コロナ禍の子どもの心のケア~Ⅱ~

5月に参加したオンラインセミナーの続きです。先日まとめた内容は長崎大学病院 精神医学診療部の今村明先生のお話しについて書かせていただきました。(下にリンクを張り付けております。)

今回は高知大学医学部精神科学教室 高橋秀俊先生のお話しした内容を感想を交えながらご紹介します。

高知では新型コロナウイルスの発生が北海道に比べて遅く、温度差を感じていたようですが、2月29日に第一例が確認されたことで急遽危機感が高まったようです。その患者さんの勤務先の発表等の審議があったようですが、公表されることになったことでクラスターを明らかにすることが出来たそうです。3月7日には県内の感染症指定医療機関の受け入れ拡大を発表し、医師らより啓発活動として新聞や医師会のホームページに正しい情報を掲載しました。

3月11日には教育現場へはJaSCAP‐C(日本児童青年精神科・診療所連絡協議会)の学校でのメンタルヘルス支援パッケージを知らせ、メンタルヘルス対応の窓口の設置例や保護者に伝えることなどを通知しました。

※↑メンタルヘルス支援パッケージ

この支援パッケージはO-157の流行の際に患者児童に対し、いじめ等があった経験から作られたそうです。これをもとに小児科、心理系の方、心理系の大学の先生方、スクールカウンセラーが早い対応をしてくれたとお話ししていました。フェイクニュース対策がとても大変だったようで、早い対応が求められていたそうです。

その中で「コロナによる自殺」などセンセーショナルなフェイクニュースもあったようで、このようなニュースが医療現場の人の無力感に繋がっていたとのことでした。これに対して5月18日にコロナについての提言を発表しました。内容は「働く人のメンタルヘルス」「産業、保健体制について」で、働く人のメンタルヘルスケアや産業保健体制に焦点を合わせた問題提起と提言として

コロナ感染症が労働者の心理・社会面に及ぼす影響について正しい理解を促す。
職域でコロナ感染症に対応できるメンタルヘルス体制を確立する。
新しい働き方が労働者のメンタルヘルスや産業保健体制に及ぼす影響を明らかにし、対策を策定する。
コロナ感染陽性などで長期間の健康観察となった労働者のメンタルヘルス対応方法を確立する。
倒産や解雇による失業とメンタルヘルス不調者の増加、自殺者の増加対策を行う。
社会的活動制限下における、精神疾患の持病そのものへの対応を検討する。

と作成しました。さらに

フェイクニュースに関しては医師による自費で予算を集め、自殺への誘導、刺激を止めるように活動しているそうです。医師らは費用に対し積極的に募っているとのことでした。

ただでさえ混乱の続いていた医療現場の方がそんなお仕事まで担っているとは…どうにかならないのかと思ってしまいます。


3月27日以降には高知の感染者も増え、検査に関することや相談は保健所の職員がほとんどを対応したようで、医療崩壊も叫ばれていたこともあり集中した形になっていたため、おそらくキャパオーバーした状態だったのではないかとお話しされていました。

これに対して普段よりあまり顔を合わせることのない医師と保健師の関係に反省点を持ち、「普段より定期的にコミュニケーションを取るべきだった」とおっしゃっていました。特にASDの子たちに対してもライフステージに合わせた医療を考えるときにも医師・学校・支援センター等の福祉関係の方も含めて顔を合わせていくことを積極的に考えていかなくては臨機応変に医師として指示を仰げないのではと感じたと言っていました。

私はこれに対してはすごく苦労してきた身だったので、連携を積極的に考えてくれる医師がいることには喜びを感じます。家庭にいる時間により保護者の対応やケアの希薄が生まれている現場も多くあるのでそのような時に連携して相談しあえるようになると、施設としても安心ですよね。

外出自粛による影響の対応に関しては、アメリカの学会の情報や協力体制を参考にしているようです。アメリカではASDの子が自殺しているニュースが続いて出ており、メディアの情報を簡単に鵜呑みにしないとしつつも学会が出している情報を調べて確認するようにしながら慎重に情報収集しているとのことでした。兄弟間での暴力や強迫的になっていくケースが増えているようでこれといった「虐待」は新たにはそこまで増えて居る様には感じなかったとのことでした。しかし相談に関しては増えているようで子ども家庭支援センターの疲弊も見られたとのことでした。

児童相談所ではマイクスタンドを立てて、シールド越しに相談を始めるなど長崎では直接会える相談の形式を設けるように対応し始めているようですが、高知ではまだそのような状況ではなく、連携によりリスクの高い家庭への情報を拾ったり、福祉・教育への横のつながりを再確認したりして対応に当たっているようです。


今後は夏休みが短くなる、授業への負担がかかるなどまだまだ子どもたちへの環境の変化がとどまらない状態です。心の波も揺れる時期が続くのでバーンアウトしないように息抜きをきちんと作ること、電話での相談の再診対応、危機感を共有して正しい情報と生活への啓発活動を続けていきたいとのことでした。


こうなるとやはり直接支援の重みが出てくるので福祉への負担も大きく出ます。児童館の需要も変わらず、対策の継続も強いられます。しかし、勤務する人数が変わらないため そこをどうにかうまくやっていくには施設としての変化も考えていかなければなりません。

情報や相談をどこに求めていくべきかをきちんと判断していかなければならない様です。

   

お掃除係の実習を体験した保育士さん、きちんとした指導・教育を受けられずも頑張る支援者さん…など現場に困り感を持っている方へサポートすることで、子どもたちに還元されるものがあるのではと信じています。よろしくお願いします。