見出し画像

大好きな映画「愛人ーラ・マン」と上川周作と

なぜかnoteで、あちこち記事を読んでいたら、「青春18×2君へと続く道」の紹介文を二つ続けて読ませていただくことになり、調べてみたら、なんとまだ上映中の映画だということを知った。

そういえばしばらく映画と観に、映画館に行ってないなあ・・・、と思っていた。と同時に、今まで観た中で、どの映画が一番好きだろう?と考えた。

そういえば、私は、NHKの朝ドラ「虎に翼」で出演している上川周作さんが大好きである。

話が飛ぶのには訳がある。
上川周作さんを始めて見たのは、「恋は続くよどこまでも」の中の、上白石萌音さん演じる主人公のお兄さん役で、たった一度出演されていたときのことだった。

なんだかインパクトあるけど、この人、誰?

と思っていた。

そして、今回、朝ドラの主人公のお兄さん役で出演されているのを観て、すぐにわかり、私はとっても嬉しくなった。
その役柄がそうさせているのだろうけれど、とんでもなく惹きつけられる。優三さんも、お父さんもとんでもなくおもしろく、このドラマになくてはならない存在だけれど、私は、お兄さんの直道さんが大好き。

というのも、誰かに似ていたのである。
あのあごのラインが大好きなのである。
面食いではなく、とんでもなくイケメン嫌いで(塾生たちには、「ごめんなさい。イケメン嫌いで。みんなのこと好きになれないわ・・・。」と言っている。)、というより、もしかしたら男嫌いで、でも好きなのである。
顔が好み。いや、あのメガネがいいのかもしれない。

見たことある。この横顔のシルエット・・・?
と考えて、わかったのである。

レオン・カーフェイである。
あの、マルグリット・デュラス原作の、「愛人ーラ・マン」の華僑の中国人役の、あの人である。
NHKの衛星放送で放送されていた映画を観た。
原作については、大学時代に、確か文学系の雑誌に、原作が宣伝されていたのを見ていて、友人とちょっと語り合ったのを覚えていた。

フランス統治下のベトナム。そこで貧しい教師の娘のフランス人と華僑のお金持ちの年上男性が出会う。彼はその娘の家庭に事情、ー兄にいろいろあることなどを知っていた。
気弱そうな華僑を演じるレオン・カーフェイの、あのせつなそうな横顔が大好きだった。親の言うことに逆らえない。だから近々結婚する。でもそれまで、彼は華僑が愛人と逢瀬を楽しむやり方で、彼女との部屋を設け、そこで彼らは愛し合う。
フランスのリセを思わせる寄宿学校に通う彼女は、おそらく自分がその中国人を愛しているとは思わなかったのだろう。
早く大人になりたかったし、経験してみたかった。おいしいものを食べ、楽しい時間?を過ごしていた。

お金はあるけれど、アジア人である華僑。
お金はないけれど、立ち位置的に優れた白人、それもフランス人の美しい娘。

大人になったことを表現するために、彼女の来ているワンピースは、それを表すようにと、縫い直されたという。
多感な、少女から大人の女性へと脱皮する時期。
彼女は十四歳で、男性を知る。

この二人の関係に、なぜか私は感情移入して、でも、映像がとても美しく、まるでこの二人の関係を表そうとしているかのようだった。

せつなさー本来なら、私はフランス人の主人公である、この娘に感情移入するべきかもしれない。
なのに、私は、レオン・カーフェイ演じる男性に共感した。

というのも、その当時、その男性に重ねてしまう人がいたのである。
私は惹かれていたわけではない。
ただ、思われていることは感じていた。
なぜなら、いつも私の中にいたから。
私にとっては好きになるはずの人ではなかった。
結婚していても、こころだけ、恋をすることはあるだろう。それまでは否定しない。でも、どう問うても、私から好きにはならない。
正直物足りない。なのに、いる。いつもいる。頭に?心に?
彼は言う。
私のことを気にしていると。
だから会わない間、気にしていた、と。

でも違う。私のとってはその位置にはいない。
プラトニックな恋愛関係にもなれない。
あなたは違う。

きっと彼女はその男を、おそらくは自分の方が優位性をもっていると思いたかったのだろう。
人種、年齢、そして若さと美貌。そして求められる肉体。

でも、その実彼女の内面はそんなものではない。
家庭において、教師をしている母親はいつもお金がなく、イライラしている。ときに怒りが爆発する。兄たちは愚か者である。なぜか頭脳明晰な彼女は、大人にならざるを得ない。
甘えたい気持ちもあったことだろう。

私は、この中国人が側にいたら、きっと愛してしまっていたことだろうと思う。もしかしたら、めずらしく顔が好みかもしれない。

それとも、私は割と頼りない優しい人が好きなのかもしれない。
自分を包んでくれるような。
どれだけ自分が勇ましいことをしても、いつも味方でいてくれて、

おまえにも弱さもあれば、大変なことも抱えているよなあ・・・。
みんなにはわからないだけさ。俺にはわかる。

ほら、どこか直道さんに似ている。
弱さと優しさ。

強い彼女には、強く生きて行かなければならない彼女には、その時に必要な人だったのだろう。

華僑の男はしかるべき女性と結婚する。
その結婚式を見に行った娘は、彼と目を合わせる。男の熱く恨めしい視線と幾分冷静な彼女の視線が絡む。
まだ、このとき、彼女は優位性を保っているようだ。
でも、それなら、なぜ見に行く?
平然としていながら、どこか彼女の内面には痛みがあったはずだ。

フランスへと帰国する彼女は、夜、どこからともなく流れてくるベートーベンの「月光」の音楽を聴きながら泣く。あの男が好きだったのだと悟って。

私は、こういう場面が好きだ。
全てを取り除いた自分の気持ちに気付く場面。
映画で気付くのは相当難しく感じるのだけれど、上手に描かれていた。
あの暗がりの中で光る彼女の目。なんとも暗く、でも人の心のドロドロしたものも純粋なものも、そして誰もが持っているひそかなものも、全てを表しているようなあの場面。

そして、最後の場面で、数度の結婚と別れの中で、文筆活動している彼女のもとに、男から電話が掛かってくる。妻と旅行に来ていると。

そして、今でもあなたを愛していると言う。

何十年もの間、彼女はその男の中で生き続けていたのだろう。
ひとときの思い出。報われることのない愛。
でも、二人にとって、この経験が、珠玉の思い出なのだろう。
ただ、それでも彼女は、その男への優位性を捨てることはないだろう。
もし、捨ててしまったら、彼女は生きてはいけなくなるだろう。

でもいいな。ああいう男性。

ちなみに、レオン・カーフェイは、デビュー作?「火竜」の監督であるハンシャン監督の娘の紹介で、主役のラスト・エンペラー溥儀を演じた。
その後、知りうる限り、そして日本で手に入る限りの、レオン・カーフェイが出演する映画を観た。おかげで香港映画、中国映画にハマった。
中国語の美しさにも魅了された。

中国人の先生お二人の会話をお聞きして、あまりの感動に、

中国語、お上手ですねえ・・・。

と心からの賛辞を述べてしまった。

ところで、ある日私は、レオン・カーフェイが、愛する妻との間に双子の娘をもつ素晴らしい家庭人であることを知った。
落ち込んでいたら、夫に笑われ、

彼女は、レオン・カーフェイが結婚していたと知って、落ち込んでるんです・・・。

と周りに言われた。
だって、だって、あの顔好みやってんもん。

ちなみに、ご夫人は、随分ワイドになっておられる。
お二人並んでのお写真を見たことがある。ぶちぶち。

あれやったら、私でもいいやんか!?

もしもサポートしていただけましたら、そのお金は文章を書いて人の役に立つための経験に使います。よろしくお願いいたします。この文章はサポートについて何も知らなかった私に、知らないうちにサポートしてくださった方のおかげで書いています。