11本目

今年の11本目、No Man's Land、観ました。 戦争の最前線の中間地帯に取り残された2人。アジアの片隅で暮らす私たちには、彼等のどちらがボスニア兵でセルビア兵なのか、…

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3週間前
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#2405162

Hくんへ。 連休は、ちゃんと休めたかな?新しい仕事、新しい人間関係、新しい環境で緊張していたと思うんで、少しは肩の力が抜けていればよいのだけれど。 すごくエネル…

皮膜
3週間前
14
1,000記事目

1,000記事目

1,000記事目の節目に際して、999の記事を掘り返します。これまでみんなのフォトギャラリーから画像をお借りした皆様に、この場を借りてお礼申し上げます。

【執する記事】

【物する記事】

【興ずる記事】

【旅する記事】

【抄する記事】

【糊する記事】

【着する記事】

【1記事〜900記事】

依頼者のそばに

依頼者のそばに

依頼者のそばに身を寄せ、話を聞き、何もせず、ただ「いるだけ」。2018年から始まった「レンタルなんもしない人」というサービスは、今も続いています。

悩みを打ち明けても、アドバイスや解決策を提示されたりしません。共感すらされません。だから、相談される側とする側にありがちな上下関係が生じません。

私たちは、普段、何かをする自分や他人に価値を見出します。でも、「レンタルさん」をレンタルする人は、「な

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水路を抜けて

水路を抜けて

水路を抜けて湖沼に出た瞬間、視界が一気に開けました。舟は、歩く速さで水面を滑ります。ヨシキリの鳴き声、櫓が水をかく音。あとは、静寂。

「昔から、櫂は3年櫓は3月とか、櫓3年に棹8年とかいいましてね、一番難しいのは、棹です。水底までの距離を正確に読まなくちゃいけない。

そこ行くと、櫓は、難しくない。体重移動だけだから、力もいらない。だから、こんなジイさんでも船頭ができちゃうんです」と彼がいい、乗

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#1903205

#1903205

駅前の雑貨屋の店先で、衝動買いに走った。柿色のミルクボールを2つ。その渋い色合いと、手の平にちょうど収まりそうなサイズが手頃だった。

ポルトガル製のパスタ皿も、2つ。丸皿だけれど真ん円でもない、そのいびつなフォルムが素敵だった。

そのミルクボールでミルクを飲みたいわけでもなかった。そのパスタ皿にパスタを盛り付ける予定も特になかった。それでも、少し迷って、4つとも買った。

「誰か来たら一緒に使

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地方分権

地方分権

地方分権は、中央政府と地方政府の間の綱引きのように思われがちです。どちらに権限があっても、国民・住民には関係のない話だ、と。

でも、そうとばかりはいえません。先日、たまたま入った飲食店のバイト君は、店長に対してやたらとヘコヘコするクセに、客に対してはゾンザイでした。

彼に関する権限と財源が店長に握られている場合、バイト君は店長に対しておもねり、顧客を軽視します。地方政府の「バイト君」体質の構造

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堯帝

堯帝

堯帝は、古代中国の伝説の皇帝といわれます。ある日、お忍びで町に出掛けた彼は、そこで腹鼓を打ち、地面を踏み鳴らしながら歌う老人を目にしました。

「帝の力がどうして私に関係あろうか」と歌う姿を見て、この賢帝は、「自分が理想とする政治を実現できている」と確信した、といいます。

この故事から生まれた四字熟語「鼓腹撃壌」は、民衆が平和で幸せな暮らしを送っている様子を指し、理想的な政治の形とされます。

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京都タワーにまだ大浴場があった頃

京都タワーにまだ大浴場があった頃

京都タワーにまだ大浴場があった頃、半日だけ京都で過ごす時間を得ました。「何をしようか」。ひとまず駅前でレンタサイクルを借りて町へ繰り出します。

向かった先は、祇園。細い路地を選んで進めば、趣のある町家や老舗の店々が軒を連ねています。表通りとは対照的な静寂と風情に、今更癒されました。

祇園会館の大きさに今更驚き、円山公園の緑に今更心を弾ませ、知恩院の威容に今更圧倒され、平安神宮に至る一本道に今更

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今年の12本目

今年の12本目

今年の12本目、Barbie、観ました。

「もしもバービーとケンが人間世界に行ってみたら?」という映画です。そういう映画の場合、「バービーが自我に目覚める」というオチを予想します。

でも、この映画ではケンの方が覚醒します。添え物でしかなかった彼が男中心の人間世界に感化され、バービーランドを乗っ取りケンダムにしてしまいます。

人形世界が人間的な価値観に侵食され始め、私たちは、「あのユートピアは

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#0205300

#0205300

乗客たちは、その夜、不機嫌だった。人身事故の影響で、電車がひどく遅れていた。深夜にもかかわらずホームは、人であふれ、皆、イライラを隠さなかった。

「折角、気持ちよく飲んだ帰りなのに」、「何十分も足止めを食らって」、「明日もまた仕事なのに」、「どうせどこかの酔っ払いの不注意だろう」。

不満渦巻く車内においてもホームにおいても、しかし、事故の犠牲となった「どこかの酔っ払い」に思いを馳せる人は、いな

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花屋の看板に

花屋の看板に

花屋の看板に、今日が母の日と知らされる。何かにせっつかれる思いで、その人に電話をする。特別なプレゼントも、心のこもった言葉も用意していない。

ただ、母の日という日に電話をする。その事実をもってすべて察しろ、という態度を彼女にとがめられず、2人、ぎこちもなく他愛もない話をする。

思い出した様子で、だけど満を持して、彼女は、兄にカノジョができた話を切り出す。「2年も黙ってるなんて」と怒って見せつつ

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感染症の流行

感染症の流行

感染症の流行や大規模災害の発生等の非常事態に際して国から地方自治体への指示を可能にする地方自治法改正案が国会で議論されています。

改正案を支持する人は、新型コロナ禍で国と地方の調整が難航した例を挙げて、非常事態時には個別法に基づかない国の強力な指示権が不可欠と主張します。

でも、政権内部や専門家会議との連携が不十分な中、アベノマスクや一斉休校等の政策が場当たり的に決定された過程が検証によって明

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居酒屋のいつものテーブルにAさんと2人

居酒屋のいつものテーブルにAさんと2人

居酒屋のいつものテーブルにAさんと2人、向かい合って座っています。来月、Aさんは、「自己都合」という理由で退職します。

「どうして退職なんですか」「これからどうするんですか」。聞きたい話は、あります。でも詮索目的の場とも思われたくなくて、黙り込んでいます。

察しのいいAさんは、それとなく心情を明かしてくれます。上司が上司たる仕事をしてくれずしんどかった話。これからのことはまだ白紙という話。

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出産が間近い

出産が間近い

出産が間近い女性が、クッキーに赤ちゃんのイラストと「産休をいただきます」「ご迷惑をおかけします」の文字が入った産休クッキーの写真を投稿しました。

好意的な反応の一方で、「産休で迷惑掛けるのに幸せアピールかよ」「不妊治療してる人に渡したら一生恨まれるよ」というネガティブな意見も見られました。

知ってる。それは、大して怒っても傷付いてもいない「外野」の人人の妬み・モヤモヤが「〇〇な人に対して不謹慎

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隠岐

隠岐

隠岐は、古くは流刑地として知られ、多くの歴史上の人物が追放された場所です。島内には、流人としての彼等の生活をしのばせる史跡が点在しています。

都に戻り名を成した人もいれば、ここで生涯を終えた人もいます。歩きながら、彼等がここで死んだ史実より、彼等がここで生きた日日の方に思いを馳せます。

今一タビ宮コヘ帰ランノ御心ザシフカカリシカド、ツイニハムナシクテヤミタマヒニシ事イトカタジケナク、アハレニナ

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今年の11本目

今年の11本目

今年の11本目、No Man's Land、観ました。

戦争の最前線の中間地帯に取り残された2人。アジアの片隅で暮らす私たちには、彼等のどちらがボスニア兵でセルビア兵なのか、その見分けも付きません。

同じ言語を話し、共通の知人もいる2人が、そっちが先に戦いを仕掛けた、そっちこそと言い争い、銃を向け合います。でも、状況は、あまりに絶望的です。

生き残りのために協力し始める2人。けれど少しの行き

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#2405162

#2405162

Hくんへ。

連休は、ちゃんと休めたかな?新しい仕事、新しい人間関係、新しい環境で緊張していたと思うんで、少しは肩の力が抜けていればよいのだけれど。

すごくエネルギーを使った1か月間だったと思います。少しずつ慣れて張り切っている頃かな、それともまだなじめず不安な頃かな、と勝手に心配しています。

連休前と同じペースで頑張ろうとして辛くなる人もいます。この1か月頑張った自分を褒めてあげつつ、もう1

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