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架空の日記

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桜がモサモサと咲いていた。圧巻ではあるけれど、さっさと散って欲しい。地べたに落ちた花弁を靴底で引き伸ばしてボロボロにするのが楽しいのである。染み出た液でアスファルトを染めるのが実に良いのだ。その後、雨が降るなどして、染みが薄まっていくのがまた面白い。気の長い遊びである。
春で一番価値あるものは雨と風だ。花を落としてくれるし、気楽に歩くのを邪魔してくれる。どちらも外出時にあたると非常に疲れるけれど、このくたびれには不快感が少ない。梅雨のようにいやらしいシケり方をせず、台風のように身の危険を感じさせない煩わしさ。これがあると、特筆すべきことの無いつまらない一日にもやりきった感が出て、私のような生き物も安心して眠れるのである。

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