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優しい花たちの想いを紡ぎ

優しい花たちの想いを紡ぎ 作】霞草
性別不問(女性推奨)語尾、人称変更可

私は1人で歩いている。
先程まで温かさを感じていた右手はあなたの温かさを覚えているようで悲しそうに震えていた。

道を染めるほのかな桜色に私はそっとため息をこぼした。
先月までは冷たい白色だったはずなのに。
いつの間にか白色から桜色へと姿を変えている。
冷たく厳しい風は知らぬ間に暖かく優しい風へと姿を変えていたのだ。
私があなたに溺れているうちに1つの季節が過ぎ去っていたらしい。
雪の下から顔を覗かせていたスノードロップは優しい希望と冷たい心を慰めるかのように儚く咲いていた。
私はそんな花たちを横目にゆっくりと歩いていく。
時折視野が霞むのは散りゆく寂しさを感じているからなのか。
それとももうあなたに会うことが許されない悲しさからなのか。
私には分からなかった。

すれ違っていく人たちは怪訝そうな表情のはずなのに私には人の不幸を嘲笑っているようにしか感じられなかった。
「何も知らない癖に」と暴言を吐いても傷つくのは自分1人だけで。
他の人たちは幸せそうに未来に歩みを進めている。
私だってあなたと歩いていくはずだったのに…。
どうして私だけ…。
そんな自己嫌悪を感じながら寂しさの未来へと歩いていく。

穢れてしまった私には優しく降り注ぐ桜は辛いだけなのに。
できる事ならあなたの隣を胸を張って歩ける優美な女性になりたいと1枚の花弁に願ってしまう。
こんな願い叶うはずもないのに。
願いを込めた花弁が柔らかく輝いているように見えた。
花弁から目が離せないでいるとフワリと風が笑ったように吹き渡った。
思わず目を瞑ってしまうと先程まで見つめていた花弁はもう何処にもなく。
また私は1人になってしまった。

「君まで私を捨ててしまうのね…」
私の小さな呟きは優しい風に解けていく。
私はたった1人で歩いていく。
ゆっくりと静かに歩いていく。
いつかまたスイートピーとガーベラの花束を贈れる未来を信じて…。

終わり

花言葉
スノードロップ 「希望」「慰め」等
桜 「精神美」「優美な女性」「純潔」等
スイートピー 「優しい思い出」「永遠の喜び」等
ガーベラ 「希望」「前向き」等

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